僕の番は規格外の天才で、気づいたら世界を平和にしてしまいました

ニア。

文字の大きさ
25 / 31

25 コケア族の大人の腕に抱かれて

しおりを挟む


 涙で何も見えない。 鼻水もヨダレもぐちゃぐちゃの僕を、蒼ごと筋肉のついた二の腕が引き寄せた。

 校長先生だった。

 とても暖かい。

「うわぁぁ~~~っ」

「悪い子だ。お父さんとお母さんの話を最後まで聞きなさい」

「なっ、なななな、何してるの!?むーちゃん!」

 普段はきれいに巻いている艶々の髪をボサボサに乱したママンを見るのは初めてだった。

「分かり合えるまで話し合うことが必要って、知ってるよね?」

 頬ずりするように僕を抱きしめながら、校長先生が言った。

 でも僕は、もう何も話すことなんて無かった。

 体も、心も、どこも動かない。

「うぅぅ~ わぁぁーっ」

「パパンとママンは、あなたに話があるって言ったでしょう? どうして途中で出て行くの?」

 アーサーパパンに支えられているママンは、今にも泣きそうだった。

 力の抜けた僕を、校長先生の屈強な腕が支える。

 ワイシャツの袖がめくれ、タトゥーが見えた。

 僕は目を見開いて、それを凝視していた。

 僕の周りにはタトゥーの入った人はいないから。

 腕にぐるりと、規則的な模様が彫られている。

「ここがケコア部族の男性という意味です。生まれた時に彫ります」

 え?生まれてすぐ?

「ここは職業が族長という意味です。十三歳で成人した時に彫ります」

 え、十三歳で成人? 文化違いすぎない?

 校長先生は模様を指差しながら説明した。

「これは守護する生き物サソリ。前進という意味です。 これは強さ、成功、未来を表します」

 意味があるんだ。

 胸のボタンを外し、肩から心臓にかけての模様を見せてくれた。

「ここは麦を模した、ラゥラゥォアという柄です。宝物を表します」

 僕を抱きしめたまま、頬にキスが落ちた。

 お髭がチクチクするけど、なんだか心地いい。

「麦は、数百ある島々からなるポーリー諸島では、ホロムア島の高地でしか採れません。 とても貴重なものです。神聖で、人の命を支える宝物です」

 頭にキスが降ってくる。

 頬に当たるチクチクの髭が、くすぐったい。

 ……でも、安心する。

 麦は宝物なんだね。

 僕は恐る恐る、腕の模様を触ってみた。

「色がついているところは痛いの?」

「触っても痛くありませんよ。 私の国ではタトゥーは当たり前の習慣です」

「うん」

「ですが、この国では驚きました。 タトゥーのある人は危険だと思われてしまう」

 校長先生は小さく息をついた。

「移住した当初は、職務質問も沢山受けました。 就職も、公共施設の利用も、保険加入も断られました。 家を借りることさえ難しかった」

 首を振る。

「私は悪い人でも危ない人でもありませんよ」

 わざと怒った顔をしてから、優しく笑った。

 校長先生はこの国で、たくさん苦労したんだ。

 腐る病の乙女も言っていた。

『人間に上下はない。職業に貴賎はない。人はすぐ優劣をつけたがるけどね』

 僕もそう思う。

 地球を共有している仲間なんだから、みんな平等だよね。

 どんな文化も尊重しましょうって意味だよね?

 だよね、乙女?

 ――そのあと、この話はまだまだ続くんだけど。

『推し出さんかい、モブ10連とかキツイわぁ。スーパーレアしかいらん!』

 ……この日記、本当に国宝級なのかな?

 言ってること、コロコロ変わるんだよね。

 でも安心してね。

 乙女は腐る病にかかっていたかもしれないけど、 元気に幸せに、九十九歳まで生きるから。

 亡くなる前日まで友達と辛口にお喋りして、日記を書いているから。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

僕、天使に転生したようです!

神代天音
BL
 トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。  天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

無自覚オメガとオメガ嫌いの上司

蒼井梨音
BL
ベータとして生きてきた無自覚オメガの小国直樹は、オメガ嫌いの白鷹課長のいる部署に異動になった。 ビクビクしながら、なるべく関わらないように仕事をしてたのに、 ペアを組んでいた先輩が倒れてしまい、課長がサポートすることに。 そして、なぜか課長にキスされてしまい…?? 無自覚オメガ→小国直樹(24) オメガ嫌いの上司→白鷹迅(28)アルファ 第一部・完 お読みいただき、ありがとうございました。 第二部 白鷹課長と一緒に住むことになった直樹。 プロジェクトのこととか、新しくできた友だちの啓さんのこととか。 相変わらず、直樹は無自覚に迅さんに甘えています。 第三部 入籍した直樹は、今度は結婚式がしたくなりました。 第四部 入籍したものの、まだ番になってない直樹と迅さん。 直樹が取引先のアルファに目をつけられて…… ※続きもいずれ更新します。お待ちください。 直樹のイラスト、描いてもらいました。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

オメガはオメガらしく生きろなんて耐えられない

子犬一 はぁて
BL
「オメガはオメガらしく生きろ」 家を追われオメガ寮で育ったΩは、見合いの席で名家の年上αに身請けされる。 無骨だが優しく、Ωとしてではなく一人の人間として扱ってくれる彼に初めて恋をした。 しかし幸せな日々は突然終わり、二人は別れることになる。 5年後、雪の夜。彼と再会する。 「もう離さない」 再び抱きしめられたら、僕はもうこの人の傍にいることが自分の幸せなんだと気づいた。 彼は温かい手のひらを持つ人だった。 身分差×年上アルファ×溺愛再会BL短編。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

オメガだと隠して魔王討伐隊に入ったら、最強アルファ達に溺愛されています

水凪しおん
BL
前世は、どこにでもいる普通の大学生だった。車に轢かれ、次に目覚めた時、俺はミルクティー色の髪を持つ少年『サナ』として、剣と魔法の異世界にいた。 そこで知らされたのは、衝撃の事実。この世界には男女の他に『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性が存在し、俺はその中で最も希少で、男性でありながら子を宿すことができる『オメガ』だという。 アルファに守られ、番になるのが幸せ? そんな決められた道は歩きたくない。俺は、俺自身の力で生きていく。そう決意し、平凡な『ベータ』と身分を偽った俺の前に現れたのは、太陽のように眩しい聖騎士カイル。彼は俺のささやかな機転を「稀代の戦術眼」と絶賛し、半ば強引に魔王討伐隊へと引き入れた。 しかし、そこは最強のアルファたちの巣窟だった! リーダーのカイルに加え、皮肉屋の天才魔法使いリアム、寡黙な獣人暗殺者ジン。三人の強烈なアルファフェロモンに日々当てられ、俺の身体は甘く疼き始める。 隠し通したい秘密と、抗いがたい本能。偽りのベータとして、俺はこの英雄たちの中で生き残れるのか? これは運命に抗う一人のオメガが、本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

処理中です...