ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
729 / 2,518

第729話 危機一髪

しおりを挟む
 俺が防御態勢に入る頃には、他のメンバーも防御態勢に入っていた。後で怒られるだろうな。ステータスを向上させて、それでも少し余っている魔力を使わないのはもったいない。それなら、堕天使の真似をして魔力障壁を張るか? 確か、魔力を放出して、薄い膜状に圧縮する感じだったな。

 自分の身の危険を感じた事により、思考が加速していた。今ならどんな難しい魔法も制御できそうだ。

 全部で魔力を9割近く消費した頃に、堕天使の体から発せられる光が一段と強くなった。次の瞬間、目を焼くほどの閃光と同時に、ありえないほどの衝撃が空間を襲った。

 俺はてっきり、自爆による爆発系の何かかと思っていたのに、魔法ではなく圧縮された魔力を純粋な破壊力として解き放った感じだった。

 その解き放たれた破壊力は、凄まじいの一言しか出てこなかった。四角い部屋が、丸くなっていたのだ。削られたダンジョンの壁や床がどうなったか分からないが、何とかしのぐことができた。

 全員で防御態勢に入っていた妻たちは、特に問題なく無傷でしのいだように見える。7人で張っていた結界が全部突破された事にはビックリしたが、タンク陣の【フォートレス】によって防いだようだ。

 後で聞いて知ったのだが、タンク陣はあの衝撃で体の芯にダメージをくらったようで、ヒーラーが慌てて回復したそうだ。【フォートレス】って攻撃を防ぐけど、衝撃なんかはダイレクトに体に伝わるんだよな。

 俺がなんで後で知ったかといえば、簡単な話だ。全力で防御したが、俺の防御力を突破して体にダメージが入り、天井に吹き飛ばされそこで体を強打。追い打ちをかけるように、そのまま床に落ちて体を強打。天井に吹き飛ばされてぶつかった時点で、俺の意識は途絶えていたのだ。

 床に落ちた時は無防備であったため、体にダメージがかなり入ってしまったようだ。骨折こそなかったものの、全身打撲で回復してもらわなかったら、今頃全身筋肉痛みたいな感じでもがいていただろうな。

 妻たちは複数で何とかしのいだのに、単独で防げるわけがなかった。そして、目を覚ました後、俺の体の様子を確認してから、長い説教を妻たちにされてしまった。無茶をしたのは悪かったが、あそこで追撃していなかったら、全員が瀕死に近いダメージを負った可能性があったからな。

 俺はあの攻撃は、自爆で間違いないと思うが、本来の攻撃力には届いていないと思っている。魔力を圧縮したことによって、破壊力を増大させた自爆攻撃と考えると、自分の体が死ぬ事によって、魔力の制御が自分から離れて、暴発したと考えているからだ。

 あの堕天使が本当に魔力が無限にあるのだとして、本当に自爆をするのであれば、体が許す限り、制御が許す限り、限界まで魔力を圧縮し続けたはずなのだ。それを俺の【岩砲】と【メテオインパクト】で体を先に壊したため、あの威力で助かったと考えている。

 俺がこんなことをのんびりと考えているのには理由がある。

 俺が無茶をしてボロボロになったのを見た妻たちが、説教をした後に全員が大泣きをしてしまい、今はみんな疲れて寝ているためだ。

 馬車に残っていたブラウニーに、通路を塞ぐような形でコンテナを出してもらい、野営の準備をしてもらった。そして1人ずつお姫様抱っこをしてベッドに運んで、俺はベッドの横でみんなの様子を見ながら、あの爆発について考察していたのだ。

 一番体がボロボロで本当は休みたかったのだが、妻たちに泣かれて寝てしまったのを見てしまうと、俺も一緒になって寝るわけにはいかないと思い、必死に起きている状態だ。目を覚ますために濃いめに入れてもらった、ハーブティーと一緒に出てきた王蜜を使ったお菓子を楽しむ事は許してくれ。

 2時間ほど経った頃に、みんなが目を覚まし始めた。起きたみんなに「おはよう」と一言いうと、安心したようでいつも通りの対応に戻ってくれた。みんなが起きた所で、俺の意識が限界に達して、みんなと交換するようにベッドにもぐりこみ眠りについた。

 どのくらい経ったか分からないが、気付くと体に何かがのしかかっているのが分かり目が覚めた。俺の腹の上でとどまっている事を考えると、スライムか狐の誰かだろうと思い手を伸ばして掴む……あれ? いつもと違う感触だと思い、視線を腹の上に向けると、そこにはダマがいた。

 何でここにいるかと思ったが、心配で様子を見てたら眠くなったので一緒に寝てしまった、との事だった。何をやってるんだか。ちなみにスライムも心配していたようで、俺の頭の近くで団子になってプルプルしてた。

 みんなをなでてから、起き上がり部屋を移動する。隣は食堂兼会議室になっていたようで、妻たちはみんなそこにいた。どうやら、何かを話し合っていたようだ。

 俺は、話し合っていた内容を聞いて納得した。確かに俺も話題にしようと思っていた事だ。

 このダンジョンの攻略をするか、それともここで諦めて帰るのか、の話し合いをしていたそうだ。俺はそのまま、みんなの意見に耳を傾けて、どんなことを考えているのかを把握していく。

 全体的にこれ以上、俺が傷付く様子を見たくないとの事だ。だが、そのまま引き返すか進むかは、みんなで悩んでいる状態だ。堕天使もしっかり対策をすれば、倒せない事はないのだ。だから安易に戻るという選択肢が出てこず、どうやって進むかや撤退の基準を話し合っているような状態だ。

 俺は膠着状態の話し合いの助けとなればいいと思い、みんなが寝ている時に考察した、大きい堕天使の能力と最後の爆発について話した。

 大きな堕天使に対して対策が立てられるのであれば、もう1戦してみてから決めるのがいいのでは? という流れになった。後は、最後の爆発に対してはどうするべきかという話になった。

 その中でもちょっとおもしろかったのは、腹に打ち込んだ【岩砲】を叩きこむ前に、叩き込む人間にチェインをつけておいて、叩き込んだ後すぐに引っ張ってみてはどうか? という意見には笑ってしまった。

 話し合いの結果、次の大きな堕天使への止めは、接近してスキルで叩き込むのではなく、遠距離から打ち込む事になった。手順は、俺が【岩砲】を撃った後に同じ場所に、ユニゾンマジックでハンマー代わりになる岩石を打ち込む事になった。

 どれくらいの威力が必要なのか分からないので、魔法組の4人で協力して行う事になった。1人が岩石を圧縮して【岩砲】の弾とは違い円柱状の弾を作り、1人が風除けの魔法と弾の回転を行い、残りの2人で魔力を圧縮して打ち出す形になった。

 全員の魔力を全部消費するわけにはいかないので、7割程までの消費でおさめることになった。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...