いつか死ぬのだから

ひゅん

文字の大きさ
上 下
16 / 51
六月・雨の日の洗濯

時間の制約、殊に女についての

しおりを挟む
 あの日は、高校三年の最終学期の登校日であった。空は薄雲っていて世界がまるで眉間に皺をよせているかのような天候だった。
 確かに愛している(愛していた、が正解か)。but~しかし、あなたは私の唯一の存在であるか、わからない。
「別れたいってこと?」彼女のボカしたような言い方に私は少し腹を立てて言った。
「ごめんね。女の子はね、限られた時間の中で生きているの。だからわかって欲しい」とみゆきは相変わらずはっきりとは云わずに、重要なことは察して欲しい、という感じで狡く話を引き延ばしていた。
「好きな人ができた?」
「うーん、気になる人はいる……だけど、その人が本物かどうかわからない」
 彼女の云わんとしていることは何となくわかったが、私は納得いかなかった。
「別の人と付き合いたいなら、何で俺と付き合ったの?」私は皮肉にならい皮肉を、いくぶん子供っぽい言い方で言葉にした。
 恋愛にも段階があって、始まりと終わりだけではない。紆余曲折ありながら、私たちは、ようやく結びつきを感じられるところまできていた。
しおりを挟む

処理中です...