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第三話
心の残像
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4限目になり、俺は授業のために準備をしてグラウンドに向かった。少し寝たからか頭痛も治ったように思う。
「先生~、今日長距離だるいって~」
「室内で自習でいいじゃん」
生徒達からそんな言葉が飛び交っている。
「外で走るのも気持ちいいもんだよ。有酸素運動は体に良いし。気分転換だと思ば良いだろ」
「でも長距離が嫌なんだって~」
生徒たちはうんざりした顔をしている。
「まあまあそんなこと言うなって。このあと昼休憩だろ?だからがんばれ」
仕方ないなというような顔をして、生徒達は走り出した。
俺は、時間を見ながら生徒達の走っている姿を見ていた。
「ねぇ、先生」
声をかけて来たのは佐野だった。
佐野は制服姿でグラウンドの近くのベンチに腰掛けた。
俺は佐野の隣に腰掛けた。
「佐野か」
「うん、さすがにさっき顔合わせたから、なんか授業受けないと気まずいかなって思って」
「そっか、でも嬉しいよ」
「先生、てか体調大丈夫なんですか?」
「ああ、さっきは悪かったな」
「なんで?」
「教師が保健室で寝るとか情けないところ見せたし」
「別にいいですよ。でも、保健室登校してるの先生にバレたし、これから授業出ないといけないかな~」
「他の先生は、佐野が保健室登校してることって知ってるのか?」
「なんとなくは知ってると思うけど、もう一年の途中から、教室で授業受けないのが当たり前になってて、放置って感じなんで」
「そうか……」
「てか、先生ってなんで体育の先生になったの?」
「こうやってサボれるから?」
「なにそれ、先生がそんなこと言っていいの?」
佐野はあどけない笑顔で笑った。
「本当は理学療法士になりたかったんだよ。でも色々あって今は教師してるけど。まあでも、こうやって生徒の努力してる姿を見られるのは良いかなって思ってる」
「そっか~、俺もなんか夢とか持てたらいいな」
「夢は大それたことじゃなくてもいい。それまでは目の前のことを大事にして、自分なりに今を精一杯生きたらいい。いつか夢を持てるようになるよ」
その時、グラウンドの方から走っている生徒たちからの声がした。
「先生、サボりすぎ!こっちは走ってるんだけど!」
「ああ、悪い。そろそろ行くわ。あと、見学のレポートだけ放課後に提出よろしく」
「わかりました」
俺は、佐野の肩に手を置いた後グラウンドの方に向かった。
「みんなー!あと10分だから、頑張れよ」
「10分!?長いって!」
振り返ると、佐野はもういなくなっていた。保健室に戻ったのだろう。俺はなぜか佐野のことが気になって仕方がなかった。
そんなことを考えていると、あっという間に1時間が経っていた。
「よし、終わりだ。みんなおつかれ。よく頑張ったな」
「つかれた~」
生徒たちは肩で息をしながら、座り込んだり膝に手をついたりしていると、授業が終わるチャイムが鳴った。
「失礼します」
「ああ、佐野か」
「レポート持ってきました」
佐野は、放課後職員室に来て、体育の授業での見学レポートを俺に手渡した。
「授業のこと、ほとんど書いてないじゃないか……。というより、俺が佐野に話した内容しか書いてないじゃないか」
「だって体育の授業中、先生しか見てなかったし」
「……え?」
「他意はないよ、もしかして変なこと考えてません?」
「何言ってるんだよ。そんなわけないだろ」
「安心して、先生のこと何とも思ってないから」
「安心するも何も、俺と佐野は教師と生徒だし当たり前だろ」
「まあそうだけど。じゃあこれ食べて体調治したら、もう保健室こないでくださいね」
佐野は俺の机にチョコを置いて、出て行こうとした。シャツの袖の隙間から赤い痣のようなものが見えた。
「おい、佐野ちょっと待て」
俺が呼び止める前に職員室を出て行ってしまった。
あの痣には見覚えがある。俺にも過去に同じ痣があったからだ。あれは何かで締め付けられた跡だ。記憶が蘇って手が震えてしまう。
「新上先生!さっき振られてたね~!どんまい笑」
後ろから肩を叩いて話しかけてきたのは、光井先生だった。俺は一瞬驚いて、その声で現実に引き戻される。
「ごめん、なんか驚かせた?」
俺の顔を見て、光井先生は怪訝な顔をしている。
「……てか、あれって振られてたんですか?」
「振られてたでしょ!笑」
「そうですか……」
「てか、反応薄い~。やっぱり体調悪いんじゃないん?早く帰りな?」
「ああ、大丈夫なんですけど、今日は先に帰ります」
「うん、おつかれ~」
「お疲れ様でした」
職員室を出て、帰りながらカバンの中からスマホを取り出そうとすると、手がカバンの何かにぶつかった。
佐野からもらったチョコだった。何となくパッケージの裏を見ると、早く体調治せよと言うメッセージとともに、LINEのIDが記載されていた。
「なんなんだ、あいつ……」
「先生~、今日長距離だるいって~」
「室内で自習でいいじゃん」
生徒達からそんな言葉が飛び交っている。
「外で走るのも気持ちいいもんだよ。有酸素運動は体に良いし。気分転換だと思ば良いだろ」
「でも長距離が嫌なんだって~」
生徒たちはうんざりした顔をしている。
「まあまあそんなこと言うなって。このあと昼休憩だろ?だからがんばれ」
仕方ないなというような顔をして、生徒達は走り出した。
俺は、時間を見ながら生徒達の走っている姿を見ていた。
「ねぇ、先生」
声をかけて来たのは佐野だった。
佐野は制服姿でグラウンドの近くのベンチに腰掛けた。
俺は佐野の隣に腰掛けた。
「佐野か」
「うん、さすがにさっき顔合わせたから、なんか授業受けないと気まずいかなって思って」
「そっか、でも嬉しいよ」
「先生、てか体調大丈夫なんですか?」
「ああ、さっきは悪かったな」
「なんで?」
「教師が保健室で寝るとか情けないところ見せたし」
「別にいいですよ。でも、保健室登校してるの先生にバレたし、これから授業出ないといけないかな~」
「他の先生は、佐野が保健室登校してることって知ってるのか?」
「なんとなくは知ってると思うけど、もう一年の途中から、教室で授業受けないのが当たり前になってて、放置って感じなんで」
「そうか……」
「てか、先生ってなんで体育の先生になったの?」
「こうやってサボれるから?」
「なにそれ、先生がそんなこと言っていいの?」
佐野はあどけない笑顔で笑った。
「本当は理学療法士になりたかったんだよ。でも色々あって今は教師してるけど。まあでも、こうやって生徒の努力してる姿を見られるのは良いかなって思ってる」
「そっか~、俺もなんか夢とか持てたらいいな」
「夢は大それたことじゃなくてもいい。それまでは目の前のことを大事にして、自分なりに今を精一杯生きたらいい。いつか夢を持てるようになるよ」
その時、グラウンドの方から走っている生徒たちからの声がした。
「先生、サボりすぎ!こっちは走ってるんだけど!」
「ああ、悪い。そろそろ行くわ。あと、見学のレポートだけ放課後に提出よろしく」
「わかりました」
俺は、佐野の肩に手を置いた後グラウンドの方に向かった。
「みんなー!あと10分だから、頑張れよ」
「10分!?長いって!」
振り返ると、佐野はもういなくなっていた。保健室に戻ったのだろう。俺はなぜか佐野のことが気になって仕方がなかった。
そんなことを考えていると、あっという間に1時間が経っていた。
「よし、終わりだ。みんなおつかれ。よく頑張ったな」
「つかれた~」
生徒たちは肩で息をしながら、座り込んだり膝に手をついたりしていると、授業が終わるチャイムが鳴った。
「失礼します」
「ああ、佐野か」
「レポート持ってきました」
佐野は、放課後職員室に来て、体育の授業での見学レポートを俺に手渡した。
「授業のこと、ほとんど書いてないじゃないか……。というより、俺が佐野に話した内容しか書いてないじゃないか」
「だって体育の授業中、先生しか見てなかったし」
「……え?」
「他意はないよ、もしかして変なこと考えてません?」
「何言ってるんだよ。そんなわけないだろ」
「安心して、先生のこと何とも思ってないから」
「安心するも何も、俺と佐野は教師と生徒だし当たり前だろ」
「まあそうだけど。じゃあこれ食べて体調治したら、もう保健室こないでくださいね」
佐野は俺の机にチョコを置いて、出て行こうとした。シャツの袖の隙間から赤い痣のようなものが見えた。
「おい、佐野ちょっと待て」
俺が呼び止める前に職員室を出て行ってしまった。
あの痣には見覚えがある。俺にも過去に同じ痣があったからだ。あれは何かで締め付けられた跡だ。記憶が蘇って手が震えてしまう。
「新上先生!さっき振られてたね~!どんまい笑」
後ろから肩を叩いて話しかけてきたのは、光井先生だった。俺は一瞬驚いて、その声で現実に引き戻される。
「ごめん、なんか驚かせた?」
俺の顔を見て、光井先生は怪訝な顔をしている。
「……てか、あれって振られてたんですか?」
「振られてたでしょ!笑」
「そうですか……」
「てか、反応薄い~。やっぱり体調悪いんじゃないん?早く帰りな?」
「ああ、大丈夫なんですけど、今日は先に帰ります」
「うん、おつかれ~」
「お疲れ様でした」
職員室を出て、帰りながらカバンの中からスマホを取り出そうとすると、手がカバンの何かにぶつかった。
佐野からもらったチョコだった。何となくパッケージの裏を見ると、早く体調治せよと言うメッセージとともに、LINEのIDが記載されていた。
「なんなんだ、あいつ……」
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