ダンマス（異端者）

第666話 家が一番

　スタミナ切れを起こしてから、一時間程が経った。アクアに念のため、安静にしているようにという事で、ニコクッションで一時間たっぷりと横になり、体を起こした。

　体が動くか確認していくと、特に問題なく動かす事が出来た。アクアの言う通り、スタミナ切れであれば、回復すれば問題なく体が動かせるようになるのだから、これが普通なのだろう。

　今日は、これ以上スキルリンクの練習をするのは、危ないのでやめて自分の家へ戻る事にした。

　家に戻ると、スカーレットが待ち構えており、有無を言わせぬ圧力で俺を食堂へ誘導していく。悪い事をしたつもりはないが、いけない事をしている気になってしまった。食堂に到着すると、俺の好きな料理が色々と並んでいた。椅子に座るように促され、席に着く。

「ご主人様！　きちんと食事もとらずに、何をしていたのですか？」

　ここに至って初めて、自分がミスを犯していたことに気付いた。シルキーたちの飯をすっぽかして、スキルリンクの練習をして、ぶっ倒れてしまっていたのだ。悪い事をしていないつもりだったが、怒られるような事をしていたのだ。

　スカーレットに隠さず話すと、アクアから聞いていたようで、嘘が無い事を確認したようだった。もし嘘ついてたら、どうなったんだ？　考えるだけでも怖いので、考えるのをやめた。

「アクアから話を聞いていましたが、本当に心配したんですよ。もしご主人様がいなくなったら、私たちに家事仕事を与えてくださる人を、また探さないといけないんですからね！」

「家事の心配かよ！　俺の心配じゃないのか？」

「ご主人様を心配してくださる方はたくさんいるので、家精霊である私の存在意義を心配するのは必然です」

　言い切られてしまったら何も言い返せない。

「危なっかしいご主人様のために、好きな物を準備しています。泣いて喜んでもいいですよ」

　泣きはしなかったが、大好物が並んでいるので、喜んで色々な物を食べさせてもらった。昼を抜いて体を酷使していたので、あまり食べれないと思っていたが、普段の倍くらいの量を食べていた。スタミナ不足になると、食べる量でも増えるのだろうか？

　俺の食べっぷりを見ていたシルキーは、満足そうな顔をしていた。

　あれから数日過ぎた。明日には妻たちが帰ってくると連絡があった。二週間前はみんながいなくて、寂しくなるかと思っていたが、思ったより寂しくならなかった自分に、びっくりしている。

　みんなのために頑張ってスキルリンクの情報を集めた。みんなのためになるといいな。普段使わない弓も頑張って使ったんだから、役に立ってほしい所だ。一人ひとりのために、俺の感じたスキルリンクのタイミングを記入している。これがみんなに通じてくれるかが、一番問題だけどな。

　妻たちは明日の朝つくように帰ってくるようなので、出迎えてあげたいところだが、深夜に着いて朝起きてから移動を開始すだろうから……早めに寝て、みんなが起きる前に専用ホームに行くか。

　風呂に入ってベッドに横になると、自分でも驚くくらい早く眠りについていた。自分で起きれる気がしなかったので、寝ずの番をしているスケルトンに起こすように、命令をしてある。

　今日は寝起きが悪かったようで、スケルトンが苦戦していたらしく、近くで寝ていた？　ニコを起こして、俺を起こすようにお願いして、窒息死するかと思う顔面張り付きをされて、起こされた。

「起きなかったのは謝るけど、さすがに顔に張り付いて起こすのはやめてくれ。本当に死ぬかと思ったわ。死因がスライムによる、口を塞がれたため窒息死とか、マジで笑いにもならん！」

　怒ってはいたが、ニコがスケルトンの後ろに隠れたため、俺は何も言えなくなってしまった。

「スケルトン達、頼んだのに起きなくてすまんな。ニコに頼んだ事を除いて完璧だったよ」

　敬礼をして去っていった。せっかく起こしてもらったんだから、みんなが起きる前に向かわないとな。っとその前に腹ごしらえを……キッチンに誰かいるだろうから、軽くつまめる軽食をもらってくるか。

　夜番で起きていたブラウニーに、ホットサンドをもらって、専用ホームに向かい、歩きながら食べる。

　専用ホームに到着するが、まだ一台も専用魔導列車は到着していなかった。

「あれ？　もう到着していると思ってたけど、まだ到着してないんだな……」

　頭に乗っているニコを足元に放り投げて、抱いていたハクを飛ばして、ホームに備え付けているベンチに座る。俺たちしか使わないから、ベンチがある必要はないんだけど。今回はあってくれて助かった。無かったら、適当に椅子を召喚するはめになったよ。

　ベンチに座ると、ニコとハクが定位置に収まろうとして、俺にのしかかって来た。仕方がなく受け入れると、ハクはそのまま膝の上で眠り始め、ニコは頭の上で……寝てるのか？　微動だにせず。

　暇だったのでブッ君で小説を読んでいると、朝六時を回る頃に一台目の魔導列車が到着した……と思ったら連結されているのか、全員分の魔導列車がホームに到着した。しばらくすると、扉が開いてみんなが降りてくる。

　俺がいるのを発見したのか年少組の嫁達は走ってきて俺に抱き着いてくる。

「みんなお帰り。楽しかったかい？」

　お帰りを言ってどうだったか話を聞くと、みんな楽しかったと言っていたが一つだけ、同じ不満をこぼしていた。美味しいご飯が少なかった……と。

　シルキーとブラウニーの食事に慣れてしまったら、他のご飯は美味しく感じられないのかもしれないな。そのシルキーとブラウニーたちに、指導を受けている妻たちの方が、料理が上手い可能性が高いから。

　みんな楽しそうに、土産話を話そうとするので、朝食を食べてからにしようと提案し、食堂へ向かい、朝食を食べた後にみんなの土産話を、昼食が始まる頃まで聞いていた。

　昼食をはさんでからは、俺がみんなにこの二週間やってきた事を報告する。スキルリンクとバーストについてだけどな。

　そうすると妻たちは、練習を始めようとしたので、今日はストレッチや軽い運動にして明日から特訓しようとなんとか言いくるめた。