元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人

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第12話 リアムさんの故郷へ

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「では、私たちはそろそろ出発しようと思います。お世話になりました」

 エイミーにゴボウ料理を作ってあげてから、二日後。
 当初の予定では一泊だけだったのだが、ウォルトさんが中々コツを習得出来なかったのと、エイミーちゃんがもっと料理を教えて欲しいと言って離してくれず……ようやく出発する事になった。

「いやいや、世話になったのは私たちの方だよ。本当にありがとう」
「師匠に教わった料理で、村のみんなを笑顔にしてみせますよ!」
「パパは、まず火加減の見極めが必要だと思うよー? 絶対、私の方が上手だもん!」

 奥さんが餞別だと言って、様々な作物が入った麻袋をくれ、ウォルトさんもやる気に満ちた顔をしている。
 そしてエイミーは、これまで料理をした事がなかったらしいけど、ウォルトさんが料理をしている姿を見ていたからか、筋が良い。
 ウォルトさんがまだ早いと言って、包丁を持たせてくれなかったものの、この調子ならきっと良い料理人になると思う。

「それでは、またこの村を通る時は必ず寄りますので」
「ばいばーい!」

 リアムさんとタマちゃんも挨拶を済ませ、農村を後にした。
 その後は順調に進んで行き、特に何事もなく山に囲まれた小さな町へ到着する。
 通りを大勢の人が行きかっているので、馬から降りて歩いて行く事に。

「アリスさん。ここが俺の故郷、カルレナです。アリスさんのイーリスの街と比べると半分程の大きさですが、平和で良い町……だったんですよ」
「へぇー……ん? リアムさん。今、だった……って言いました?」

 私の言葉で、リアムさんがハッと目を見開く。

「いや、その……本当に良い所なんです。南の山では様々な木の実が取れて、少し行ったところにある河では大きな魚が釣れるんですよ」
「あの、リアムさん?」
「……すみません。正直にお話しさせていただきますと……」

 リアムさんが申し訳なさそうに、何か言おうとしたところで、前から四人の男性がやってきて……取り囲まれた!?
 四人とも腰に剣を下げているし……ど、どうしようっ! 町だし、近くに衛兵がいるよねっ!?
 慌てて助けを求めようと思ったところで、男性の一人がリアムさんの肩を掴む。

「おい、お前……リアムじゃないのか!?」
「ん? あっ! お前は……」
「久しぶりっ! やっと帰ってきてくれたのか! 本当に助かる! そっちのお嬢さんは……もしかして、結婚したのか!? おめでとうっ!」
「――っ!? 待て待て待て。こちらは、俺が仕える……というか、仕えていた領主の娘さんだ。変な事を言わないでくれ」

 えーっと……四人の男性と、楽しそうに話しているし、リアムさんのお友達なのかな?
 とりあえず、久しぶりの再会みたいなので、暫く待っていると、私と目が合ったリアムさんが、突然我に返る。

「す、すみません! こいつらは幼馴染というか、腐れ縁というか……決して悪い者ではないのです」
「あー、仕事中っぽい感じだったんだな。すまねぇ。いつもの酒場にいるから、夜にでも来てくれよな」

 どうやら、リアムさんの言う通り悪い人たちではないみたいね。
 ただ、あの人たちだけではなく、通りを歩いている人たちが、みんな何かしらの武器を持っているような気がする。

「リアムさん。間違っていたら申し訳ないんですけど、この町って治安が悪いんですか?」
「悪い……まではいっていないと思うのですが、悪くなっているのは確かです。というのも、先程言いかけた事ですが、先日この町の近くにダンジョンが発生したそうで、一攫千金を夢見る冒険者たちで溢れかえっているんです」

 ダンジョンというと、ゲームや漫画で定番なアレの事だろうか。
 けど、ダンジョンが発生したというのはどういう事なのだろう。

「アリスさんはご存知ないかもしれませんが、長い年月を掛けて同じ場所に魔力が溜まっていくと、魔物を生み出す不思議な魔法域が出現する事があるんです」
「それがダンジョンなのね? でも魔物を生み出すって、危ないんじゃないの?」
「いえ。仕組みはわかりませんが、ダンジョンの中で生まれた魔物は、ダンジョンから出る事は滅多にないんです」
「そうなの?」
「えぇ。それに、魔物を倒して得られる素材が売れるので、先程のような冒険者と呼ばれる者たちが魔物を減らすので大丈夫ですよ。ただ、出来たばかりのダンジョンで、下層がどうなっているか分からないのですが」

 冒険者! どんどん異世界っぽくなってきたっ!
 いやまぁ食事に興味がない人が大半だし、魔法が使える時点で異世界感は凄かったけどさ。
 けどリアムさんの話だと、必ずしも安全とは限らないって事なのかな? その代わり、未知のお宝とかがあるのかもしれないけど。

「あっ! もしかして、リアムさんも冒険者になりたくて、騎士を辞めようとしていたの?」
「いえ、違います。先日お話しした通り、アリスさんの料理が食べたいからです。ただ、騎士不足で治安が悪くなりつつあるので、帰って来て欲しいという手紙が家から届いていたのも事実ですが」

 なるほど。故郷に戻ってきて欲しいと言われていたけど、私が家を出た事で踏ん切りがついたって事なのね。

「アリスさん。そんな事より、俺の家に行きましょう! キッチンも食材も使い放題ですよ!」
「うんっ! 行くっ! 木の実が沢山採れるって話だし、フルーツを使ったパウンドケーキを焼きたいな」
「えっ!? アリス、何それっ!? 気になるっ! 早く行こーっ!」

 タマちゃんにも催促され、早速リアムさんの家に向かったのだけど……

「リアムさんの家って……アレですか?」
「……ば、場所はここですね。けど……おかしいな」
「うーん。壁が金色にキラキラ輝いている屋敷って、ボクはどうかと思うなー」

 思っていたのとはちょっと違う、豪華っぽい屋敷が立っていた。
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