僕の番は規格外の天才で、気づいたら世界を平和にしてしまいました

ニア。

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26 ポーリー諸島的美しい女神

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「尊重し合い、みんなが幸せに生きるには、お互いの文化的背景を学ばなければなりません」

 お父さんの、チクチク、ちゅっちゅっ、は気持ちが落ち着くなぁ。

 僕はまだ、ロカヒ校長に抱き上げられている。

「お父さんの事を黙っていた事、許してね。」

 ママンも僕を掴んで離さない。

「むーちゃんに友達が出来なかったら、どうしようか?とか、大きくなって結婚相手や、その家族から反対されたら、どうしましょうかって、お父さんと二人で悩んで」

「うん」

「悩んで、悩んで、2人の仲を隠す事にしたの」

「私は、私の家族を守りたかったのです。愛してます。麦穂。私の……私たちの宝。ずっと、アーサー卿を通して成長を見てましたよ。ずっと、抱きしめたかったんです」

 「ウゥッ」っと息を詰まらせたお父さんは、涙声だ。息を殺した男泣きで、喉仏が上下している。

 頼れる漢の魅力が駄々漏れで、こんな時に使う言葉では無いけれど、大人の強さに惹かれてしまった。カッコいい。

「お祖母さんと、お祖父さんも、言ってたでしょ?『幸せに成って、かわいい聖なる宝物』って。ママンに『部族の掟だからごめん、息子を選んでくれてありがとう』って。皆んなが秋穂と麦穂を愛しているんだよ」

 そんな事、言っていたなんて、知りません。だって、言葉が全然分からなかっんだもの。

 あの時は、優しい南の島のホストファミリーと、楽しいバカンスを過ごしただけ、だったん だけど?

 高床式住居で暮らし、釜戸でご飯を作って腰蓑一枚に草で編んだ冠や、腕輪、アンクレットを着けていた人達が、親戚なの?

 オシャレさんだったなぁ。イケメンだったし。筋肉質で、体が引き締まっていたなぁ。

 弓の名人のおじいさんは、ぼくのお祖父さんなの?

 色々な、野生動物を見せてくれたんだよ。

 僕を膝に乗せて、目の前で鳥を丸焼きにした時は、恐怖で泣いてしまったけどね。

 お洗濯と機織りをしていた静かなおばあさんが、僕のお祖母さんだったのかなぁ?

 子供の遊び場の川に、毎日手を引いて連れて行ってくれたんだよね。

 流れの弱い川の、岩の上から、川に飛び降りられなかった僕を、後ろから突き落としたあの兄弟は、従兄弟だったのかぁ。

「あっ、ロカヒさん。むーちゃんはガントゥン語も、モアサイ語も、ラーンス語も、分からないから」

「ええ?通訳してたんじゃ無いの?秋穂???」

「え?私?私はあの時、感無量で、涙を堪えていたから、通訳してないわ」

「おぉ。なんて事ですか。大事なことですよ。愛しい私の魂の番。私のカーネロノロンゴ・ヒナヒナ神、美しい女神。」

「まぁ、ありがとう。ーーでも、そもそも、むーちゃんには、あのホロムアの家族が誰なのか教えていなかったし…….通訳の仕様も無かったのよ」
 
 ポーリー諸島の神って、確か……。思わず、カーネロノロンゴ・ヒナヒナ神を蒼から受け取ったタブレットで検索してしまった。

 結果、僕のタブレットには、恐ろしい形相で、口を開け、今にも襲いかかりそうな勢いの、石像が、表示されている。

 麦の冠を着けて沢山の花がお供えされていた。

 うん……。2人が良いなら、問題は無いはず。豊穣の女神様らしいしね。

 2人にとっては、最上級の褒め言葉なのでしょう。

 たとえ文化の違うこの地の一般常識では、恐ろしい形相に見える神でも……。  

 うん。人それぞれだよね。

 歯を剥き出しにし、睨みを利かせ、大き過ぎる目を、見開いている、恐ろしい石像の写真をそっと閉じる。

 それより、先ほどから、僕は気になる事があった。ーーーやばい。

「蒼、電源オフだよね???」

「んな訳あるかぁ。」

 なんて事。蒼を通さずに、直に声が聞こえて、僕は青くなり凍りついた。

「よよよよ陽ちゃん??」

 泣き腫らした顔で、振り向くと、屋上のドアの前に、息を切らした陽ちゃんが立っていた。

 何だろ?その顔?僕の事、怒っているの?呆れてるの?嫌いになったの?

 陽ちゃんは、その全ての感情を纏った様に見える悲しい表情をしていた。

 心臓がドクンドクンと、鼓動する。

「あ、あの、会社は大丈夫……なの?ここまで遠いのにごめんなさい。」

 アレはまずかった。

 気持ちが安定せず、思わず取った行動だけど、恋人の命を捨てる瞬間を、(未遂だけど)見せてしまったのだ。

「来るに決まってるでしょ」

 息が荒い。

「麦穂がいなくなるかも知れないのに」

「うん。そうだよね。ごめんなさい。来てくれてありがとう。さっきは、取り乱して。あのね……えっと、僕、何だか、感情のコントロールが上手く出来なくて……そのぉ…….衝動的に……」

 言葉に詰まってしまった僕を真っ直ぐ見つめて、陽ちゃんが震えながら低い声で言った。

「俺を置いていかないで。側で笑っててなんて言わないから。側に居てくれたらそれだけで良いよ。泣いても、怒っても、ただ、俺の側に居て?」

「うん。いるよ。本当は、命を捨てたかったんじゃなくて、家族と、陽ちゃんに受け入れて貰いたかったんだ。なのに、感情がグチャグチャでー」

 校長先生である、ロカヒお父さんの腕から、抱き寄せられて、陽ちゃんの顔を見ると、頬に涙の後があった。

「受け入れてるよ。そのままで良いんだ。麦穂と一緒に生きていたいんだ。歳をとって、目が見えなくなる瞬間まで君を映していたい。手が動かなくなる瞬間まで、君を抱きしめていたいんだ」

「陽ちゃん」

「俺の体が最期に言葉を話す力が残っていたなら、力尽きるまで、『愛してる』を繰り返し言わせて」

 ごめんなさい。本当に、なんて事をしてしまったんだろう。

 身体が震えてきた。止まっていた涙が溢れてきた。

「うん。嬉しい。ありがとう。僕も、僕もそうしたい」

 背伸びをして、陽ちゃんの首に手を絡めて抱きついていた僕の背中を、強く抱き寄せられた。

「君と、私達家族は、話し合いが必要です。冷静に、です。お時間ありますか?場所を変えましょう。気分を変えて、私の家で昼食を食べながらお話しさせて下さい」

 ロカヒお父さんは、また陽ちゃんから、僕を奪い、逞ましい左腕に、お尻を乗せて抱っこされた僕と、右手で肩を組まれたママンに、代わる、代わる、キスをして、車のキーを見せる。

 「車で、行きましょう」と、陽ちゃんに声をかける。

「申し訳ありませんでした。少し、我が家の事情をお話しさせて下さい」
 と、ママン。

 陽ちゃんは相変わらずの表情で、「はい。」とだけ、答えそれ以上喋らなかった。

 陽ちゃん?顔色が悪いし、元気が無い様に見えるなぁ。

 「オフィスの施錠、電気・ガスの確認は、宜しいですか?突然、飛び出したのでしょう?ビックリしましたよね~」

 僕は、もう一度「ごめんなさい。」をその場の全員に言ったんだ。

「麦穂も、陽一郎くんも、落ち着いて下さいね、宜しいですか?」

 「はい。」たぶん、落ち着いたよ。
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