ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1044話 物作りって大変

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「ふむ、私は洗濯をしたことが無いので、よくわからないのですが、近くの主婦でも呼んできて話を聞いてみますか?」

「まだ完成では無いので、あまり部外者には見せたくないんだよね」

「では、この商会の店舗で働いているスタッフで、家の仕事と両立している者を仕事として呼ぶのはいかがですか? 仕事の一環として、運用試験などをしてもらえれば意見ももらえると思います」

「いい提案かもしれないけど、それで店の方は大丈夫なのか?」

「何の問題もありませんね。現状でも利益が右肩上がりで上がっているので、特に激務になりやすい店舗内販売スタッフは、他の店舗に比べて5割程多く配置しています。

 以前にシュウ様がおっしゃっていた、出来る限り社員に利益を還元している現状でこれですので、問題ありません。ちなみに、シュウ様への配当金も増えてますよ」

 俺の商会は、恐ろしい売り上げをたたき出しているようだ。アコギな商売をしていないか心配になってしまうレベルである。

「何か疑問をお持ちの様ですが、ディストピアの食材は高く売れます。その食材は、シュウ様の商会で独占していますので、薄利多売でもかなりの利益が出るんですよ。

 それに、季節に関係なく食材が手に入るのは世界広しと言えど、ここだけですからね。他にもディストピアのドワーフの商品も、実質この商会でしか手に入りませんからね」

 その他にも、飲食店や治療院の利益がすごい事になっているそうだ。特に治療院は、安価で安全安心の地域に密着した経営であるため、街の人間に愛されているとか。

 中には領主お抱えのぼったくり治療院が経営困難になり、俺の商会付属の治療院の人間を拉致して働かそうとしていた所もあり、1度はさらわれてしまったが、スカルズのメンバーが急行して領主館を制圧してくれて事無きを得たそうだ。

 その関係で、俺の管理する街が増えていたらしい。あれ? 俺そんな報告受けてたっけ? もう本当にグリエスとガリアに全部任せてもいいんじゃないかと思うんだ。後でグリエルのとこに行ってこよ。

 ちなみに治療院に併設されている孤児院も人数が増えているが、治療院の利益から余裕をもって賄いきれているので、商会からの援助はしていないそうだ。母子家庭のお母さんたちも、子どもたちにひもじい思いをさせなくてすむと、毎日感謝の祈りをしているらしい。

 みんなのためになっているから、深く考えるのは止めよう! 優秀な部下に全部任せるダメな上司でいいのだ。何かあったら金と責任を取るから、頑張ってもらいたいものだ!

 雑談をしている間に、主婦スタッフを3人程連れて来てくれた。

「シュウ様、スタッフをお連れしました」

 そう言って、秘書のような事をしてくれている人が、3人の肝っ玉母ちゃんのような女性を連れて来てくれた。

「えっと、貴方様が、この商会の会長のシュウ様でございますか?」

 3人の肝っ玉母ちゃんの内の1人が、恐る恐る俺にそう話しかけてきた。

「そうだね。俺自身は何もできないから、全部ゼニスに任せているけどね。俺はゼニスみたいに怖くないから、もっと砕けた喋り方でいいよ。ゼニス、失礼な態度をとったからって後で変なことするなよ?」

「シュウ様、私をなんだと思っているのですか? これでも、部下たちには慕われているんですよ!」

 俺たちのバカ話のようなやり取りを見て、こわばっていた顔が少し和らいだようだ。

「あたしゃ、何のとりえのない嫁ぐために村から出てきて、たいした教養も無いのでお許しくだせえ」

 少し砕けた喋り方になったと思ったら、何となく田舎臭い喋り方になった。おそらく自動翻訳スキルが無駄に仕事をしているせいだと思う。たまにこういう事をやらかすからスキルって面白い。

「気にしないから大丈夫だよ。さすがに暴言を吐かれたらどうにもならないけど、普通に話す分には何の問題も無いよ」

「ありがとうごぜえますだ。して、あたしゃたちに何の御用事で?」

 そうすると、ゼニスが説明をしてくれた。俺が説明すると分かり辛い事が多いらしく、ゼニスが把握した範囲の内容で3人の肝っ玉母ちゃんスタッフに説明してくれた。

 しばらく3人で何やかんや話しながら洗濯機をいじっている。それで言われた通りに、洗濯物と水を入れて洗濯機を回し始めた。

「ゼニスさん、ただグルグル回しているだけでいいのですかい?」

「私もシュウ様から説明をしてもらっただけで、実際に使っている所は初めて見るんですよ。なので、回しているだけで綺麗になるかは分からないのです。御三方にはそれを実体験してもらうために来てもらっているんですよ」

 そうなんですか? と言って、半信半疑。いや、二信八疑と言った所だろうか? 信用しているよ言うよりは、期待していると言った方がいいかもしれないな。

「ただ回すだけなら、子どもたちにもできそうですね。これで本当に綺麗になるのなら、便利ですね」

 そう言いながら10分ほどグルグル回してから取り出してしぼってみると、

「こりゃぁたまげた! 本当に綺麗になってるで。誰にでも回せるって所がええですね」

「これの良さを分かってもらえたのかな? 洗濯板でゴシゴシしたりするのは腰にも大変だから、便利な物をと思って作ってみたのですが、高評価で嬉しいですね。でも、脱水する方法が確立できなくて悩んでるんだけどね」

「脱水ですかえ? それでしたら、挟んでしぼるタイプの物がありますよ?」

 教えてもらったのは、歴史の授業か何かで写真で見た事があった洗濯機の前か横についていた、ローラーで挟むタイプのあれだった。

 どうやら、この脱水装置は圧延の技術を応用して作られた、ドワーフたちの発明らしい。でも生地が傷みやすいので、頑丈な生地や古い洋服に使っている人がほとんどで、新しい服には使わないようだ。

 それにしても、挟んでしぼる奴ってそんなに生地が傷むんだっけ? って思ったので、売られている手動式圧延脱水機を見せてもらった。それで生地が傷むという事がよくわかった。

 ドワーフたちが作ったのは、何故か絞る時に使う棒が細かく波打っていたのだ。何でこんな構造なのかは分からないが、学校で床を掃除するモップの水をしぼる時に使った覚えがある感じの絞る棒だった。

 基本的には、洗濯機は高評価だった。脱水機能が無い事を悔やんでいたら、幅をとらないのであれば、別に違うものを準備すれば問題ないという感じだった。

 なので俺たちは、手動式圧力脱水機、圧延だと伸ばしていないので変じゃないか? と言う話になり、圧力脱水機と呼ぶ事にした。硬いけどある程度弾力のある素材を探しに行く事にした。
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