ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1136話 面倒な奴

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「何を言っている? 綺麗にした店内、値段もそれなり、貴族を狙った食事処であろう? そしてなかなか見た目のいい女性がいる。ならばうりをしてしるのだろ? だから買ってやると言っているのだ!」

 どうやら貴族がバカな事を言っているようだ。

 このおバカさんは、ゴーストタウンに入る際の説明を受けていないのだろうか?

 あっ! 食事をしていた1人の客が外に向かって走っていった。衛兵を呼びに言った感じだ。ここはしゃしゃり出て事を収める必要はないか? でも、ウェイトレスさんが怖い思いをするよな……しゃーない。

 マップ先生の力を借りて、おバカ貴族とその護衛のレベルを確認する。一番上が35!? 弱すぎじゃね? ちょっとだけ強い兵士騎士っていう感じだ。フレデリクで言えば、小隊長レベルだろうか?

 だけどさ、ゴーストタウンでは、一兵卒でもそのレベルはあるんだよね。むしろ弱い位だ。

「ダマ、さすがにあれは見過ごせないから、行くよ」

『一応主殿の護衛としては、そういうのはやめていただきたいですが……無理ですよね。大丈夫だと思いますが、いざと言う時は噛み殺します』

「そうなった時は殺してもいいけど、外でよろしく。店内だと迷惑がかかるからな」

 そう言って席を立つ。

 それに気付いた店の店主が、戻ってください! と言ったジェスチャーをしている。俺が巻き込まれないように配慮しているようだが、一応領主としてこの状態は見過ごせないからな。

「そこの貴族。ゴーストタウンに入る際の説明は聞いていなかったのか? この街では、そういうのは一切禁止だ。したいのであれば花街へ行って交渉しろ!」

「ん? なんだ貴様は?」

「俺の事などどうでもいいだろ、ゴーストタウンのルールは守れ」

「生意気な奴だな。説明は受けたに決まっている。面倒だが入るためには聞かねばならなかったからな。だがあれは、一般人に適応される物であって、特別である私には関係ないものだろ? ならば私が自由に振る舞おうと関係ないだろう?」

 あ~分かってたけど、ダメなタイプの貴族だな。選民思想に固まった貴族なのだろう。

「あ~ゴーストタウンに合わないタイプの人間だったか……1つだけ忠告しておく、今すぐこの場を立ち去ってゴーストタウンから出ろ。そしてこの街に二度と来るな」

 後ろで店主がわちゃわちゃ言っているが、完全に無視だ。

「貴様! このお方に向かって暴言を吐くとは何事だ!」

 おっと、護衛の人がいきなり剣に手をかけて切りかかって来た。

 が、その護衛の姿が一瞬で消え、扉が壊れる音がした。全員が驚きそちらを向くと、喉を噛み切られ血が溢れ痙攣している護衛の姿が見えた。それをやったダマはすでに足元にいる。

「何をした? 貴族である私の護衛を殺すとは、覚悟はできているのだろうな?」

「何か勘違いをしている様だから言っておくが、先に剣を向けてきたのはそちらが先だぞ? ここを他の街と一緒にするなよ」

「貴様はバカなのか? 貴族が貴族らしく振る舞うのに、他の街だとかは関係ないのだよ。貴族は貴族であるだけで、特別な存在なのだ。それは私たちに許された権利である! お前は死刑に値する。そこのよくわからん毛玉は、面白そうだから私が飼ってやろう」

 何か話しているだけで頭が痛くなる奴だな。あえて強い口調を使って威圧をかけているのに、こいつらは誰一人としてそれを認識できていない。

 俺の姿が見えていない外の方がざわざわしているくらいだ。まぁ店の前に死にかけの人がいて、その店から俺の威圧が届いていれば、戦闘に携わっている人間なら、何かが起きてると緊張するよな。

 しかもゴーストタウンは他の街に比べて、治安がいい。それなのにこれだけの事をやっている相手は、何を考えているのか? と思っている人が多いのではないだろうか?

「ゴーストタウンが中立地域にある都市で、大国の干渉も受けない事は理解しているんだよな? それなのに自分が特別だとでもいうのか?」

「ふん、当たり前だろ。所詮中立地域は方便なのだからな。大国に住めない人間が、金を払って不干渉をお願いしているんだ。我々大国が動けばこのな都市などどうという事は無いのだぞ」

 ん? そんな事聞いたことないぞ? それにしても都合のいい頭だな? いや……思い込みと言うよりは、そういう風に教育された人間って事か?

 これ以上話してもしょうがないな。そろそろ、衛兵が来ても……あ~足音がしているな。

 そう思っていると、

「ゴーストタウンの治安維持部隊である。この場にいる人間は指示に従う様に!」

 そう言って衛兵だと思っていた人間が入って来た。というか、この街を護るって意味で、治安維持部隊っていう名前なんだな。

「ちょうどいい所に来た。こいつが私の護衛を殺して私に無礼を働いた。拘束してくれ。そして身柄はこちらに引き渡していただこう」

「あなたの言い分は分かりました。次にそちらの方の……」

「お前! こちらのかたは、王国の貴族、伯爵だぞ! それなのに言い分は分かっただと? こちらの指示に従って、その者を捕らえよ!」

 貴族の御付きが何やら騒ぎ立てている。

「なぜですか? 私たちはあなたの部下ではありません。そしてここは中立地域です。王国の地位など何の関係もありません。ゴーストタウンに入る際に何度も説明されていたはずです。あなた方は黙っていてください。それでそちらの……えっ!? シュウ様ではないですか? なぜこんな所に?」

「あってるけど……こんな所っていうのは失礼だろ。ここの食事は美味いしぞ」

「はっ! 失礼いたしました! 店主殿、店に対する暴言、失礼いたしました!」

 すぐに店主に振り向き頭を下げた。

「それで、シュウ様。ここで何があったのですか?」

「あの貴族が、ゴーストタウンのルールを無視して、ここのウェイトレスに売りをしろと強要していたから注意したら、そいつの護衛が剣を抜いて切りかかってきて、ダマが外に連れ出して噛み殺した。で、色々話している時に君たちが来たって感じかな?」

「そうでしたか。店主、ウェイトレスの方、今の話に間違いはありませんか?」

「えっと……細かい内容の説明は、後で必要だと思いますが、概ね間違いありません」

「概ねですか?」

「はい。私には護衛の人が突然消えて、外で喉が潰れていたので、ダマさんがやったのかは分からないのです」

「そういう事でしたか。お前たち、そこの伯爵とやらに手錠をかけて連れていけ。護衛の方は……こちらの指示に従っていただこう」

「なっ! この平民共のいう事を信じるのか! この街の人間は! お前たち、こいつらを殺せ!」

 貴族は癇癪を起したのか、護衛の人間に殺すように命令した。そしてお前らは武器を抜くのか?

「店に迷惑がかからないようにしてやって」

 そう言うと治安維持部隊の面々が、貴族の護衛たちを捕まえて外へ引きずっていく。俺と話していた、治安維持部隊の人が、喚いている貴族の顔面を鷲掴みにして店の外に連れて行った。

「店主、迷惑かけたね。今日はもう営業は難しいでしょ? 扉の修理代と街の中にあんな奴を入れてしまったお詫びを置いてくから。今食事している人たちの分も払っておく。皆さん迷惑をおかけしました」

 金貨を30枚くらい積んで店を後にする。

 店の外では手錠をかけられた貴族と護衛たちが騒いでいる。

 こいつらはどうなるんだろうな? 未遂だったとはいえルールを破って……って俺に剣を向けたから、まず国には帰れんだろうな。まぁどうでもいいけど。

「治安維持部隊の人たち、後は任せるね。何かあったら連絡をくれ」

 俺がいなくても、大丈夫であったと思うがこういった事は、無くなっていないのだろうか? ちょっと領主館にいってみるか。
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