悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

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第16話 食べるだけで魔力が増えるリンゴ?

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「ん……あ、身体が動く」
『魔力が回復したみたいね。念の為、もう少し休んでおいた方が良いわね』
「わかった。じゃあそうするわね。……ちなみに、今は何時くらいなの?」
『お昼を過ぎた所よ。寮では平日に昼食は出ないから……何か食べる物を探してきましょうか?』
「ううん、大丈夫。ありがとう」

 ユリアナの言う通り、もう少し眠り、夕方に再び目覚める。
 夕食には未だ早いので、セシルの様子を見に行く事に。

「あ、お姉ちゃん!」
「お待たせ、セシル」

 森へ行くと、セシルが約束を守り私の田んぼには手をつけていなかった。
 うん。ちゃんと話せばわかってくれるんだね。
 ただ、セシル用のイネは殆ど残ってないけど。
 なので、何か代わりの作物を植えてあげないと、明日のセシルのご飯がなくなっちゃう。
 あと、私も少しお腹が減ってきたし、何か果物とかがあると嬉しいんだけどな。

「……って、生やせば良いんだ」

 木魔法でリンゴの種を生み出すと、田んぼから少し離れたところで一気に成長させる。

「わぁ! 今日はリンゴなんだね! ……美味しそう」
「セシルも食べる?」
「いいの? ありがとう!」

 ほんの数秒で実がなってしまったリンゴをもぎ取ると、セシルと一緒にカプッと皮ごと食べ……うん、美味しい。ちゃんとリンゴだ。

「お姉ちゃん! 何この、このリンゴ! めちゃくちゃ甘くて美味しいよっ!? こんなの食べた事がないよ!」
「そっか。このリンゴは自由に食べて良いからね」

 そう言うと、セシルがすぐに二つ目のリンゴに手を伸ばす。
 前足で器用に実を採ると、そのまま一口で……ふふっ、美味しそうに食べるのね。

『あの、ルーシー。このリンゴ……何かおかしくありませんか?』
「ん? というと?」
『いえ、リンゴを食べる前と後とで、そちらのクマさんの持つ魔力が変わっています。というか、リンゴを食べる度に魔力が増えているんですけど』

 唐突にユリアナが出てきたかと思ったら、セシルの魔力が増えていると。
 食べるだけで魔力が増えるだなんて……要はステータスアップ系のアイテムだよね?
 でも、私も食べているけど、普通のリンゴだよ?

「ユリアナ。じゃあ、私も魔力が増えているの?」
『……いえ、あちらのクマさんだけですね』
「えぇー。ずるーい!」

 魔力が増えれば、沢山魔法を使っても、今朝みたいに寝込む事もないし、そもそもの魔法の効力だって上がるし、良い事ばかり。
 というか、そもそも学園で授業に出ているのだって、新しいスキルを得る事と、魔力を向上させる事が目的だからね。

「でも、セシルの魔力が増えると何か効果があるの? セシルはクマだし、魔法を使えないよね?」
『そうとは限りませんよ? 魔物の中には魔法を使う種族も居ますし、動物にも使える者が居るかもしれません』
「えっと、セシルって魔物じゃないよね? 普通のクマだよね?」
『はい。魔物ではないので安心してください』

 一先ず、セシルはリンゴに夢中みたいなので、私も少しお腹が満たされたし、稲の収穫をする事に。
 昨日ローランドさんに借りたナイフで、ちまちま稲を刈っていると、

「あ、お姉ちゃん! それ、手伝うよー!」

 田んぼに移動していた私に気付いたセシルがやってきた。
 けど、手伝ってくれるという気持ちは嬉しいものの、ナイフを持ったり出来ないよね?
 そう思っていると、

「稲を根本から刈れば良いんだよね? お姉ちゃん、ちょっと離れてー……えーいっ!」

 セシルが腕を横に凪ぎ……緑色の風? が出た。
 緑色の何かが、スパスパと稲の根本を斬り、

「はい、出来たよー」

 一瞬で稲刈りが終わってしまった。
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