ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第728話 鼬の最後っ屁

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 アリスが前に出て、次にシャルロットとメルフィがサポートに入って、攻撃を再開していた。シャルロットは、あまり自己主張もなく控えめなのだが、自分に出来る事をしっかり把握しており、縁の下の力持ちのようにみんなを支えてくれる存在だ。

 吹っ飛ばされたダメージを回復して前線にもどる。ダメージは回復しているのだが、体の動きがイマイチよくない。ここまでダメージをくらって、回復する事なんてなかったからな。精神的なダメージだろうか? そんな事を言ってる場合じゃない! 自分を叱咤して体を動かす。

「交代するよ。また何かあったら頼む。みんな、スキルに注意して攻撃していくぞ。魔法も弓も積極的に攻撃していこう。攻撃が増えれば、それに割く労力もバカにならないはずだ。もう少し、だ頑張るぞ!」

 今までは【浸透勁】でダメージを与えていたが、魔法や弓でも多少でもダメージを与えられると判断して、余力を残すよりは全力で倒し切るのがいいと判断したのだ。魔法は、火や風といった形のない魔法ではなく、石や氷といった質量のある魔法を中心に攻撃している。

 魔法や矢は上半身の前面を中心に使ってもらい、素手による攻撃は背中や足元を中心の攻撃になっている。堕天使の全周囲へのスキルがあれから来ていないが、違うスキルが普通に使われており、タンクの負担が大きくなっている。特にスキルを使われると、踏ん張りきれずに毎回とばされてしまうのだ。

 壁にただ単に吹き飛ばされると、壁にぶつかりダメージを受けてしまうので、風魔法で圧縮した空気を緩衝材にする【エアクッション】を使ってダメージを軽減している。一番厄介なのは【フォートレス】を突破して、ダメージを与えてくることだ。

 タンクには負担をかけるが、頑張ってもらいたいところだ。本当なら全部俺が引き受けたいけど、吹っ飛ばされてしまう現状ではどうにもできない。一番は倒してしまう事だ!

「タンク陣、前衛を任せた! 俺は攻撃にまわるから防御を頼む!」

 俺は、盾をしまい両手で持つ大型の柄の長い槌を取り出して、攻撃のタイミングを計る。タンク陣がスキルをくらって壁際に飛ばされるのを見て、奥歯をかみしめる。スキルリンクで強引にダメージを与えていく予定なので、相手のスキル終わりに打ち込むのがベストだろう。すまんが耐えてくれ!

 堕天使がスキルの発動体勢に入った……俺は神歩で顔を目指す。俺が堕天使の顔に近付くが、堕天使はスキル終わりで硬直をしている。

【クラッシュ】【ダブルクラッシュ】【トリプルクラッシュ】

 同じタイプの叩きつける攻撃で、下級⇒中級⇒上級の6連たたきつけ攻撃を行う。【クラッシュ】系は、上段から下段に限らず、右から左、左から右へと、ある一定方向へ攻撃するスキルだ。今回は上段から振り下ろす形でスキルリンクを使っている。

 堕天使の頭が首を潰してめり込むくらい全力で行った。

 堕天使の頭が半壊していた。普段ならここで気を緩めるのだが、あの状態になってもドロップ品に変わっていないのだ。

「あの状態で生きてるのか? 近付くにもちょっと不気味だし、どうしたもんだかな?」

 堕天使から距離をとってみんなに問いかけるが、今までにこんなことが無かったためみんな判断に困っている。といっても、この状態のままいるわけにはいかない。何かしら判断をしないとな。

「今のうちに回復しておこう。魔力の方がそろそろやばいだろ? ポーションが足りなかったら出すから言ってくれ。でも、全員で一気に回復に入るなよ? ヒーラーと魔法組から回復開始」

 ポーションが足りなそうだったので、俺の収納の腕輪に入れておいた各種回復ポーションを地面に置き、その中の1本を飲み込んで堕天使の様子をうかがう。あの状態になってから、3分位は経過しているはずだが動きがない。

 あと一押しで死ぬのか、それとも死んだふり見たいな状況なのだろうか? 判断を間違ったらやばいと、俺の直感がそう告げている……だけど正解が分からん!

 魔力があれば【岩砲】を使ってみてもいいか? あれなら離れた所にいる敵に、与えられるダメージならかなりのものだからな。

「みんな、警戒しながら回復しててね。後、リリー! 俺が今から魔法の準備に入るから護衛よろしく」

 杖を取り出して、回復した大量の魔力を、圧縮して岩の砲弾を作成する。打ち出すための魔力も圧縮していく。大量の魔力を消費しながら魔法の準備をする。まわりをよく見ながら、みんなが回復するのを待っている。

 圧縮が終わるころには、全員が回復し終わっていた。

「魔法の準備もできたから、発動するぞ! 一応、一ヵ所に固まって前衛にタンクを置いて防御態勢。ヒーラーと魔法組は、汎用結界魔法の準備を。高威力の攻撃があっても、枚数を重ねればそれだけでダメージを軽減できるからな。行くぞ!【岩砲】」

 人間の頭位のサイズで、100kg近くある圧縮された岩の砲弾を、音速の3倍ほどで発射する。この魔法に使った魔力は、俺の総魔力の7割ほど一気に消費している。序盤で撃った【岩砲】は、4割ほどの魔力で打ち出したものだ。

 岩の砲弾が大きい堕天使の胸に突き刺さる。岩とはいえ圧縮され重い砲弾は鎧を撃ち抜き体にめり込んだ。

「ん? ダメージが蓄積されると、鎧の防御力も落ちるのか? 鎧を含めて堕天使という存在か? リビングアーマーに近いのかもしれないな」

 攻撃の結果を冷静に見極めていたが、仰向けに倒れた以外に大きな変化は見られない。でも、まだドロップ品にはなってない。嫌な感じはまだなくなっていない。という事は死んでいないってことだ。どうするのがいい? 魔力を消費したので考えながら、魔力を回復するためにポーションを飲み干す。

 動かないのは愚策、分かってはいるのだがどう動いていいか分からない。ただこのまま放っておくわけにはいかない! 攻撃する方がいいか……大槌に持ち替えて、神歩を使い胸に突き刺さった砲弾にめがけて

【メテオインパクト】

 強引に胸に砲弾を押し込む。そうすると、堕天使の体が光りだした。ベヒモスの雷を彷彿とさせる嫌な感じがする。

 スキルを使った硬直がここまで長いと感じたのは初めてだった。

 やっと動くようになった! 大槌を放り出して、盾を取り出しながらみんなの所に戻るが、神歩を使っても間に合わなかった。全身を丸めて全力で【フォートレス】を使い、能力向上に魔力も注ぎ込んで自身を強化した。
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