元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人

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第13話 リアムさんのお母様

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 リアムさんの家だという屋敷へ行き、中へ入るべく正面の門へ移動すると、槍を持った兵士さんが立っていた。

「止まれ! 何者だ!」
「何者……って、このグレイ家の次男だが」
「……ここで待っていろ。確認出来る者を呼んでくる」

 うーん……こう言っちゃなんだけど、ちょっと感じが悪いかも。
 だけど、それを一番感じているのはリアムさんのようで、顔が強張り、少し不機嫌なようにも見える。
 それから少し待つと、屋敷からメイドさんが走ってきた。

「坊ちゃま! リアム坊ちゃま……よくぞお戻りいただきました!」
「えっと、キャシーさん……ですよね? 何だか随分とやつれていませんか?」
「いろいろありまして……あの、ひとまず中へどうぞ」

 門をくぐって屋敷へ向かう間に、リアムさんが中庭を見渡し……ポツリと呟く。

「何だか、中庭の様子も変じゃないか? 前はもっと綺麗な花が沢山咲いていたのに、変な銅像があるんだけど」
「あれは、旦那様の銅像ですね」
「……父さんは、そんなに自己主張は強くなかったと思うのだが」
「ですが伯爵で、この町の領主様ですので……」

 リアムさんの呟きにキャシーさんが応えている間に、金色の屋敷に到着した。
 大きな扉の中へ入ると……あ、外観と違って、中は普通だ。

「リアム! おかえりなさいっ!」
「母さんっ! ……って、大丈夫なのか!? 今にも倒れそうな程に痩せているんだけど」
「お母さんは平気よ。それより、フェイン侯爵家に仕官して、五年だったかしら? 随分と立派になったわねぇ。それに、こちらのお嬢さんはリアムの恋人……んんっ!? まさか、フェイン家のアリス様っ!? し、失礼致しましたっ!」

 えっ!? 私の事を知っているの!? ……って、伯爵夫人なのだから、知っていて当然か。
 そこまで遠く離れた場所でもないし。

「あの、私は元侯爵令嬢と言いますか、家を出ておりますので、ただのアリスとしてご対応いただければと」
「いえ、そのような訳には参りません」

 普通に対応して欲しかったのに、リアムさんのお母さんからきっぱり断られてしまった。
 しかし……リアムさんのお母さんは、私がいると分かった瞬間に、久しぶりの息子との再会も中断して、伯爵夫人としての対応を始めたし、随分としっかりしていると思う。
 それなのに、あの外の兵士の態度がなっていないのと、この屋敷の外観がおかしいのはどういう事だろうか。

「アリス様。突然のご訪問でしたので、何の準備も出来ておらずに申し訳ないのですが、お茶を用意させますので、どうかこちらのお部屋でお寛ぎいただけますでしょうか」
「いえ、本当にフェイン家とは関係なく、リアムさんに友人としてお招きいただいたのです」
「母さん、その通りなんだ。だから、どうか普通に……俺の友人として対応して欲しいんだ」

 私とリアムさんからお願いし……少しだけお母さんの態度が軟化する。

「もうっ! リアム。アリス様とか友人とか以前に、誰かをお連れするなら事前に連絡くらいしなさい。手紙を出せば良いでしょう?」
「う……す、すみません」
「では、アリス様。今回はリアムのご友人として対応させていただきますが、いずれにせよお茶をご用意しますので、こちらへどうぞ」

 リアムさんと共に応接室へ入ると、少ししてメイドさんがお茶を運んできてくれた。
 お茶請けとして出されたのはドライフルーツで、きっと我が家の食事のようにあまり美味しくな……あれ?

「お母様! このドライフルーツ、とても美味しいです!」
「ふふっ、でしょう? ここはすぐ傍に、木の実がたくさん採れる山があるの。もいだ実をすぐに魔法で乾燥させると、不思議と凄く美味しくなるのよ」

 なるほど。鮮度が良い状態ですぐに加工しているから、美味しいんだ!
 ただ、この世界は料理に興味がないから鮮度っていう概念がないのか、不思議と美味しくなるっていう、おまじないみたいな扱いになってしまっているのが残念だけど。

「あの、もしよろしければ、魔法で乾燥させる方法を教えていただけないでしょうか!」
「それほど難しい事ではないのよ? 単に火魔法で乾燥させるだけだから。ただ、風魔法が使える人がいると、完成が早くなるわね」
「なるほど。熱風で乾燥させているのですね」
「えぇ、そうなの。興味があるなら、今度一緒に行ってみる?」
「はいっ! 是非お願いします!」

 日本で天日干しのドライフルーツは作った事があるんだけど、流石は異世界ね。
 まさか魔法で乾燥させるなんて。

「あー、こほん。母さんもアリスさんも……そろそろ、母さんやキャシーさんがやつれていたり、屋敷の壁が悪趣味になっている理由を聞いても良いだろうか」

 どのようなフルーツが採れるのかを聞こうとしたら、リアムさんが申し訳なさそうに割って入ってきた。
 うん。このドライフルーツが美味し過ぎて、つい暴走してしまったわね。
 この世界で食べた物の中で、一番美味しかったかも。

「えっと、お母様のドライフルーツが美味し過ぎて、つい……すみません」
「いえいえ、いいのよ。うーん……アリス様が本当に普通のお嬢さんで、我が家に嫁いでくれたら良いのに」
「ぶはっ! ちょっ、母さん!」

 リアムさんが飲んでいたお茶を吹きだし、傍で控えていたメイドさんたちが慌てて拭く。
 ほ、本題……本題に入りましょう!
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