主役はだあれ?

流音あい

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1、お話を書くおじいさん

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 お話を書くお仕事をしているおじいさんは、次のお話の内容を考えながら歩いていました。池に通りかかった時、カエル君が跳び出してきました。
「こんにちは、お話を書くおじいさん。ここで何をしているんだい?」
「こんにちは、カエル君。次はどんなお話にしようかと考えていたんだ」
「それなら僕のお話にすればいいよ」
 カエル君はおじいさんに自分の話をしました。
 水の中を華麗に泳げること、泳ぐときの気持ち良さ、陸でぴょんぴょん跳ねる時の爽快感などをたくさん。
「それはおもしろい。カエル君のお話を書くことにしよう」
 おじいさんはさっそく家に帰って書き始めました。
 書いている途中、おじいさんはお話の内容の一部を忘れてしまいました。もう一度カエル君に聞こうと思って池に向かっている途中、キリンさんに会いました。

「こんにちは、お話を書くおじいさん。ここで何をしているの?」
「こんにちは、キリンさん。カエル君が教えてくれたお話を書いていたんだが、途中で内容を忘れてしまってね。もう一度聞きに行くところなんだ」
「それなら私の話を書くといいわ」
 キリンさんはおじいさんに自分の話をしました。
 長い首のおかげで遠くまで見えることや、蹴るときの威力が強いこと、草原を駆ける時の風の気持ち良さなどをたくさん。
「それはおもしろい。キリンさんのお話を書くことにしよう」
 おじいさんはさっそく家に帰って、カエル君のお話のあとに続けてキリンさんのお話を書き始めました。書いている途中、おじいさんはまたお話の内容の一部を忘れてしまいました。もう一度キリンさんに聞こうと歩いている途中、カバさんに会いました。

「こんにちは、お話を書くおじいさん。ここで何をしているんだ?」
「こんにちは、カバさん。キリンさんが教えてくれたお話を書いていたんだが、途中で内容を忘れてしまってね。もう一度聞きに行くところなんだ」
「それならわしの話を書くといい」
 カバさんはおじいさんに自分の話をしました。
 水の中や泥の中の気持ち良さ、水の中でも陸でも走るのが早いこと、とても力が強いことなどをたくさん。
「それはおもしろい。カバさんのお話を書くことにしよう」
 おじいさんはさっそく家に帰って、キリンさんのお話のあとに続けてカバさんのお話を書き始めました。そして完成したお話は本になりました。
 水の中を颯爽と泳ぎまわるカエル君が飛び跳ねたり、草を食むキリンさんが気持ちよさそうに日光を浴びながら景色を楽しんだり、泥の中でのそりと動くカバさんが凄いスピードで走ったりする、それぞれが過ごす日常の素晴らしさを生き生きと描いたお話です。最後にはみんなが互いの家族と笑い合い、幸せに過ごしている様子で終わりを迎えます。その本は、動物たちにとてもおもしろいと好評でした。

 そのお話を読んだカエル君とキリンさんとカバさんは、みんなで感想を言い合いました。
「このお話は面白いね。僕が泳ぎの競争で勝ったところなんて特にいい」
「ええ、面白いわね。私が長い首で後ろを見ながら、寄ってきた不届き者を蹴り飛ばす場面なんて最高よ」
「ああ、面白いな。わしが身体を張って縄張りを守るところが特に素晴らしい」
 三人はうんうん、と頷きました。
「やっぱりこのお話の主役である僕が、一番かっこよく描かれているな」
「何言っているの。このお話の主役である私が、一番美しく描かれているわ」
「何を言っておる。このお話の主役であるわしが、一番素晴らしく描かれているだろう」
 三人は口論になりました。三人とも自分が主役であることを譲らず、何日も話し合いが続きました。それでも決着はつきません。そんなとき、カバさんが言いました。
「ようし、こうなったら誰が主役なのか、お話を書いたおじいさんに聞いてみようじゃないか」
「そうね。それがいいわ」
「僕も異論はないよ」
 三人は、お話を書いたおじいさんに聞きに行くことにしました。
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