ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
56 / 2,518

第56話  夜戦の結果

しおりを挟む
「さてみんな、夕食も済んで外は暗くなりました。これから行う戦闘は、夜戦になります。視界が悪くなって戦闘がしにくくなるのは分っていると思うけど、味方の位置も昼間より把握し難くなっているので注意してください。

 危ない不意打ちをされそうになったら、俺やニコ・ハク・ギン・クロが介入するけどできる限り自分たちでの対処ができるといいな。夜行性の魔物が起きて動き出すころなので、昼間の魔物だけではなく、見た事のない魔物も出てくるから注意するように。

 色々言ったところで経験してみなければわからないことが多いので、キリキリと行っちゃおう。戦闘順は、年長・年中・年少のローテーションでいくよ。

 二匹以上だったり戦闘中に乱入してきたら後ろの番が引き付けて倒すように! 四匹以上なら俺たちもそのまま戦うから、まずは一匹に集中して連携を取りながら倒せるように」

 娘たちは真剣な顔で俺の話を聞いていた。話が終わると装備のチェックし、問題がないことを確認している。準備が整ったようで、ピーチから準備ができたと報告してくれた。

「正解なんてないから、自分たちが思うように戦闘するといい。じゃぁ行こうか」

 プチダンジョンの外へ出る。不動のリビングアーマー(ミスリル)が門番をしており、少し離れたところにドロップアイテムがまとめてあった。数を見るとおそらく五匹がリビングアーマーに殺されたのだろう。ドロップアイテムを回収し森の中心を起点に同円上を探索するように移動を開始する。

 年長組は、マリーを索敵の中心にしてシュリがその後ろにつく形だ。他のメンバーは、シュリの後ろに、ピーチ・メアリー・ライムの後衛職が付き、最後尾をアリスとライラが警戒している。

 その後ろに俺たちがいるので、最後尾の2人はこの位置じゃなくてもいいのだが、実戦に近い形で本人たちが動いているのでこれは正しい選択だろう。

 夜目のスキルがないので、魔法で明かりを複数準備してある程度の視界を確保している。夜行性の魔物にはこっちが見えているので、わざわざ相手の土俵に乗る必要もないとの判断でピーチが指示していた。

 夜目のスキルがあるとLvによってだが、暗がりも問題なく見えるようになるのだ。

 魔物によっては光に引き寄せられてくるが、視界の悪い状況で戦闘するよりは多少魔物が増えても視界を確保して戦闘した方が、俺は正解だと考えている。

 魔物のLvが高いのであれば話は変わってくるのだろうが、今回に関しては昼間なら三匹までなら、相手にしても問題ない感じだったので、様子をみながら戦闘をする。

 二十分程移動すると、俺の頭の上に乗っているニコが魔物を感知したようで、俺の頭をツンツンしてくる。どうやって索敵してるがわからないが、今回はハクやギン・クロより見つけるのが早かった。俺の索敵範囲にもひっかかっていないので五十メートル以上離れているのだろう。

 俺の索敵にも魔物がひっかかった。サイズや形からしておそらくバーサクベアーだろう。こいつって昼間も夜も起きてるのか? いつ寝てるんだ? スライムじゃないし流石に寝るよな?

 マリーが四十メートルくらいまで近付くと魔物を察知した様子で周りに伝えている。だいたいの方向をシュリに伝えると、いる位置を交換してシュリが先導する。見つかってるとわかったバーサクベアーは、雄叫びをあげて向かってきた。

 慌てずにシュリが挑発をして突進を受け止める。この光景をみていつも思うが、体長三メートル以上あって体重は500kgは下らないだろうバーサクベアーが、すらっとしたスタイルのシュリに止められているのはシュールだ。

 昼間と変わらず安定した立ち回りを見せてるな。おっと! 年長組の死角からシャドースネークが来てるじゃねえか! ハクに迎撃に行くように言おうとしたところで、シュリがマリーにもう一匹きているのを聞いて、声に挑発スキルを乗せ範囲に向けて大きな声を上げた。

 シャドウスネークは、死角から回り込もうとしたが挑発されたため、一直線にシュリへ向かってきていた。

 シュリの盾が光りだし……

 【シールドチャージ】

 盾スキルを使ったようだ。シールドチャージをくらったバーサクベアーは、のけぞりそのまま後ろへ倒れてた。追撃のためにライムが多めに魔力を込めたストーンアロー(電信柱程の太さ)を真上から落とした。お腹に刺さり絶命するバーサクベアー。

 シュリを見るとさらに盾を光らせ

 【シールドバッシュ】

 盾を振り回してシャドウスネークの頭へ盾がヒットする。

 動きが鈍ったシャドウスネークは、メアリーの矢を口に受け瀕死になった所に、さらにアリスが追撃をかける。雷魔法を剣に付与し、メアリーの矢によって上がった首をキレイに切断した。

 なんだろ? スキルとか普通に使ってるけどこれってふつうなのか? 別にスキルなくても同じ動作はできるんだけど、スキルを乗せた方が特殊効果が強い感じだな。

 シールドバッシュやシールドチャージはおそらく、ノックバック仰け反り効果が付与されてるんじゃないかな。動作でばれるのは厳しいけど魔物戦なら有効に使えるか。

 年中組も光をいくつも用意して視界を確保していた。年長組と違うのは、タンクが2人いるところだろう。MMORPGでは、タブーとなっているタンク同士のヘイトの奪い合いを意識的にやっているようだった。

 バーサクベアーを挟んでヘイトを取り合い、右往左往している所をサイドからアタッカーがザックリ、ドカンと攻撃をして倒していた。ゲームっぽい世界だからできるヘイトの奪い合いって、意識的にやると面白いもんだな。

 振り向いたりするためにワンテンポ攻撃が遅くなったり、振り向きざまの攻撃だから対処しやすそうだった。

 MMORPGだと、強い敵だとタンクを交換しながら戦闘するのもあるからな。今までは一分もかかる戦闘はほとんどないけど、本来同ランクならバーサクベアーはタフなので五分十分かけて倒すのが普通らしいんだよな。

 ミリーさんからもらった資料によると、もっと強い魔物なら一時間とかかけて倒すこともあるだろう。そういうときは、タンクを交換しながら戦うってギルドの講習でいってたな。

 最後に年少組の戦い方は前の二組とは違い、イリアの精霊魔法で闇精霊に夜目と同じ効果のあるバフを付与していた。戦闘の様子がうまく見れないので、イリアにお願いしてみんなにもかけてもらった。

 昼間程とは言わないが、夜だとは思えないほどの視界の良さだった。

 年少組の戦いは斬新の一言だった。避けタンクのサーシャが挑発してヘイトを稼ぐと一気に後退して、魔物に自分を追わせてパーティーの中心に連れ込んで集中砲火で終わり。

 相手が一匹ならかなり有効な作戦ではある、周りの事を警戒している人員を残さなかったのは減点だな。せめて索敵とサブタンクは攻撃に参加せずに警戒するべきだったかな。

 どの組も特徴が出てるな。年長組はシュリという圧倒的なタンクがいるから王道の戦闘スタイル。

 年中組は、工夫を凝らして攻撃される回数を減らしている印象の戦闘スタイル。

 年少組は、固定概念にとらわれない自由な発想の戦闘スタイル。

 どのスタイルも嫌いじゃない! 個人的には遠距離火力だけによる殲滅は好みではない。

 娘達の初めての夜戦は特に問題も起こらずに幕を閉じた。

 ベースに帰ってから、お風呂に入り軽く夜食を食べてベッドに向かうのだった。

 今日は、年中組と一緒のベッドに寝ることになったのだが、全員が少しだけ俺から距離をとって眠ろうとしていたので、嫌なら一緒に寝なくてもいいんじゃないかと聞いたら「一緒に寝ます」とシンクロして言われたので口を閉じざるを得なかった。

 微妙に隙間が空いていたので、ニコとハクはその隙間にすっぽりと挟まってご満悦そうだった。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...