元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人

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第16話 冒険者向けのご飯屋さん

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 リアムさんのお母さんを応接室のソファへ運び、タマちゃんと一緒に中庭へ。

「アリスー。それ……そこにあるメントが気付け薬になる薬草だよー」
「これね? ありがとう」

 タマちゃんが教えてくれた薬草、メントは思いっきりミントだった。
 これなら、私も使い方が分かるし、倒れてしまったお母さんに最適な方法も幾つか思い付いている。
 さっきパウンドケーキを食べたところだし、この方法が良いかな。
 キッチンヘ戻ると、水魔法でミントをサッと洗い、千切ってティーポットの中へ。
 そこにお湯を注ぎ、少し蒸らしてからカップへ注ぐ。

「お母様。ハーブティーです」
「ん……アリス様? ありがとうございます」

 湯気とミントの香りが立ち昇るカップをお母さんが口にすると、虚ろだった目に光が灯る。

「大丈夫ですか?」
「はい。それにしても、このお茶も凄いですね。随分と気持ちが落ち着きました」
「この子が……タマちゃんが教えてくれたんです」

 手のひらサイズのタマちゃんをお母さんに見せると、暫くジッと見つめ、ゆっくりと口を開く。

「なるほど。ポカポカして、先程までの気持ちが嘘のように落ち着いて……応接室でリアムから聞きましたが、これが聖獣様のお孫さんのお力なのですね」
「違うよー。ボクは気付け薬の薬草をアリスに教えただけだもん。それを温かいお茶にしたのはアリスだよー」
「ただ薬草を噛むよりは、こちらの方が飲み易くて、気持ちが安らぐかと思いまして」

 どうやらお母さんは、タマちゃんの事を聞いていたようで、私と交互に目を向ける。

「……わかりました。先程のパウンドケーキといい、このハーブティといい、アリス様なら大勢の人たちを料理で幸せに出来そうですね」
「じゃあ、料理屋さんで働かせてもらっても宜しいですか!?」
「はい。ただし、一つ条件があります。リアムに騎士としてこの町の治安維持に務めてもらおうと思っていましたが、暫くはアリス様の傍にいてもらいます」

 お母さんの言葉を聞いて、リアムさんが大きく頷いているけど、それはどうなのかな?
 リアムさんが私の表情を見て考えを察したのか、口を開く。

「アリスさん。最初にも言いましたが、俺はアリスさんの護衛として同行していますからね?」
「ですが、町がこのような状態で私だけ特別扱いという訳には……」
「いえ。アリス様がフェイン侯爵のご令嬢という事実は変わりません。特に今は気の荒い冒険者たちが多く、食事が出来る場所も足りていない事から、万が一の事があってはなりませんので」

 再びお母さんから、ビシッと言われてしまった。
 でも私の護衛をしてくれるのは有難いけれど、リアムさんは本来私ではなく、町の人たちを守らないといけないんだからね?
 しかし、そう思ったところで、お母さんから意外な言葉が出てくる。

「ですが、リアムを傍に付ける期間はそれ程長くならないのではないかと思っています」
「と言いますと?」
「アリス様の料理が冒険者たちに広まれば、きっと彼ら自身がアリス様を大事に守るようになるはずですから」

 私の料理が広まったら、冒険者さんたちが私を大事に守ってくれるようになる?
 よくわからないけど、何にせよ許可してもらえるなら良いかな。
 これで、大勢の人たちが食事に興味を持つきっかけになってくれれば良いのだけど。

「では、最初にリアムさんが一緒にいてくれれば、働いて良いのですね?」
「えぇ……でも、もう一つ問題があるのです」
「え? まだ何か……あっ! 食材が足りないとかですか!?」
「いえ、食料自体は問題ないですし、必要であれば他の村から購入する事も出来ます。ですが、まだ新しいお店が出来ていないので、そもそも働く場所がないのです」
「あー、既存のお店を借りる訳にもいかないですもんね」

 食材はあると言う話だし、ご飯屋さんも既にあるので、足りていないのは料理を食べる席なのだと思う。
 だから新しいお店を作っている訳で……そうだ! だったら、あの形式ならどうだろうか。
 日本と違って足りない物はあるけれど、この世界では代わりに魔法がある。
 なので、調理器具さえ見つかれば、日本でやったアレの経験が活かせるはずだっ!

「あの、そういう事なら、ここである程度調理したものを売りに行くという形でもよいでしょうか。仕上げは、お客さんの注文を受けてからしますけど」
「え? それは構いませんが、どういった事を考えられているのですか?」
「そうですね。これについては見ていただいた方が早い気がしますので、少し準備させていただきたいのと、使える食材を教えていただければと」
「小麦や木の実は近隣の街へ売る程あるのと、近くに牧場があるので、牛のミルクや卵は十分にありますが……」
「わかりました! あ、準備に際して幾つか貸していただきたい物もあるのですが、良いでしょうか」

 お母さんが二つ返事で許可し、必要な食材や調理器具などの類も全て用意してくれるそうだ。
 更に、暫くキャシーさんも手伝ってくれるという話なので、早速準備に取り掛かった。
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