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第5章 新たな試練

第100話 第三王女直属特別隊集合

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「つまり、ボクたちはドワーフの国を探せば良いんですね?」
「あと、シャロンさんに剣の扱い方を教える……けれど、これはニーナさんの用に敵を倒す剣術ではなく、あくまで護身レベルであると」
「そういう事だ。すまないが、頼む」

 いつもの小部屋へ移動し、ニーナとジェーンへ次の任務を説明すると、特に問題なく二人は了承してくれた。

「今ジェーンも言ってくれた通りで、シャロンに教えるのは護身レベルで良いから、俺とニーナとジェーンの三人でローテーションを組んで教えよう」
「主様、交代制で宜しいのですか?」
「あぁ。ジェーンのおかげでニーナも剣を振るえるようになったし、たまには違う任務にもあたった方が良いだろ?」
「わかりました」
「それに、巨乳剣術を教える訳ではないから、俺でもシャロンに教えられるし」

 流石にシャロンを正規の騎士並に引き上げようと思うと、大きな胸が邪魔をしてニーナと同じ事になってしまうが、護身レベル――仕官学校の学生レベル程度なら、胸が邪魔になっても大丈夫だろう。

「あ、あの、ヘンリーさん。巨乳剣術って?」
「そ、そんな事言ったっけ? な、何かの聞き間違いじゃないかな? あははは……」
「そ、そうですか」
「よし。じゃあ、次の任務の説明を終えたし、今日は解散という事で」
「わ、わかりました。とりあえず、訓練は明日からで良いのでしょうか? 朝は司書の仕事があるので、お昼過ぎからですと空きますが」
「うん、それで。じゃあ、明日は先ず俺が教えるよ。資料庫へ迎えに行くから」

 しまった。そういえば、前にもニーナの前で巨乳剣術って言ってしまって、誤魔化したんだよな。
 一礼して部屋から出て行くシャロンを見ながら反省していると、ジェーンが不思議そうな表情を浮かべて口を開く。

「あの、主様。巨乳剣術とは?」
「……そ、そんな事より二人共。よく聞いてくれ。シャロンの前では言えなかったが、実はもう一つ大事な任務があるんだ」
「え? 主様。シャロンさんは仲間はずれなんですか?」
「そういう事ではなく、いろいろと事情があってさ……」

 シャロンが獣人である事を隠しつつ、事情があって、知りもしない獣人の村へ連れて行く約束をしてしまった事を告げる。

「えー、隊長さん。知らない場所へ連れて行く約束をしたんですかー?」
「う、面目ない」
「で、でも、主様の事ですから、何か止むに止まれぬ事情があったんですよね? きっとシャロンさんを助ける一心で」

 ジェーン……流石は空気が読める聖女だ。
 ユーリヤを抱っこしていなければ、俺がジェーンへ抱きつく所だ。

「とにかく、表向きはドワーフの国を探す。これはニーナに対応してもらおうと思う。この後紹介するが、マーガレットという女性と組んで行動して欲しい」
「そのマーガレットさんがドワーフの国の事をご存知なんですか?」
「いや、情報収集もこれからだ。マーガレットも何も知らないし、まだドワーフの国を探す事すら伝えていない。だが、マーガレットは遠くに居る相手へ言葉を伝える魔法が使えるんだ」
「つまり、何かあったらすぐに隊長さんに連絡出来るからって事ですね?」

 ニーナの問いに大きく頷くと、次はジェーンに顔を向ける。

「ジェーンはアタランテと組んで獣人の村を探して欲しい。とはいえ、マーガレットと同様に説明はこれからだが」
「畏まりました」
「どちらも重要な任務だ。どちらも先ずは情報収集からになる。俺も何か分かった事があれば、すぐに伝えるので、よろしく頼む」

 善は急げと、ニーナとジェーンを連れて王宮を出ると、人気のない路地へ。

「隊長さん。こんな所で何をするんですか?」
「あ、そうか。ニーナは初めてなのか。今からマーガレットとアタランテ……要は、普段王宮に来ていない第三王女直属特別隊を紹介するよ」
「はぁ。こんな場所で、ですか?」
「まぁ、見ててよ。……ワープ・ドア」
「何ですか? この突如現れた赤色のドアは?」

 目の前に現れた扉に困惑するニーナを連れ、皆で扉をくぐるとエリーの家の前へと出る。
 その直後、

「あ、貴方ーっ! 遅いわよーっ!」

 いきなりアタランテが抱きついてきた。
 そして、マーガレットが唇を尖らせる。

「もぉっ、お兄さん! 私たちの事を忘れてたでしょっ! 二人でずーっとここで待っていたんだからっ!」
「あ、あれ? でも、エリーの家に居たよね?」
「だって、お兄さんに続いてエリーちゃんも学校へ行って、お母さんも仕事に行くって言ったら、私たちだけが家に残っている訳にもいかないでしょ」

 あ、そっか。
 エリーのお母さんは錬金ギルドの職員なんだった。
 しかも、ルミの髪の毛を渡して、研究が捗るって息巻いていたし……これは二人に悪い事をしちゃったな。
 しかし、エリーは未だ帰ってきていないのか。

「貴方。半日もずっと待ちぼうけさせたんだから、何か買ってー。具体的には服とか」
「あー! お兄さん。じゃあ、私は鞄! 鞄が欲しいっ!」
「ちょっと、マーガレットはこの前沢山買ってもらったじゃない」
「まぁそれはそれで、これはこれって感じかな?」

 キャアキャアとアタランテとマーガレットがはしゃいでいると、

「あ、あの、隊長さん。紹介してもらう第三王女直属特別隊の方々って、このお二人ですか?」
「あぁ、そうだよ。猫耳の女性がアタランテで、もう一方が行動を共にしてもらうマーガレットだ」

 若干引きつった笑顔を浮かべるニーナが尋ねてきた。

「ちょ、ちょっと、お兄さん。どうして私の説明がそんなに適当なの? もう一方って……もっと何か言い様があると思うんだけど」
「貴方。私は猫じゃなくて、ライオンなの。ライオン!」
「……まぁ、そういう訳で、第三王女直属特別隊として皆よろしく頼むよ」

 とりあえず、昼食を食べておらず、お腹が空いたと主張する二人のために、適当な食事処へ場所を移す事にした。
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