悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

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第17話 異世界で目指す和食

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「え? セシル。今のは一体何なの?」
「んーと、何だろー? 出ろーって思いながら手を振ると出るよー」
「そ、そうなんだ」

 おそらく何かしらの風の魔法だと思うんだけど、それを魔法だと認識せずに使えちゃうのね。
 聞けば、リンゴを食べて魔力が上がる前から使えたそうなので、私が生やしたリンゴで変な事になってしまった訳ではなさそうだ。
 私もセシルみたいに、早く火魔法を使えるようにならなきゃ。
 それはさておき、セシルが斬ってくれた稲穂を集め、幾つかの束に分ける。
 私のゲーム知識によると、これを木の棒とかに引っ掛けて乾かすんだけど……

「ねぇ、ユリアナ。何かを乾かす魔法ってあったりするのかな?」
『ありますよー』

 あるんだ! 流石、異世界。何でもありね。
 ときメイのゲームでは、乾かす魔法なんて無かったけど、移動や戦闘に全く関係無さそうだもんね。
 早速教えてもらった魔法を使い、稲を乾かす。
 それから、次が脱穀作業と籾摺りっていう、乾かした稲から、籾を外して、籾殻を外す作業なんだけど、大変そうだなと思ってどうしようかと思っていたら、

『何か壺のような物があれば、すぐに終わりますよー』

 と、サラッとユリアナが凄い事を言ってくれた。
 この二つの作業は、かなり手間が掛かりそうなのに、すぐ終わるって。
 とりあえず、転送魔法で急いで寮へ戻ると、薄暗い寮の中をコソコソと歩く。
 ふっふっ……ときメイでアイテムが入手出来る場所がないかなって、寮の中は歩き尽くしているからね。
 家の中のタンスを漁り、壺を調べるのはゲームの基本よねっ!

「よし、壺げっと!」

 寮の隅にある、空の壺が沢山並んでいる部屋から手頃な大きさの壺を一つ拝借すると、急いで寮の裏へ。
 そこから再びセシルの所へ戻り、ユリアナの指示に従って、壺の中へ稲を入れていく。

『では、弱めに……かなり弱めに、その壺の中へ竜巻を起こしましょう』
「竜巻!?」
『はい。壺の中で稲をかき回し、身と殻を分けちゃうんです』

 なるほど。
 とりあえずやってみる価値はありそうなので、教えて貰った竜巻の魔法を、かなり弱い気持ちで使ってみる。

「≪トルネード≫」

 蓋の代わりにした木の板の下で、ゴウンゴウンと壺の中が物凄い勢いで回っているように思えるんだけど、これ……割れないかな?
 内心不安に思いつつ、暫くして回転が止まったので、蓋を開けてみる。
 とりあえず、上手くお米と籾が分かれていそうなんだけど、完全に取れている訳ではなさそうだから、不要な物を取り除いて、もう一回やってみる事に。
 二回目の竜巻を終えて、再び蓋を開けると、不要な籾とかを取り除き……

「で、出来たんじゃないかなっ!? 白米……と言えない物もあるけど、玄米って感じだよねっ!」

 白米と玄米、その中間の状態のお米が私の手にっ!
 やった! ついにお米を手に入れたわっ!
 次はカマド……って、調理器具とかが無かった。

「……寮の食堂でキッチンを借りられないかな? とりあえず、早くお米が食べたくなっちゃったよ」
『どうですかね。流石に私もそこまではわからないので、とりあえず聞いてみては良いのではないでしょうか』

 ふふっ……ご飯よ、ご飯。
 あっ、お味噌……は、ないだろうから、生卵とか?
 でも、醤油も無いんだろうな。
 まだまだ欲しい物は沢山あるけど、とりあえず最初の第一歩がようやく形になったので、先ずはその味を確認してみる事にした。
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