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第16話 東隣の国フバーツカ
「それで、お爺様。何があったのでしょうか」
「いや……うむ。今日の昼頃、トラヴィス第三王子が来られたのだ」
「え? どう……して?」
イザベラの婚約者であるトラヴィス王子が、どうしてこんな辺境に!?
ま、まさか、私が闇魔法使いではなかったという話が、王宮内にちゃんと伝わっておらず、討伐に来たとか!?
闇魔法は簡易な魔法であれば、まだそこまで害を及ぼさないのだが、高度な術式を組む事とにより闇の存在を召喚し、使役出来るという話を聞いた事がある。
いわゆる、魔王や魔族といった存在を悪しき者が使役すれば……もしくは、未熟な者が使役しようとして暴走させてしまったら、どうなるかは火を見るよりも明らかだ。
そういう訳で、どこの国でも闇魔法は禁忌とされていて、使用者は例外なく罰せられる。
「お、お爺様。私は闇魔法使いだと疑われておりましたが、違うのです」
「いや、もちろんそんな事はわかっておるが……どうしたのだ?」
「いえ。分かっていただけているのでしたら、大丈夫です」
闇魔法の件ではない?
でも、お爺様は私がゆっくり帰ってきてくれて良かった……つまり、その場に居なくて良かったと仰った。
なので、トラヴィス王子が私を探していたという事は間違いない。
あっ! もしかして、お父様が仰った北隣のオイゲン皇子との婚約の事とか?
隣国との婚約になるので、お父様がトラヴィス王子を介して私との婚約の話を進めたのに、当の本人である私が家に帰らないから、トラヴィス王子が自ら連れ戻しに来たとか!?
「お爺様。この数日間、自由に過ごさせてくださって、ありがとうございました。国際問題となり、国民を苦しめる事になるくらいでしたら、私が隣国へ嫁ぎます」
「あ、アルマ!? 一体何の話をしているのだ!? どうして、そこでアルマが隣国に嫁ぐ話になるのだ!?」
「え? 国際問題を回避する為に、トラヴィス王子が私を連れ戻しに来たのでは?」
「そんな訳なかろう。そもそも、アルマがここに居る事は、トラヴィス王子は知らないだろう?」
「ですが、お父様には私がここに居る事をお話しされているのですよね?」
「アルマの居場所は田絵にも……イザベラにすら言うなとキツく言っておる。いくらバカ息子とはいえ、ワシの厳命は破らぬであろう。じゃが、トラヴィス王子とアルマが直接出会ってしまっては、流石に居場所が王都に広まってしまうと懸念したのじゃ」
なるほど。そういう事なら、イザベラ経由でトラヴィス王子に私の居場所は知られていないみたいだし、王子に遭わなくて良かったと思う。
あれ? それなら、一体何の話なのだろう。
「あの、お爺様。トラヴィス王子はどのような御用件で?」
「うむ。その話をする前に、アルマはこの領地の東隣にある国の事は知っておるな?」
「はい。フバーツカは広く海に面した国で、海産物が特産品となっています。複数の民族が暮らす地であるため、時折内部紛争が起こり、しばしば国力が低下する程の……」
「流石はアルマじゃな。良く勉強しておる。今回トラヴィス王子が来たのは、そのフバーツカ国の事で来たのじゃ」
フバーツカの事でトラヴィス王子が?
王族が直々に足を運ぶくらいだから、かなりの大事だとは思うんだけど……。
「それで、お爺様。フバーツカがどうされたのですか?」
「それがな、フバーツカが海産物の収穫量を増やす為、数年前から養殖を始めたらしいのだが……それが全滅してしまったそうでな」
「まぁ……それはフバーツカに取っては痛いですね」
「うむ。だが、その失敗した理由というのが、河から流れてくるゴミや汚水のせいらしい。この街に限った話ではないが、河にゴミを流す街が世の中には多いそうだ」
あー……河の水は最終的に海まで到達するし、海産物を生業とするフバーツカには大問題ね。
それに海まで行かずとも、下流にある街や村にとっても悩ましい問題だと思う。
上流にある街の責任として、放水する水を綺麗にしようと思ったんだけど、今回の取り組みをやって本当に良かった。
「その養殖にはかなりの資金を投入していたようで、出資したフバーツカの貴族たちが激怒していたらしい」
「なるほど。それは怒りたくもなりますよね」
「そうなのだ。その怒りが、フバーツカの周辺国全てに向けられていたらしく、我が国……というか、この街も怒りが向けられた内の一つだったそうだ」
「えっ!? ですが……」
「うむ。アルマの言いたい事はわかる。アルマのおかげで放水する水が綺麗になった。だからフバーツカも、戦争という最悪の手段を洗濯する前に、矛を下ろしたらしい」
どういう事かと詳しく聞くと、国力が低下しているフバーツカは養殖に失敗して後がなくなり、海を汚した報いという言葉と共に、戦争を仕掛けて食料などを奪うつもりだったのだとか。
ところが、今回私たちの取り組みで、河の水が綺麗になったので、もう一度この河の河口付近で養殖に取り組む事にしたらしい。
「もしかして、今回排水を綺麗にする取り組みを行っていなければ……」
「そうじゃ。この街はフバーツカに攻め込まれていたかもしれぬ……と、トラヴィス王子から話があり、戦争を回避した事について直接礼をお伝えしに来られたのじゃ」
「も、物凄く危険な状態だったんですね」
「ワシもこの事は察知出来ておらんかった。アルマよ。この街の……いや、この国を救ってくれて、本当にありがとう。王子に代わり、心より感謝を伝える」
そう言って、お爺様が頭を下げたけど……本当に回避出来て良かった。
幼い頃の思い出が沢山ある街が壊されたりするのは嫌だし、街の人たちが危険な目に遭うのは嫌だからね。
あ……浄化の魔石を沢山作って、他の街へ配った方が良いのかな?
いやでも、高価な品だって言っていたし……明日ケヴィンさんの意見を聞いてみよっと。
「いや……うむ。今日の昼頃、トラヴィス第三王子が来られたのだ」
「え? どう……して?」
イザベラの婚約者であるトラヴィス王子が、どうしてこんな辺境に!?
ま、まさか、私が闇魔法使いではなかったという話が、王宮内にちゃんと伝わっておらず、討伐に来たとか!?
闇魔法は簡易な魔法であれば、まだそこまで害を及ぼさないのだが、高度な術式を組む事とにより闇の存在を召喚し、使役出来るという話を聞いた事がある。
いわゆる、魔王や魔族といった存在を悪しき者が使役すれば……もしくは、未熟な者が使役しようとして暴走させてしまったら、どうなるかは火を見るよりも明らかだ。
そういう訳で、どこの国でも闇魔法は禁忌とされていて、使用者は例外なく罰せられる。
「お、お爺様。私は闇魔法使いだと疑われておりましたが、違うのです」
「いや、もちろんそんな事はわかっておるが……どうしたのだ?」
「いえ。分かっていただけているのでしたら、大丈夫です」
闇魔法の件ではない?
でも、お爺様は私がゆっくり帰ってきてくれて良かった……つまり、その場に居なくて良かったと仰った。
なので、トラヴィス王子が私を探していたという事は間違いない。
あっ! もしかして、お父様が仰った北隣のオイゲン皇子との婚約の事とか?
隣国との婚約になるので、お父様がトラヴィス王子を介して私との婚約の話を進めたのに、当の本人である私が家に帰らないから、トラヴィス王子が自ら連れ戻しに来たとか!?
「お爺様。この数日間、自由に過ごさせてくださって、ありがとうございました。国際問題となり、国民を苦しめる事になるくらいでしたら、私が隣国へ嫁ぎます」
「あ、アルマ!? 一体何の話をしているのだ!? どうして、そこでアルマが隣国に嫁ぐ話になるのだ!?」
「え? 国際問題を回避する為に、トラヴィス王子が私を連れ戻しに来たのでは?」
「そんな訳なかろう。そもそも、アルマがここに居る事は、トラヴィス王子は知らないだろう?」
「ですが、お父様には私がここに居る事をお話しされているのですよね?」
「アルマの居場所は田絵にも……イザベラにすら言うなとキツく言っておる。いくらバカ息子とはいえ、ワシの厳命は破らぬであろう。じゃが、トラヴィス王子とアルマが直接出会ってしまっては、流石に居場所が王都に広まってしまうと懸念したのじゃ」
なるほど。そういう事なら、イザベラ経由でトラヴィス王子に私の居場所は知られていないみたいだし、王子に遭わなくて良かったと思う。
あれ? それなら、一体何の話なのだろう。
「あの、お爺様。トラヴィス王子はどのような御用件で?」
「うむ。その話をする前に、アルマはこの領地の東隣にある国の事は知っておるな?」
「はい。フバーツカは広く海に面した国で、海産物が特産品となっています。複数の民族が暮らす地であるため、時折内部紛争が起こり、しばしば国力が低下する程の……」
「流石はアルマじゃな。良く勉強しておる。今回トラヴィス王子が来たのは、そのフバーツカ国の事で来たのじゃ」
フバーツカの事でトラヴィス王子が?
王族が直々に足を運ぶくらいだから、かなりの大事だとは思うんだけど……。
「それで、お爺様。フバーツカがどうされたのですか?」
「それがな、フバーツカが海産物の収穫量を増やす為、数年前から養殖を始めたらしいのだが……それが全滅してしまったそうでな」
「まぁ……それはフバーツカに取っては痛いですね」
「うむ。だが、その失敗した理由というのが、河から流れてくるゴミや汚水のせいらしい。この街に限った話ではないが、河にゴミを流す街が世の中には多いそうだ」
あー……河の水は最終的に海まで到達するし、海産物を生業とするフバーツカには大問題ね。
それに海まで行かずとも、下流にある街や村にとっても悩ましい問題だと思う。
上流にある街の責任として、放水する水を綺麗にしようと思ったんだけど、今回の取り組みをやって本当に良かった。
「その養殖にはかなりの資金を投入していたようで、出資したフバーツカの貴族たちが激怒していたらしい」
「なるほど。それは怒りたくもなりますよね」
「そうなのだ。その怒りが、フバーツカの周辺国全てに向けられていたらしく、我が国……というか、この街も怒りが向けられた内の一つだったそうだ」
「えっ!? ですが……」
「うむ。アルマの言いたい事はわかる。アルマのおかげで放水する水が綺麗になった。だからフバーツカも、戦争という最悪の手段を洗濯する前に、矛を下ろしたらしい」
どういう事かと詳しく聞くと、国力が低下しているフバーツカは養殖に失敗して後がなくなり、海を汚した報いという言葉と共に、戦争を仕掛けて食料などを奪うつもりだったのだとか。
ところが、今回私たちの取り組みで、河の水が綺麗になったので、もう一度この河の河口付近で養殖に取り組む事にしたらしい。
「もしかして、今回排水を綺麗にする取り組みを行っていなければ……」
「そうじゃ。この街はフバーツカに攻め込まれていたかもしれぬ……と、トラヴィス王子から話があり、戦争を回避した事について直接礼をお伝えしに来られたのじゃ」
「も、物凄く危険な状態だったんですね」
「ワシもこの事は察知出来ておらんかった。アルマよ。この街の……いや、この国を救ってくれて、本当にありがとう。王子に代わり、心より感謝を伝える」
そう言って、お爺様が頭を下げたけど……本当に回避出来て良かった。
幼い頃の思い出が沢山ある街が壊されたりするのは嫌だし、街の人たちが危険な目に遭うのは嫌だからね。
あ……浄化の魔石を沢山作って、他の街へ配った方が良いのかな?
いやでも、高価な品だって言っていたし……明日ケヴィンさんの意見を聞いてみよっと。
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