ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,709 / 2,518

第1709話 魔の森に到着

しおりを挟む
「うっし、到着!」

「「「とうちゃくー」」」

 ドッペルに憑依した娘たちは俺の真似をしている。その様子を依頼を受けた冒険者たちが眺めており、微笑ましそうに見ている。

 俺たちが今いるところは、魔の森との境目だ。ここから、残りの80%くらいの距離を進んだところに俺たちの目的地がある。でもその前に、しなきゃいけない事があるんだよね。

「少し休憩したら、移動時に話しておいたように、周辺の魔物を間引く部隊と森を切り開く部隊に分かれて作業を開始する。木は切り倒したらそのまま放置で問題ないが、近くに人がいる際にはしっかり声を掛け合ってから切り倒すように!」

 正式にはまだ敵国から切り取っていない場所に街を作ると面倒があるとグリエルに言われたため、俺たちは、魔の森を切り開いて簡易的な野営地を作り、そこを拠点に街づくりできるように整えるつもりだ。

 とはいっても、今はまだ整えるだけで街を作る気はないのだけどね。俺たちの本当の目的は、この魔の森を抜けた先から逃げ出そうとしている人たちの保護だからな。いくら戦力があっても、数が多すぎれば対応できなくなるので、森の中にある程度の道と拠点を作るつもりなのだ。

 拠点を中心に探索するグループと、保護した人たちを馬車などを使い、拠点を移動させるグループに分かれて行動する予定である。

 そのための足掛かりとなる1つ目の拠点だ。

 切り倒した木を集めるのは、妻たちの仕事だ。木の回収と同時に残った切り株を引っこ抜く事もお願いしている。土魔法を使って掘り返してもらうだけだけどな。

 俺たちが憑依している事から分かると思うが、既に午後である。今日中に仮拠点の範囲は整地したいと考えているので、俺も全力で手伝うことにしている。娘たちは、ミリーや従魔たちに任せて自由にさせている。メグちゃんが付いているから、何があっても問題ないだろう。空の守りも完璧だしな。

 俺は久々に使う斧を取り出した。何の変哲の無いただの大斧だ。柄の長さは俺の身長程あり、刃の部分は一番広い所で80センチメートル近くもある。素材がアダマンタイトという、非常識な物で出来ている以外は普通である。

 総アダマンタイトなので、かなり重い。鉄で作ってもこの大きさならかなりの重量になるはずだが、鉄より重いアダマンタイト製だからな。ステータス補正が無ければ絶対に持ち上がらん。

 とにかく固く頑丈な素材で作った斧は、樵として使っても優秀なのだ。

 近くに人がいないことを確認して、木から2メートル弱離れた位置に立つ。重量がある長物を使う時には普通しないのだが、柄の先を野球やらゴルフのようにもって、フルスイングで根元近くに振り込んだ。

 直系1メートルも無い木なので1発で切り倒せるかとも思ったのだが、半分過ぎた所で止まってしまった。木の繊維や斧の厚みによって摩擦などが起こり、威力が減算されてしまったのだろう。それでも半分まで刃を埋めたのだから十分な威力があったと思う。

 力の強さを考えれば、そののまま切り倒せてもおかしくなかったと思うんだけどな。何かあるのかな? 考えても分からない事は諦めて、木を切る事に集中しよう。

 先ほどとは逆から斧を叩きつけ、計2発で木を切り倒す。

 何本か切り倒した後に気付いたのだが、妻たちが剣で木を切り倒していた気がするんだよな。しかも一振りでさ。剣よりは斧の方が切る事に向いているはずなのに……

 シュウというか、この世界の人間は知らないのだが、シュウの妻たちが余りにも簡単に木を伐りすぎたため、創造神が緩やかにこの世界の法則を変えていたのだ。木を切る際に必要なスキルを準備して、スキルを持っていない者や、木を切る道具を使わない者は、切り倒しにくくなる、というものだ。

 その状態で2発で切り倒したシュウは、正直言うと化け物といってもおかしくないレベルだ。

 ディストピアの冒険者たちは、経験上木を切り倒す時には斧の方が楽だということを知っている。しかも、依頼で木を切る事も良くしているので、スキルもしっかりと持っているのだ。

 そんな彼らもかなり速い速度で切り倒しているのだが、それを身体能力とアダマンタイト製の大斧で超えているシュウは、冒険者たちから尊敬の眼差しを受けていた。ドッペルなのでこの程度で済んでいるが、生身であればもっと深く切り込みを入れられただろう。

 俺は1人3役で、木を伐り、回収して、切り株も掘り起こしている。それでも4人チームの冒険者たちより広い面積を切り開いていた。

 19時を回る前には、何とか1500人が寝泊まりできるであろう面積を切り開く事に成功した。後半は、魔物の間引き組も木を切り倒すチームに合流しての結果である。

 妻たちには、森との境目に5メートル程の壁を建てもらっている。木の上から侵入してこれるのだが、そこまで頭のまわる魔物であれば、まず近付いては来ないだろう。

 食事の準備を始めていてくれた、ブラウニーたちが提供してくれた夕食はカレーだった。ディストピアでもゴーストタウンでも、人気の高いメニューだ。トッピングには、唐揚げ、トンカツ、チキンカツ、メンチカツ、チーズ、たまご、そのほかにも揚げ野菜などが大量に準備されていた。

 大半が揚げ物だったな。良く動いた体に必要なカロリー補給だろう。

 でも、俺たちはドッペルなので野営地では食事を食べずに、家に戻ってきている。俺や妻たちだけなら、ドッペルの体と生身で食べてもいいのだが、娘たちはまだ慣れていないので、摂食障害を起こす可能性があるとチビ神から忠告を受けたから、食事は戻ってきて食べる事にしている。

 チビ神にしては、素直に感謝できる情報だったな。

 帰る前にカレーの匂いがしていたので、娘たちも食べたがるだろうと思い、シルキーたちが夕食をカレーにしていた。さすシルである。

 いつもより遅い食事だが、その中でミーシャたちが今日の冒険の話をしてくれた。ミリーたちに捕捉されながらだが。

 従魔たちは、俺たちのドッペルを向こうで守ってくれている。あ、こちらの様子が見れるようにテレビを設置しろ! とうるさかったので、今ころこの食事風景を従魔たちは並んでみている事だろう。

 明日は、周辺探索組と建前の目的地へ向かう道を作りながら、次の拠点候補地を探す予定だ。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...