大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人

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第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女

挿話20 今すぐ逃げ出したいダークエルフの斥候マリウス

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 今すぐ逃げ出したい気持ちで一杯だったけど、僕は斥候役だし、もしかしたらグリフォンとは戦わなくても良いかもしれない。
 逃げ出すにしても行くあてがないので、僅かな希望に賭けて族長たちを待つ事に。
 暫くすると、僕が待機している緊急連絡時の秘密の洞窟へ族長がやって来た。

「待たせたな、マリウス。では、聖女の居場所へ案内してくれ」
「……本当に戦うんですか? グリフォンと」
「当たり前だ! 聖女にダークエルフの恐ろしさをとくと味あわせてやる!」

 行く事は決定かー。
 とりあえず道案内だけして、後ろの方で隠れて居よう。
 うん、それが良い。
 自分の行動を決め、洞窟を出ると……うわっ! これ、ダークエルフの戦闘部隊のほぼ全員では?
 流石に村の警備に何人かは残してきているだろうけど、かなりの人数が居て、それぞれが弓矢や杖を手にしている。
 族長が言っていた通り、遠距離攻撃でグリフォンを倒すつもりのようだ。

「えーっと、ではついて来てください」
「うむ。皆の者、出陣だっ! 相手はたった一人! グリフォンを使役する聖女だけだっ!」
「お、おー」

 うわー。やっぱり皆、士気が低いよね。
 相手は神獣グリフォンだし、そりゃそうだよ。
 ヤル気があるのは族長だけで……一人で行ってくれないかな?
 流石にそんな事は言えずに、森の中をひたすら走って行く。
 日が完全に落ち、月明かりの下を進んで行くと……見えた!

「族長、止まってください。あの家……というか、石の小屋が聖女の居場所です」
「ほぉ……人間族は随分と原始的な家に住むのだな。まぁ良い。グリフォンは見えるか?」
「そうですね……あ! あれじゃないですか? 家の横で猫みたいに座っている、大きいの」
「鳥の身体と獅子の身体……うむ! 間違いない! 奴がグリフォンだ! よいか、皆の者! 事前に伝えた作戦通り行えば、必ず勝てる! まずは弓矢部隊! あの翼を矢で射貫くのだっ!」

 翼を射貫くのだ……って、折り畳まれているんだけど。
 本当に大丈夫なの?
 とりあえず、僕は弓矢も持っていないし、魔法も得意ではないので、こっそり後ろの方へ下がって様子を伺って居ると、十数人で一斉に矢を放つ。
 矢は放物線を描いてグリフォンに向かって飛んで行き……え? 途中で見えない壁にぶつかったかのように、ポロポロ落下していく。

「なっ……い、一体どういう事だ!? 奴は眠っているのではないのか!?」

 あ……思い出した。
 人間族の聖女って、防御魔法が得意だって、どこかで聞いた事があるような気がする。
 あれはグリフォンの力じゃなくて、聖女の力じゃないのかな?

「よし。予定とは少し違うが、次は魔法での砲撃を試すぞ! 魔法部隊、俺に続けっ!」

 そう言って、族長を筆頭に闇魔法がグリフォンに向かって飛んで行き……あ、さっきの壁みたいなところで霧散した。
 やっぱり防御魔法とかを使っているんじゃないのかな?
 これで族長が諦めてくれれば良いんだけど、

「こうなったら、仕方がない。予定を変更して、直接攻撃だ! 如何にグリフォンといえども、眠っているところを全員で攻撃すれば倒せるはずだっ!」

 まったく諦める気配がなかった。
 いやもう無理だよ。
 これだけの人数で一斉に攻撃して、防御魔法を壊せないんだよ?
 聖女とグリフォンの組み合わせは凶悪過ぎるよ。
 と、いつのタイミングで逃げようかと考えていると、

「お主ら、何をしておるのじゃっ!」

 突然、変な女が乱入してきて……ちょっ、めちゃくちゃ強いんだけどっ!
 待って! 僕は何もしてないから! 戦う気なんて一切なくて……ぐはぁぁぁっ!
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