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少年期
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しおりを挟む『君の便りに微笑んで -The first tidings of the blossoms-』通称『君たよ』は、典型的な学園を舞台にしたノベルゲーム型の乙女ゲームである。選択肢によってキャラクターの好感度が左右され、キャラクターを攻略していく。
エンディングは友情エンド、恋愛エンドの他、特定の条件を満たすとトゥルーエンドを迎えることができる。
トゥルーエンドと書くと難しそうな印象だが、乙女ゲームとしての範囲を逸脱するレベルではない。たとえ大きな失敗したとしても二週目には見ることが出来るような難易度だ。そう考えるとむしろ友情エンドや恋愛エンドのほうが難しいのかもしれない。
このゲームのシステムとして、夜の行動で手紙を書くことが出来る。それがタイトルにも反映されているわけだ。と言っても手紙を一から打ち込む訳ではなく、あらかじめ決められたいくつかの方向性に沿って選んでいく。
それでもなかなか支離滅裂な文章が出来上がることもあるので、一部界隈でネタにされたことで変に知名度を上げていたりする。前世の喪女もそこから入っていったくちだった。
レーヴェは典型的な腹黒キャラで、攻略も他のキャラと比べると難しい。デレることも少ない。しかし主人公が送った手紙の返信となるとどこか優しげで、ギャップが可愛らしいと前世の喪女は大興奮しまくりであった。
レーヴェだけはどんな支離滅裂な文章を送ろうとも気分を害して好感度を下げることはなく、あなたは手紙を書くのが苦手なのですねと書きながら、読み上げているレーヴェのボイスは楽しげだった。喪女は、レーヴェが楽しげなその理由を身をもって知るとは思っても見なかった。
(授業ばっかで自由時間がない!たまにやってくる手紙に返事を書いてる時間くらいしか癒しがないわ)
レーヴェの一日のスケジュールはこうだ。朝起きて朝食を頂き、訓練。昼食を済ませて授業、夕食を済ませて自習。
王子としての責務があるということを理解していたとしても、齢7歳の少年に課す所業ではないだろう。
なぜこのような状況になってしまったのか。その理由はレーヴェが生まれた時にまで遡ってしまう。
レーヴェというトイテンベルクの第二王子は、第一王子と1歳違いで誕生した。
父親の国王は愛妻家として国内外にその溺愛ぶりを轟かせるほどであり、もちろん王妃の第二子となるレーヴェの誕生は周囲から祝われていた。
――その誕生と引き換えに王妃が命を落とすまでは。
愛妻家の国王は、王妃が命と引き換えに生んだ子供を愛すことが出来なかった。王妃の金髪碧眼をそのまま受け継いだようなレーヴェの色彩もまた気に入らなかったのだろうか。はたまた、亡き王妃の姿を思い出すことが苦痛だったのであろうか。
国王の黒髪赤眼を引き継いだ第一王子と比べて、第二王子は極めて冷遇されて育った。
母親の愛を知らず、父親の愛を受けず。
しかし、第二王子は第一王子と比べれば過剰なまでの教師を付けられていた。第一王子の保険としてのレベルを逸脱している。
それも教師の質は玉石混合であり、とても教師に向いていないような人間が教鞭をふるうことだってあった。さらには第二王子が冷遇されているのをいいことに好き勝手に振舞ったりする教師も一人どころではない。
「レーヴェ王子、授業の再開が遅れましたね。 さあ、腕を出しなさい」
レーヴェは自己の解釈のまま、レーヴェとして教師に反抗的な目を向けていた。
「出しなさいと言っている!」
従順ではない態度を見た男性教師はレーヴェに足技をかけ、容赦なく転ばせた。
男性教師は自分のベルトを外し、鞭として振るう。
「血だけのおこぼれ王子が!」
言いながら男性教師はレーヴェの腕をベルトで打った。びゅっとベルトが空気を裂く音とともに激痛が走る。皮膚が裂け、血が出た。
(痛がるな。屈するな。なぜならば私がレーヴェだからだ。原作でのレーヴェも通った道だ。原作のレーヴェが耐えられたのだ。私が耐えなくてどうする)
レーヴェは知らぬ間に父親の憎悪の矛先を向けられていた。心を殺し、何度も何度も振るわれるベルトを受け入れた。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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