安全第一異世界生活

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番外編・召喚された者達

171話 番外編 曽根さんと山田君の異世界生活 ①

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朝日がまだ昇りきらない早朝、聖堂は清らかな薄闇に包まれ、静寂が支配している。その中で、ただ一人、祈りを捧げる者がいます。
その祈りはあまりにも長く、冷たい大理石の床は、祈り続ける者の体温を容赦なく奪っていきます。若い聖女候補たちは、この厳しい寒さに耐えきれず、長く祈りを捧げることができません。
しかし、そんな状況をものともせず、ひたすら熱心に祈り続ける者がいるのです。
今代の聖女アヤネ。驚くことに年間を通してアヤネがこの祈りを休むことはほぼない。何度か体調不良や、魔力枯渇で動けない時を除いて。

「本日は2時間祈りの場で熱心に祈っていらっしゃったわ」
「おかげで20年近く結界が綻びる事が無い。」
「聖女さまさまだな。ありがたい事だ」

聖女アヤネの評判はすこぶるよく、秘かに貧民街の人間の救済を行っているとか、腕が無くなった騎士の腕を生やしたとか、貴族家の簒奪を阻止しただとか、一番大きいニュースが第三王子の後見に聖女が就いた途端、王太子になったとか…。

「ねーそれがすべて本当の事なら、絶対なんか裏があるって」

聖女様の噂話がご立派すぎて、

「そうかな?立派な人に聞こえるけど」

「まず、慈善だけの人なら後見なんてならなくない?」

「頼まれたんじゃないのかな?」

山田はとっても素直で良い子なんだけど、裏って絶対あるんだよ。
そのご立派な聖女様に会うにはどこに行けばいいんだろう?教会かな…オーラシアン王国の首都に入って私たちは考える。ふと門の側に懐かしい案内所がある事に山田が気づき呟いた。

「異世界にもこんなものがあるんだ…」

「観光名所なの王都って?あぁ!聖女様に会うにはどうしたら良いか聞こう!」

アタシは山田の手を引き案内所に意気揚々と入っていった。

「いらっしゃいませ!ようこそ王都に。観光ですか?お仕事ですか?」

入ってすぐ声を掛けられた。黒髪ストレートの前下がりボブ。あら久しぶりのお洒落な髪形、しかもお姉さんメッチャ似合ってる。受付嬢って感じ。
異世界の人は伸びっぱなしを括るだけとか多いんだよね。括らなくて良いように短くしたり、あと縦ロール。あれには笑った。高位貴族令嬢の縦ロール率えぐすぎ。フリムストだからだったのかな?あんまり関わらなくて正解って感じしたんだよね。私はにこやかに営業スマイルの黒髪美女なおねーさんに担当直入に聞いてみる。

「こんにちは、聞きたいんだけどー、聖女様に会うのってどうしたら良いですか?」

おねーさんの空気が張り詰め、視線が細められた。え?なに?私なんかやばいこと言った?

「失礼ですがお客様はなぜ聖女様にお会いしたいのですか?」

お姉さんは丁寧に優し気な口調だけれど、発する空気が鳥肌立つくらい寒々しくてヤバい…。もしかしてアタシら不審者扱いなのかな?え?やばくない???焦ってしまって返事を返せないでいると、アタシの前に山田が出てきた。

「聖女様が、えっと召喚された方とお聞きしまして。もしかしたら日本って国を知っているカナ?って思いまして…」

しどろもどろながら山田が答えてくれる。

「ニホン…ですか。」

お姉さんは焦げ茶色の山田の頭の先から足の先まで探るように見てきた。視線が怖い。

「ニホンを知っていたら何かあるのですか?」

「故郷がおんなじならお話聞いてみたいと思って!アタシもこれでも聖女らしいので」

山田の後ろから手を上げ答えるアタシにお姉さんは笑顔のまま固まった。そして数秒の後訝し気に私の姿も頭の先から全身見てきて、眉間に皺を寄せた。

「お宿はお決まりですか?」

その言葉にアタシも山田も突然何?と顔を目線を合わせ首を振る。

「まだ、首都に入ったばかりなので何も決めてないです。お勧めありますか?」

「音の里って宿は聖女様監修のお宿で定期的に聖女様が訪れるそうですよ。お風呂付で、聖女様考案のレシピの、カレーが食べられます」

アタシと山田は両手を上げて手を合わせ喜んだ!

「カレーだって山田!!」

「お風呂だよ!やっとお風呂に入れるよ!!曽根さん!!」

宿の場所教えてください!!そう言ってアタシたちは直ぐにそこに滞在することにした。アタシたちが案内所を出て行った後、お姉さんがすぐにどこかに連絡していたことは気づかなかった。

***

「お風呂サイコーだった!!」

ホカホカ湯上りで館内着の浴衣を着て部屋で大の字に寝転んでいると、コンコンと扉が叩かれた。出ると館内着の浴衣を着てご飯のお誘いに来てくれた山田だった。
扉を開けた私の姿を見て真っ赤になる山田。辺りをキョロキョロ見回して、凄く珍しく強引に部屋に入って来た山田は真っ赤になりながら、出来るだけアタシを直視しないように館内着の浴衣を直してくれる。
「なんで合わせが逆なの」とか…
合わせ?逆?なにそれ???そう思いながらされるがままに直してもらいさっきよりきれいに、きっちりしてくれた。それと同時に魔法で髪も乾かしてくれた。人間ドライヤー山田。至れり尽くせり山田。おかんな山田も全部全部大好きな山田だよ♡





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