ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1373話 思ったより……

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「まずレバーですが……」

 切り始める前にレバーについて簡単に説明してくれた。

 先の方、パッと見た感じツルツルで何処にもつながっていないように綺麗な方が、筋がなくて食べやすいのだとか。

 血管とかに繋がっている方は、筋が多かったり血管があったりするので、処理をしっかりしないと美味しくないようだ。まず柵取りをしていくそうだ。適切な大きさに切り分ける……という表現が正しいかな?

 何やら肝臓にはコブと呼ばれる肝臓なんだけどちょっとつき方の違う部分が、血管に繋がっている側にありそこをまず切り落とした。本来なら俺の拳くらいの大きさなのだが、この肝臓のコブは娘たちの顔の大きさより大きかった。

 次に肝臓本体に包丁を入れたのだが、筋の少ない肝臓の先とそうでない部分に切り分けた。大体、半分より気持ち血管側を切っている。

 そうすると血管側をひっくり返して見せてくれた。

 表というか今見ていた側は、ツルツルだったのでよく分からなかったのだが、裏返されて筋があるとかいう意味がよく分かった。見て分かるほどに何やら白い部位、筋が見えたのだ。

 血管のある部位は端に寄せられ、先の方をまな板の中心に持って来た。先ほどは先と血管側を切り離すように切り分けたが、今度は先ほどの切り口に直角に入るように包丁を入れた。切り分けた位置は、6:4で6の方が歩留まりが良いそうだ。

 歩留まりぶどまりとは、簡単に言えば可食部位のことである。詳しく言うと、食品や工業製品など生産全般において、原料の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた製品量の比率のことである。

 魔物と掛け合わせた牛は、牛がそのまま大きくなっていて体の構造や内臓のつくりなどは変わっていないらしい。あんな大きな体で構造や内臓の作りが一緒というのはよく分からないが、魔物とは常識外れなので考えるだけ無駄だろう。

 そのまま大きくなっているため、筋の処理などはしやすくなっていると説明してくれた。歩留まりは普通の牛の場合より良くなっているらしい。

 そもそもこの世界は飽食ではない。食べれる部位は何でも食べる、と言うのがスタンダードだ。筋や骨等食べれない部位以外はすべて食べるのである。血管だって珍味として食べられているくらいだ。どう料理しているか知らないが、コリコリしてて美味いらしい。

 次に肝臓の表面にある薄皮をとっていく作業。先ほどまで使っていた包丁では大きすぎるので、半分ほどの長さの包丁を取り出した。まずはきっかけを作ってその部分に包丁をあてる。気持ち薄皮側に刃を向けて剥いでいく。

 面白いように綺麗に薄皮が剥げていく。娘たちはその様子に「おお~」と感嘆の声を上げている。

 薄皮をしっかりとらないと、ついている部分を食べた時に歯に詰まってしまうんだとか。表の薄皮を剥いだ後は、裏返して薄皮をとっていく。

 つるんとした方が表とすると、裏側は凸凹している。筋や血管などが多い部分らしい。俺たちが普段食べている部位は、表側に近い血管や筋が全くない場所だ。残りはゴーストタウンの飲食店に卸されて、食べられているそうだ。

 食べにくかったり硬かったりするのだが、それでも栄養価が最も高い肝臓を安価で食べられると言って、ブラウニーたちから許可をもらった飲食店でだけ味わえる名品となっている。他にも、ディストピアの家畜エリアで捌かれた同じ部位も、ブラウニー監修の下ゴーストタウンに出荷している。

 ディストピアは、食べやすい良い部分を基本的に食しているようだ。近くにゴーストタウンがなければ、飲食店みたいに捨てられていた可能性もあるかもな。

 レバーを切っていると、別の場所から来たブラウニーが何やら持って来た。塩とごま油だ。これはあれですね、試食! もちろんうまかった。レバ刺しってどうしてこんなに美味いんだろうな。日本では問題があるとはいえ、しっかりと管理した場所なら食べれるようにしてあげればいいのに。

 いわゆる美味しい部分だけ柵取りして、食べにくい部分は出荷用の収納アイテムの中へ。

 何人もブラウニーが集まり、柵取りが進められていく。大きいので手分けをしてやっているみたいだな。

 次に準備されていたのは、見ただけでは何か全く分からなかった。内臓系にも見えるが、筋肉質にも見える気がする。この部位は何だろうか?

 この不明な部位は、サガリという部位だそうだ。日本の焼肉店でよく聞いたことのある、人気の高い部位の1つだとか。

 一緒にハラミも準備されていた。ハラミはホルモンの一種で、具体的には牛の横隔膜の背中側、胸とお腹の間にあり、肺を動かすための筋肉を指しすそうだ。

 人間に当てはめると腹式呼吸をしたときに大きく動く部分で、しゃっくりの時に痙攣する部分だとか。ハラミは牛だけでなく、豚や鶏といった哺乳類だけが持つ器官。牛の体のほぼ真ん中に位置しているハラミは、筋肉ではあるものの肺に付いている器官であることからホルモンに分類されるのだとか。

 とにかくでかい。サガリもハラミも内臓を吊り下げる筋肉なので、同時に処理していくのだとか。とはいえ、ハラミは大きいだけで簡単に処理できるのだとか。

 ピロピロしている、下についている皮を削いでから表面についている皮を削いでいく。太い部分の方に簡単に外れる部分があり、そこを取り外して柵取りしていく。残った皮と脂を処理して終わり。

 次にサガリだが、心臓の関係でコブが片側に付いているのだとか……どういうこと? 分からないのでスルーした。そのコブを外し、ハラミと同じように余分な皮を削いでいく。

 あれ? ハラミやサガリの余分な皮は、出荷用の収納では無く違う収納に入れられている。どうやらこの皮は煮込みなどに入れると美味しいので、俺の家専用の収納に入れたのだとか。なるほど!

 サガリの上から見ると、3分の1あたりの場所に白い部分が、どうやら白い部分は筋のようだ。筋も美味しいらしく刃先を滑らせるようにして、筋にそって肉を切り分けていた。

 小さい部分の方に筋がついている。肉を残して筋を削いでいく。余分な脂と食べれない筋はドンドン削ぎ取られていく。

 この脂はディストピアの一般家庭で使われるのだとか。ブラウニーたちが行っている飲食店で配布している。1日分毎に別けられており、家庭で料理に使われるのだとか。美味しいものはディストピアで消費だな!

 最初に外したコブも同じように処理していった。

 美味しいと言っていたサガリの間に挟まっていた筋は、そのままだとさすがに硬いので、ジャガードと呼ばれる剣山みたいな肉の筋を切る道具を使って食べやすく加工していた。これはお昼で出てくるそうなので、食べてみてくださいとの事だ。

 そうして内臓にまみれた午前中が終わる。娘たちはよく平気だったな。まだ何が何か分かっていないとか?

 こうして、お昼の準備がされている場所へと移動を開始する。
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