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挿話1 アリスの父、オーウェン・フェイン
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金さえ積めば、大抵の物は手に入れてみせるという、闇の商人との約束の取引の日が来た。
これで、隣国に伝わるアレが手に入る。
そう思っていたのだが、屋敷にやって来た商人が、とんでもない事を言い出した。
「バカなっ! 貴様は、あの聖獣を捕まえたと確かに言ったではないかっ!」
「えぇ、言いましたよ。実際、一度は捕まえた訳ですし」
「なんだと!? 貴様、まさか捕まえたが逃げられた……とでも言う気なのかっ!? そんなもの、何の言い訳にもならんぞっ!」
「わかっていますよ。ですが、その逃げられた理由が……アンタの娘、アリスのせいなんだよ!」
目の前に座る男の雰囲気が一変し、怒気に包まれる。
だが、どうして突然あのバカ娘の名前が出てきたんだ?
アイツは料理を作りたいなどと意味不明な事を口走って、家を出て行ったではないか。
それが、どうして聖獣を逃がしたという話に繋がるのだ!
「ど……どういう事だ」
「俺は今回の依頼の為に何人も人を雇い、更に何重にも罠を張って、ようやく聖獣を捕まえたんだ。後は俺が受け取ってアンタの所へ運ぶだけだったというのに……あのバカ共が突然足を洗うと言い出したんだ」
「今の話に、ワシの娘がどう関係するというのだ」
「最後まで聞けよ。聖獣を逃がしたバカ共が揃いも揃って、『温かい料理を食べて心が洗われ、目が覚めた』と、ほざきやがる」
「……料理?」
「あぁ、そうさ。話を聞くと、十代半ばのアリスお嬢様と呼ばれていた、金髪の少女が料理を作ってくれたんだと」
うぐっ……あのバカ娘は、何という事をしてくれたんだ!
一領主に過ぎないフェイン家が、隣国の王族と取引が出来る機会など、一生に一度あるか無いかという大チャンスだというのに!
「バカ共によると、その少女は料理をする際に火と水の両方の魔法を使っていたそうだ。複数の属性の魔法を使える者なんて、そうそう居ないんだがな」
「……」
「で、アンタの娘は四属性を使える逸材なんだろ? 今、どこにいるんだ?」
「……あの娘とは、親子の縁を切ったので、わからんな」
「庇おうってのか? 裏社会は舐められたら終わり……俺を敵に回すっていうなら、相応の報復は覚悟するんだな」
「待て! あのバカ娘は本当に家を出て行ったんだ! それに、そもそもワシから聖獣の捕獲を依頼しておいて、邪魔する訳がないだろうが!」
ワシだって、隣国の王女が聖獣を欲しがっていると聞いて、ありとあらゆるコネと金を使って王族と交渉しているんだ。
この交渉が失敗したら、フェイン家が傾きかねない事になるというのに!
「ふん! ……で、どうするんだ? こっちとしては、アンタの身内に商売を邪魔されたんだ。全額……とまでは言わないが、相応の報酬は払ってもらおうか。それで手打ちにしてやる」
「聖獣は手に入れないのか!?」
「だから、誰のせいでこうなったと思っているんだ! 一度逃がした獣は警戒する。ましてや、相手は高度な知能を持つ聖獣だ。もう捕まえるなんて無理だ!」
「……倍だ! 当初の取引金額の倍出すから、何とかして聖獣を捕まえろ!」
「……三倍だ。それなら請け負おう」
なっ……三倍だと!? いや、しかし……あのバカ娘を嫁がせて、アレを盗ませるという手はもう使えないし、二度とこんなチャンスが訪れない可能性すらある。
「わかった……払おう。だが、必ず聖獣を……玉兎を捕まえてくるのだぞ!?」
「こちらもビジネスだ。請け負った以上は必ず遂行しよう。……どんな手を使ってもな」
そう言うと、入って来た時とは違って高位の風魔法を使ったのか、男が一瞬で姿を消す。
クソッ! アリスめ……ワシの血を引いておきながら、どうして無能どころか、邪魔をするのだっ!
これで、隣国に伝わるアレが手に入る。
そう思っていたのだが、屋敷にやって来た商人が、とんでもない事を言い出した。
「バカなっ! 貴様は、あの聖獣を捕まえたと確かに言ったではないかっ!」
「えぇ、言いましたよ。実際、一度は捕まえた訳ですし」
「なんだと!? 貴様、まさか捕まえたが逃げられた……とでも言う気なのかっ!? そんなもの、何の言い訳にもならんぞっ!」
「わかっていますよ。ですが、その逃げられた理由が……アンタの娘、アリスのせいなんだよ!」
目の前に座る男の雰囲気が一変し、怒気に包まれる。
だが、どうして突然あのバカ娘の名前が出てきたんだ?
アイツは料理を作りたいなどと意味不明な事を口走って、家を出て行ったではないか。
それが、どうして聖獣を逃がしたという話に繋がるのだ!
「ど……どういう事だ」
「俺は今回の依頼の為に何人も人を雇い、更に何重にも罠を張って、ようやく聖獣を捕まえたんだ。後は俺が受け取ってアンタの所へ運ぶだけだったというのに……あのバカ共が突然足を洗うと言い出したんだ」
「今の話に、ワシの娘がどう関係するというのだ」
「最後まで聞けよ。聖獣を逃がしたバカ共が揃いも揃って、『温かい料理を食べて心が洗われ、目が覚めた』と、ほざきやがる」
「……料理?」
「あぁ、そうさ。話を聞くと、十代半ばのアリスお嬢様と呼ばれていた、金髪の少女が料理を作ってくれたんだと」
うぐっ……あのバカ娘は、何という事をしてくれたんだ!
一領主に過ぎないフェイン家が、隣国の王族と取引が出来る機会など、一生に一度あるか無いかという大チャンスだというのに!
「バカ共によると、その少女は料理をする際に火と水の両方の魔法を使っていたそうだ。複数の属性の魔法を使える者なんて、そうそう居ないんだがな」
「……」
「で、アンタの娘は四属性を使える逸材なんだろ? 今、どこにいるんだ?」
「……あの娘とは、親子の縁を切ったので、わからんな」
「庇おうってのか? 裏社会は舐められたら終わり……俺を敵に回すっていうなら、相応の報復は覚悟するんだな」
「待て! あのバカ娘は本当に家を出て行ったんだ! それに、そもそもワシから聖獣の捕獲を依頼しておいて、邪魔する訳がないだろうが!」
ワシだって、隣国の王女が聖獣を欲しがっていると聞いて、ありとあらゆるコネと金を使って王族と交渉しているんだ。
この交渉が失敗したら、フェイン家が傾きかねない事になるというのに!
「ふん! ……で、どうするんだ? こっちとしては、アンタの身内に商売を邪魔されたんだ。全額……とまでは言わないが、相応の報酬は払ってもらおうか。それで手打ちにしてやる」
「聖獣は手に入れないのか!?」
「だから、誰のせいでこうなったと思っているんだ! 一度逃がした獣は警戒する。ましてや、相手は高度な知能を持つ聖獣だ。もう捕まえるなんて無理だ!」
「……倍だ! 当初の取引金額の倍出すから、何とかして聖獣を捕まえろ!」
「……三倍だ。それなら請け負おう」
なっ……三倍だと!? いや、しかし……あのバカ娘を嫁がせて、アレを盗ませるという手はもう使えないし、二度とこんなチャンスが訪れない可能性すらある。
「わかった……払おう。だが、必ず聖獣を……玉兎を捕まえてくるのだぞ!?」
「こちらもビジネスだ。請け負った以上は必ず遂行しよう。……どんな手を使ってもな」
そう言うと、入って来た時とは違って高位の風魔法を使ったのか、男が一瞬で姿を消す。
クソッ! アリスめ……ワシの血を引いておきながら、どうして無能どころか、邪魔をするのだっ!
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