安全第一異世界生活

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イルグリット王国 魔道具編

138話 フリムストの嘘と目的とシンの気持ち

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走っていくシンさんを見て、私とトーさんは大きなため息を吐く。ギリルさんは拒絶された事にショックを受けて動きを止めている…そんな重い空気をトーさんが壊す。

「俺たちは、お前らのアジトの方も見て回ったけど、皆一様に盲目的にこの国が悪いと思ってるんだな。お前らあの魔石の影響受けすぎだろ」

ゴンさんが「はっ?」っとびっくりしたようにこちらを向き

「俺たちは魔力遮断のアクセサリーを常に身に着けているから、そこまでではないはずだが…」

ゴンさんは後ろ手に縛られた腕についているブレスレットをトーさんに見せるため、背を向けて精一杯トーさんの前に腕を突き出した。トーさんはその腕を取って、ブレスレッドを眺めて言う。

「魔力遮断率が25%……低いな……こんなブレスレットだと魔石の影響を少し軽減できる程度だ。100%遮断したいなら全身覆わないと無理だろう」

「そう、な、のか。」

ゴンさんはブレスレットを見て言った。その姿を見てギリルさんは笑った。

「ハハハ、アハハハハ。国の対応も嘘、家族の情報も嘘。身を守るはずのアクセサリーさえ低級品とは、私たちはやつらの奴隷だったみたいだな。クックククハハハ」

「ギリル...でもおまえ子供が生きてたじゃないか。嘘で良かったじゃないか」

ギリルさんはキッと、ゴンさんを睨みつけるもそのまま目を伏せ、

「まぁ…そうだな」

小さな声でそうこぼした。そんな二人のやり取りを見ながら、トーさんは今回の祭りでの概要をこの二人からも聞くことにした。

「で、イルグリット王国でお前らフリムストの奴らは何をしようとしているんだ?」

「この国を魔獣寄せの国に変えようとしている」

そう、はっきりとギリルさんはトーさんに目的を話した。トーさんは顎に手を当てて、フームと考えると、納得したようにトーさんの見解を話す。

「あぁ、なるほど。お前らの母国を魔獣蔓延る地にしようと自らが動くと。なるほど。何かあってもフリムストは無関係を貫けると、そういう事か…」

「最低」

トーさんの見解を聞いて眉間に皺をよせ私が呟いた言葉を聞き、トーさんが私の頭に手を置いてよしよしと撫でてくれる。

「そうだな。そういう事を考える奴らにはお仕置きが必要だよな。とりあえずお前ら全員沼で確保しておこうか。闇に飲まれるなよ」

そう言ってトーさんはギリルさんとゴンさん、そしてフリムストの召喚勇者がトーさんの闇沼の中に沈んでいった。それを見守ってトーさんに

「シンさんとギリルさん仲直りできるかな?」

「拗らせてるからなぁ………。まぁ時間が掛かるんじゃないかね…そこは親子で殴り合いなり、話し合いなりしてもらおう」

そう言って、苦笑交じりに後頭部をガシガシ掻きながら、トーさんはシンさんが駆け出した道に私と進んでいった。

***

【灰猫 シン視点】

ハァハァハァ…

『あの糞バカ娘は、殺しても死にはせん。生きておる。絶対だ』

ハァハァハァ…

酒に酔った爺がいつか…そんな言葉を漏らしたことがあった。爺は帰ってきた娘を見たら喜ぶか…婆は見ることなく逝ってしまったけど…

息が上がる。苦しい、苦しい、苦しい……
息が詰まるような、吐き出したいような、なんで目から雨が降ってくるんだよ。あんな奴の為に泣きたくなんてない。あんな、子供よりも魔道具を取った人間なんかに気持ちを揺らしたくない…ないのに

「フッグ…ウウウ゛ …ウゥウウウウ…」

苦しいよ。苦しいよ婆…あたしはなんでこんなに苦しいの…

「バガやろぉーーーーぉぉぉ………ヒック…ウゥゥゥヒック」

アタシの絞り出す嗚咽が、静かな地下水道に響く。下水道の道の端に寄って、そこで足を抱え三角座りになって苦しいのをやり過ごす。今までも寂しいときはこうしてきた。大丈夫。アタシは、大丈夫…。

そんなアタシの背中にフッと、小さな温かい手が添えられた。

「泣いていいよ。我慢しなくていいよ。吐き出したいときにいっぱい吐き出そう」

そう言いながら、アタシの背を優しくさする幼女。頭にも温かくて大きな手が触れてきてよしよしと撫でてくる。その温かさに、我慢しようと押し込めていた涙が決壊したように止まらなくて…ボロボロボロボロと、涙と一緒に弱音も悔しさも寂しさも溢れる。涙がもう枯れたと思うくらい泣いた頃、アタシの横から「クゥゥゥ」っと小さな音が響いた。ようやく顔を上げ、真っ赤な目でその音の方向を見ると、顔を真っ赤にしたカナメちゃんと目が合った。

「お腹空かない?」

そう照れくさそうに笑ったその顔に、アタシの心のわだかまりも浄化されるように、自然に笑顔になった。

「空いたですニャ」

「じゃあ、お勧めの御飯食べよ!『お好み焼き♡』今日はカナがシンさんにおごってあげる。美味しいから覚悟してね!!」

そう笑ったカナメちゃんの笑顔の目元は赤くなっていた。アタシはそんな笑顔を見て、また涙が出そうになった。

「楽しみですニャ」

少し涙がにじんだ目元を細め、へたくそな笑顔を作ってアタシは笑った。
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