元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人

文字の大きさ
11 / 14

第11話 温かい夕食

しおりを挟む
 エイミーが今後もゴボウを食べられるようにと、奥さんの家で作ったゴボウ料理を全てウォルトさんに教えた。
 もちろん、一度に全て覚えられるとは思っていないので、まずは私が作ってみせて、手順をメモしてもらっている。

「……って感じです。どうぞ、食べてみてください」
「……う、旨い! あの土の味と苦味が強い土の枝を、ここまで旨くするなんて凄いな」
「次はウォルトさんがこれをエイミーさんに作ってあげる番ですよ」
「よ、よし。じゃあ、まずエイミーが気に入ったカリカリ炒めを作ってみるよ」

 早速、ウォルトさんに実践してもらっていると、ここへ連れて来た奥さんがそろそろ帰ると言う。

「お嬢ちゃん。そっちの兄ちゃんがカマドを貸してくれって言ってきた時は驚いたけど、エイミーを助けてくれて本当にありがとう」
「いえ、こちらこそカマドを貸していただいて……って、後片付けをしてないっ! 食材の代金も……」
「そんなの良いよ。それよりウォルトに料理を教えてくれたのは助かるけど、良かったのかい? そういう調理法って門外不出というか、お嬢ちゃんが試行錯誤で編み出したものなんだろ?」

 奥さんが申し訳なさそうにしているけど、日本ではネットを見れば幾らでもレシピが出て来るから、私はそれを見ながら作っただけなのよね。
 そして料理が好きだから、作っている内にいつの間にか思えちゃって、アレンジとかも出来るようになっただけだからさ。

「大丈夫です。美味しい料理は、大勢の人に味わってもらいたいので」
「そうかい。本当にありがとうよ。あと、ウォルトは昔から不器用だから、それなりに出来るようになるには一晩掛かるかもしれないね。もし時間があるなら、私の家に来ておくれ。幾らでも泊まっていってくれて構わないからね」
「ちょっ、姉さん。俺だって、料理人の端くれなんだ。エイミーの為に、土の枝料理を習得して……ん? あれ? ささがきって、難しいな。師匠は簡単そうにやっていたのに」

 いやあの、ウォルトさん……師匠って、私の事なのっ!?
 ただ、それはさておき、奥さんはウォルトさんの姉……エイミーの叔母だったのね。
 だから、親身になって対応していたんだ。
 一つ疑問が解消したところで、奥さんが非常に聞きづらいところへ踏み込む。

「ところで、ウォルト。奥さんはどうしたの? 全く姿を見ないけど」

 ひぇぇぇっ! そ、そこを聞いちゃうのっ!? いくら姉弟といっても、凄くプライベートなところではっ!?

「あぁ、今は王都に行っているんだよ。エイミーが土の枝を食べられないって聞いて、同じ効能を持つ食べ易い薬草を探しに行ったんだ」
「そうなのかい。私はウォルトが甲斐性無しで、愛想を尽かされて家を出て行ったのかと思ったよ」
「何を言うんだ。俺と妻はラブラブに決まってるだろ! 俺たちがどれだけ愛し合っているかを語ろうではないか」

 えっと……私は今、何を聞かされているのだろうか。
 結局、ウォルトさんの話ばかりで料理が進まず、陽が沈んできたので、私が夕食を作る事になった。
 というのも、料理店だけあってカマドが二つあるし、何より食材が豊富で、パンを作る為のイースト菌みたいなものまである!
 見ているだけでも勉強になるから……と、何を使っても良いと言われてしまったし、こんなの作るしかないでしょっ!
 そんな私が今日の夕食として作ったのは……これっ!

「お待たせ! クリームシチューっていう煮込み料理なの。パンに付けて食べても美味しいわよ」

 大きな鍋いっぱいにシチューを作り、パンを焼いて、付け合わせのサラダもたくさん作らせてもらったから、本当に楽しかった!
 強いて言うなら、お肉が無かったのが残念だけど、それくらいは仕方がないかな。

「あ、アリスさんっ! お、おかわりをっ! これはカリカリ炒めどころではありませんっ!」
「アリス凄ーい! こんなの初めて食べたよー!」

 リアムさんとタマちゃんがあっという間にお皿を空にする。

「これは……知らなかったよ。腹を満たす為の食事が、こんなにも素晴らしい事だったなんて」
「美味しいっ! 私も大きくなったら、お姉ちゃんみたいに美味しいご飯を作れるようになるっ! 絶対に料理人になるのっ!」
「エイミー……よし。まずはパパと一緒に作ろうか。ママに食べさせてあげて、びっくりさせるんだ!」

 奥さんやエイミーにウォルトさんも、シチューを食べて笑顔を浮かべてくれている。
 そう……これよっ! 本来、食事ってみんなが幸せそうにしているものなんだからっ!

 かなり多めに作った夕食だったけど、みんなが残らず食べきってくれた。
 それから、もう陽が完全に落ちているからと、奥さんが家に泊めてくれる事に。
 ウォルトさんの料理に対する意識が変わったみたいだし、それがこの村全体に広がっていくと良いな。
 少しずつだけど、この世界の人たちに食事が温かいものだって知ってもらうんだ!
 そんな事を思いながら就寝し……明朝にリアムさんの故郷へ向かう事にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―

愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。 彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。 魔法は使えない。 体は不器用で、成長も人より遅い。 前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。 けれどこの世界には、 見守り支えてくれる両親と、 あたたかい食卓があった。 泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、 彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。 これは、 最強でもチートでもない主人公が、 家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す 生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。 ……の、予定です。 毎日更新できるように執筆がんばります!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。 どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。 一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。 その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。 これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。 カクヨムにもサブタイ違いで載せています。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

処理中です...