安全第一異世界生活

文字の大きさ
120 / 239
イルグリット王国 魔道具編

119話 さようならケネト街 いざ行かん王都!!

しおりを挟む
宿屋を出て、トーさんに肩車をしてもらい、高い位置から数日滞在してた街を見下ろしながら門までの道のりを家族で一緒に移動する。

「あのね、あのマルシェの中にある串焼き屋の串肉いつも買っていたんだ。たれが甘辛で美味しかったでしょ。それとね奥に珈琲のお店もあって、苦みが強めの深入り焙煎で、とても奥行きのある味わいなの。珈琲豆を買ってあるから、宿屋に付いたら入れてあげるね。門の近くにあるクレプ屋さんのバターシュガーのクレプが美味しかったの。まだ朝早いから開いてないから、帰りはトーさんも食べようね。あとね……」

私がしゃべり続けるのを、トーさんは嬉しそうにずっと相槌を打ちながら聞いてくれた。ここ数日返事が返ってこなかったことに自分でも思うより寂しかったんだって、気づかされた。帽子になってくれているウハハをなでながら笑顔で話し続けた。

門に行くと、大きな貴族様用の立派な馬車が2台あって、そこにおねーちゃんと領主さん。その隣に奇麗な金髪の女の人が居た。
トーさんに下ろしてもらい、おねーちゃんにかけよった。おねーちゃんも私の所に走ってきてくれて、きゅっと抱きしめてくれた。

「おはようおねーちゃん」

「おはようカナメ。きのうはありがとう。もうお別れなんて寂しいわ」

「帰りにトーさんに昨日食べたクレプ食べてもらいたいから、また来るね」

「本当!その時はぜひ我が家に遊びに来て。お父様!お母様!良いでしょう?」

私を抱きしめたままおねーちゃんはご領主夫妻に聞いている。

「もちろん。親子そろって我が家にお寄りください」

領主様が私とトーさんを見て笑って言ってくれる。隣の金髪の奇麗な人が私の前に膝を付き、おねーちゃんに似た優しい顔で

「クリスティーネが無事で居られたのも貴方のおかげです。ありがとう勇敢な冒険者さん」

私はくすぐったいような、恥ずかしい気持ちになり…顔が熱くなった。とっても嬉し。そんな私の頭をトーさんが優しくなでてくれる。

お別れの挨拶をしている間に、トーさんに領主さんは事件の全容を語ってくれた。
馬車に乗り込んだ後、その事を詳しくトーさんから聞いた。

どうやらミーナ嬢は元貴族、伯爵家のお嬢さんだったらしい。でも家が没落して、この街の領主で元の自分の家格よりも下の子爵家に働きに来た。働いても給金のほとんどは家族の仕送りにしなくてはいけない。キラキラときらびやかなお屋敷で、自分がとてもみじめに思ってしまった。
そんな中で、この家の少々わがままな末の娘のクリスティーネ嬢が自分が失った生活をしている事が、羨ましくて、羨ましくて、憎らしかった。
金髪碧眼の見目の良いクリスティーネ嬢に目を付けたある貴族の男の口車に乗り誘拐の手助けをしたそうだ。もちろん昨日のうちに、証拠を集め騎士団を動かし、その貴族家に乗り込んで捕縛した。子爵家なのに凄い行動力だ。
ミーナ嬢以外の害意がある気配は、誘拐しようと待ち構えていた男たちが3人ほど周りにいたそうだ。結界のおかげで近づく事も出来ず、うろうろしただけで終わった。

「クリスティーネ嬢が無事でよかった」

馬車の窓から外を見ながらカナメはポツリとこぼした言葉。トーさんが不思議そうにカナメに聞いた。

「なんかイルやアーチェの時と違って距離がある言い方だな」

私はトーさんを見る。そしてまた馬車から見える景色に目を戻す。

「甘やかされ過ぎな子は苦手なの。食べ物を大事にしない子も苦手。でも悪い子ではなかった。だからまた会うのは嫌じゃない」

大事にされて育ったから、食べれなければ残せば良いと言われ育った彼女が悪いわけではない。
でもさ…私はお腹が空いて犯罪に走って後悔した子を知っている。
公園で水を飲んで空腹をごまかしている子を知っている。
私が作ったカレーを涙を流しながら食べていた小さなあの子を知っているから……

「貴族の考え方が受け入れられなかっただけ。大丈夫。私いい歳だから本人に悟られないようには出来ていたでしょ」

トーさんはいつもと違う私の言葉に、少し眉を下げて困り顔で頭をなでてくれた。

「……そうだな」

「そうね。今度手作りのお菓子をプレゼントして食育するわ」

「ショクイク?」

「私の元の世界では、食に関する教育があったの。お残しする人にはみっちり教えなきゃネ。………そう言えばトーさん門兵さんたちに何か言われていたけど、なんだったの?」

トーさんが固まった。なんか汗がメッチャ出てるけど、何言われたの?

「ハハハハハハ。叱咤・激励って所かな」

わざとらしい笑い声でトーさんは会話を止めてしまった。変なの……まぁこの馬車メッチャ早いから夕方には着きそうだ。やっと王都♡魔道具楽しみだ。


***

街を出ようとしたとき、なぜか門兵数人に連れていかれて、

「娘さんの優しい気持ちにつけこんで、世話をかけすぎじゃないか? 」

「あんた、父親ならあんなに健気な子に、これ以上心配をかけちゃいけないだろう!」 

「あの子には、自分の人生を精一杯生きてほしいんだ。まず父親として、あの子の輝く未来を守るために、あんた自身がしっかりしてくれ!」

「おい!!わかってんのか!!しっかりしろよ!父親だろ!!」

「はっはい!!えっと肝に銘じます」

凄くしっかりしろと怒られた…ごめん俺ここ数日ホント何してたんだよぉ!!!

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。  彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。  彼女は思った。 (今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。  今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

異世界召喚のおばあちゃん

あまつ冴
ファンタジー
異世界から召喚された中におばあちゃんがいた

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり
ファンタジー
 気づけば突然異世界に迷い込んでしまった主人公。目の前にいた、自身を神の補佐と名乗る天使に(一応美少女)、異世界について教わることに。  そして始まった異世界での生活は、様々な種族や立場の(個性的な)人に出会ったり、魔界に連れていかれたり、お城に招待されたり……。  そんな中、果たして主人公はどのような異世界生活を送るのだろうか。  異世界に迷い込んだ主人公が、現地の様々な人と交流をしたり、一緒に何かを作ったり、問題をなんとかしようと考えたりするお話です。  山も谷も大きくなく、話の内容も比較的のんびり進行です。 現在は火曜日と土曜日の朝7時半に投稿予定です。 感想等、何かありましたら気軽にコメントいただけますと嬉しいです! ※カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています

逆行転生って胎児から!?

章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。 そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。 そう、胎児にまで。 別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。 長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

処理中です...