料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

文字の大きさ
46 / 48

第40話 封印のクリスタル

しおりを挟む
 街を駆け抜け、王宮の門の前へ来ると、兵士たちが何事も無かったかのように門の前で立っていた。
 中で何が起こっているのか気付いていないのか、気付いているからこそ、中に街の人を入れないようにしているのか。どちらかは分からないが、いずれにせよこいつらに時間を取られている場合ではない。
 なので、走ってきた勢いそのままに、大きく跳躍し、門を飛び越えると、そのまま中へ。
 いつもの謁見の間? みたいな所に向かって走っていると、

「くっ! 我らの結界をことごとく無視しおって!」
「エスパナは魔法の後進国のくせに、何故我らの攻撃を避けられたのだ!?」
「今一度、今度は皆で一斉に攻撃魔法を……」

 途中で変な声が聞こえてきたけど、構っている暇は無いので、そのまま奥へ。
 目的の場所まであと少しという所で、

「エスパナの者がか。ここを通りたければ、我らポーツグスの精鋭魔法隊の……ぐほぁっ!」

 立ち塞がっている奴らが居たので、とりあえず蹴っておいた。
 数人の男たちを蹴り倒し、謁見の間へ入ると、十数人の人が半透明の石の中で固まっている。

「あぁ、お前が居たか。だが残念だったな、料理人。見ての通り、この国の要人は、全員水晶の棺の中……ぐぅっ! 何だ、この力は!?」
「モレノ! 姉さんの力を返してもらうっ!」
「姉さんの力とは……まさか、お前はクララの弟なのか!?」
「お前は何を言っているんだ? 寝言は寝て言えっ!」
「がっ……ちっ! 料理の腕といい、俺の魔力壁を超えて来る力といい、惜しいな。だが、ここまでだ……おごぉっ! ……お、おい。こういう時は空気を読め! 相手の話を聞け! 後悔するのはお前だからなっ!?」

 前回はモレノを殴ろうとしても、見えない変な壁みたいなのに阻まれてしまったので、今回は助走からの飛び膝蹴りを放ち、かなり威力は削がれてしまったものの、ダメージを与える言葉が出来た。
 なので、関節技をキメ……何か言っているな。

「よ、よく聞け。見ての通り、この水晶……待て! 本当に待て!」
「何が言いたいか知らないが、姉さんの力が先だ」
「いや、お前の言う姉、クララが水晶に……」
「だから、クララは姉では無いと言って居るだろっ!」
「おい、止め……折れるっ! 本当に折れるぅぅぅっ!」

 ……ん? 今、クララが水晶にどうこうって言ったな?
 我に返って見てみると、クララが半透明の石の中に閉じ込められていた。

「モレノ! 姉さんだけでなく、クララまで!」
「だから、最初からそう言っているだろ! それと、もしもお前が俺に一定以上のダメージを与えたら、あの石に閉じ込められた者たちの魔力を使って……」
「ふざけるなっ! 姉さんの力とクララを返せっ!」
「ぐはっ! おま……殴りやがったな!? ふはは、忠告してやったのにな。これで条件は揃った! 俺に攻撃してきた愚かなお前に、裁きの雷が……おい! 俺を盾にするな! この腕を離せ……ぎゃぁぁぁっ!」

 モレノがどういう魔法を使ったのかは分からないが、人の入った石が一つずつ光り、その度に俺へ……というかモレノへ光が突き刺さる。
 とりあえず、クララを石から出してあげなければと、モレノの関節をキメたままクララの石に近付くと、

「ふっ……何をする気かは知らないが、それは水晶――クリスタルを用いた封印だ。硬さと魔力増幅効果を持っているから、お前がどうこう出来る代物では……はぁぁぁっ!?」
「お、何だ。案外簡単に割れるな。クララ、大丈夫か?」

 手刀を放って水晶を割り、中のクララを助け出す。

「あ、アルフレッド様! ありがとうございます!」
「大丈夫そうで何よりだ。フレイアとソフィアは?」
「二人は……あちらですね。どうか助けてくださいませんか?」
「任せておけ」

 クララの指し示す先――部屋の隅を見てみると、二人揃って水晶に閉じ込められていたので、クララと同じ様に助け出す。

「アルフレッド! すまない。助かった」
「アルフレッドさーんっ! 絶対に来てくれるって信じてましたぁぁぁっ!」

 フレイアとソフィアが泣きそうになりながら喜んでいるが、次は姉さんの力を返してもらわないとな。

「……あ、そうか。さっきの水晶みたいに割れば、姉さんの力が戻ってくるかも」
「お、おい! 止めろっ! 姉さんの力とは何の事だっ!? 返す……何でも返すから、その水晶を割る程の力を俺に向けないでくれっ!」

 まだ何もしていないのだが、モレノが一人で怯えだし、姉さんの力を返すと言い出した。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...