安全第一異世界生活

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イルグリット王国 魔道具編

152話 これからどうするか…【シン視点】

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もうね、どうすればいいのかまったくわからない。市井に流れている情報と…王様たちが教えてくれた事は、ところどころ合致する箇所もあるが、異なる点が多く存在する。そして話の本質が全く違っている。
流れている話は、王族の愚かな行いで、この国の貴重な魔道具技師が他国に行って戻ってこない。
実際は脅されるような状態にあった国が苦肉の策で組んだ契約…しかも職人たちに相談もして、決して王族の命令などではない事が分かった。でも腑に落ちない事もある。私とジェニーおばさんは困惑しつつ、私はかぶりを振った、

「街では王族が性能の良い魔石欲しさに技術不足の若い技術者達を派遣したって…そう言われていたニャ…」

「そうですよ、あの時確かに義父も主人は何かに思いつめていました。ですが魔石不足なんて一切聞いて居ませんよ!」
 
王様は申し訳なさそうに言葉を紡いだ。

「あの時期、国々からの注文と言う名の脅迫の様な要請がひどくてね、下手な事を言おうものならこの国はあっという間に戦火に巻き込まれる、そんな危うい時だった。だから魔石不足は関係者や取引先で気づくものは居ても、口外しないように箝口令を敷いていたのだ」

「そうして…事が落ち着いた頃には、気が付けば今の様な噂が国中に広がっていたのよ。職人たちが返ってこない以上、訂正をする事も出来なかった…これも多分どこかの国が動いたのでしょうね…」

王様とお妃さまの言葉に、ウィル様は申し訳なさそうに下を向いた…

 「…そんな…」アタシは両手で顔を覆った…あの人が国の危機に立ち上がった……そんなあの人に、アタシは…『アタシの親は死んだニャ!16年前にアタシを捨てて死んだニャ!!』と。唇を嚙み締め、胸を後悔と言う名の靄が覆いつくす。
あの時クロトと一緒に見た、あの職人たちの目はすさんで曇っていた。魔石の影響もあるだろうけれど、そう言い聞かされてきた派遣された技術者達だけじゃない…イルグリット王国の市井で暮らす皆も、人づてに聞いた話が事実だと、流れてきた話を疑う事無く、盲信していた…。
当事者たちが語れないという事実を知らず、語らない…否定しない。だから聞かされた話は事実だと…あぁなんて愚かな…アタシが絶望に沈み込みそうになった時、凛とした奇麗な声が私の耳に入ってきた。

「今のお話を聞く限りかなり危ない状況だったと推察できます。その状況をどう改善したのでしょうか?」
 
ずっとウィル様の横で静かに静観していた紬木さんが、おずおずと手を上げ声を出した。ウィル様は珍しく自分に許可を求めず自ら話す紬木を見た。
紬木に視線を向けた王族三人は少しびっくりして顔を見合わせ、まじまじと紬木の顔を見てくる。そんな視線に少し身じろぎをする紬木に、王妃様が柔和な微笑みで口をはさんだ。

「先ほどから思っていたの。あなた黒目、黒髪なんて、あの方と似ているわ」

横から王様も優しい微笑みを浮かべ紬木さんに話しかける。

「そうだね。オーラシアン王国で召喚された聖女様がね、旅の途中、我が国の現状を知り、各国に聖国と聖女の共同声明として、苦言を呈し場を収めてくれたんだよ」

「わが国で枯渇していた魔石を聖女様が大量に持参してくださって 、お代は自分の世界に在った魔道具を作って欲しいと注文されたの。納期の期限を定めずに。作るのに魔石が足りなければ、いくらでも用立てるからと。他の魔道具に魔石を使っても良いよ。使った魔石分、魔道具を値引きしてと、可愛い笑顔で笑っていらしたわ」

「一緒に旅をしていたお付きの獣人が、戦うのが好きな高位冒険者だったらしく、動けば動くだけ良い魔石が手に入るって旅をしていた皆が一緒に笑っていらしたよ」

「もうまさに彼女はわが国の救世主だった」

「わが国は300年前に存在した、魔道具技師のガンゾウ様の影響を色濃く残していてね、お菓子や、料理、建物、内装に至るまで、異世界から召喚された聖女様の興味を引くものが多かったらしく、ありがたい事に、いまだに交流を持ってくれている」

「……あ!!あの和室とかお好み焼きとか…まさかガンゾウさんという方は…」

紬木さんは口に手を当て目を大きく開いていたが、バルトロメオ殿下がその紬木さんの姿に苦笑して困ったように伝えてくれた。

「詳しくは文献にも載っていないんだ。ただ、ふらっと現れいろいろな知識を民に与え、魔道具を作る基礎を作ってくださった方だと残っているだけなんだ」

紬木は少し寂しそうにしながらも

「そうなんですね。教えていただいてありがとうございました」

ぺこりと頭を下げお礼を言った。そんな紬木の背中をウィル様が励ますように撫でてあげていた。このお二人はなんだか、お互いが支え合って立っている恋人同士みたいだ…。アタシが二人の姿を見ていると、バルトロメオ殿下が話をはじめた。

「ひとまず、明後日には魔道具の祭典が始まる。3日目の昼に王城からゲンムノハナの魔道具の起動式がある。それまでの期間でガンゾウ工房の方とジェニー夫人と私たちで動く。そして人質になってしまう恐れのあるシン君はこちらで保護しよう。マルリシオ殿は残念ながらこちらで拘束させてもらう。帰ってまた魔道回路を書かれては困るのでな。祭りが終わって、国同士で話せてからの期間になる。構わないね、ウィル殿」

「あぁ、構わない。迷惑をかけてすまない。保護している期間マルリシオの事は王族扱いしなくて構わない。」

「!!兄上!!」

「お前は、自分のした事を本当の意味で理解していない。理解できるまで国の名前を出すことも、王子である身分を笠に着る事も一切禁じる」

ウィル様はバルトロメオ殿下に向き合い頭を下げ

「一貴族家次男として対応を頼みます。不甲斐ない弟をよろしくお願いします」

「分かった。では力のない一貴族家次男として預かろう、それでウィル殿と紬木殿は如何なさるおつもりかな?」

バルトロメオ殿下は苦笑しながらマルリシオ殿下の事を了承し、二人の動きを聞いた。二人は顔を見合わせ頷き合い、これ以上馬鹿な真似をしないように国の動きを見るために転移で国に帰る事になった。

「何かあれば、転移でこちらに来させていただくが、構わないか」

「お二人で有ればいつでも歓迎致しますよ」

そう殿下同士が笑い合い今後の動きが決まった。

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