婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第304話 魔王の力

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「ほ、本当にフランセーズのトリスタン王子だったのか!?」
「間違いありません。事前にいただいた資料通りの容姿でした。既に街の外に展開していたフランセーズの騎士団と交戦中です」
「本当に王族が魔王になってしまったのか。まったく、フランセーズは一体どういう教育をしているのだ?」

 部屋の中にいた誰かが非難し、フランセーズの偉い人だと思われる男性が立ち上がる。

「ふ、フランセーズの汚点は我ら騎士団が責任を持って止めてみせよう。参る!」
「相手は魔王の力を持つという。こちらも行こう」
「私たちは弓の名手を同行させている。射止めさせよう」

 フランセーズの人を皮切りに、中にいた人たちが次々に立ち上がり、部屋を出て行く。
 私たちも続こうと思ったところで、ビアンカさんが部屋を出てきた。

「アニエスさん。見ての通り、各国の精鋭が来ております。私たちにお任せください」
「でも、私たちも……」
「彼らは戦闘のプロですから。大丈夫です」
「ビアンカさ……」

 私とロレッタさんを置いて、ビアンカさんが騎士さんたちと共に出て行ってしまった。
 全く迷惑だなんて事はないし、せめて神水を飲んで行って欲しかったのに。

「アニエスさん、どうします? まだイナリさんたちも戻って来ていませんが」
「私たちに出来る事をしましょう。怪我人などの介抱は出来るはずだから」

 ロレッタさんに手持ちのポーションを全て渡し、ビアンカさんたちが向かった方へ、私たちも向かう。
 教会を出ると、真っ暗な空よりも更に黒い稲光りが見えた。
 それと共に、遠くから沢山の悲鳴や怒号が聞こえてくる。

「えぇい、怯むなっ! 相手はたかが一人だ! 奴の事は王子だと思うな! 斬り殺せっ!」
「ダメです! 黒い何かが見えた瞬間、身体に激痛が……ぐはぁっ!」
「隊長! 第一騎士隊は全滅! 第二騎士隊も壊滅状態です!」

 大変! 早くポーションを飲ませないと!

「ふっ……魔王の力を得ようとも、何が起こったか理解する前に死ぬがいい」

 前方に向かって駆け出そうとした所で、民家の屋根に登っていた人が、矢を放つ。
 ここからではどうなったのかが見えないけど、二本目の矢を構えたところで、黒い雷が落ちてきた。

「何故……何故避けられたんだ」

 弓を持った人が屋根から落ちてきたので、大急ぎで神水を飲ませる。

「大丈夫ですかっ!? これを飲んで!」
「これは……か、身体が動く!? 貴女は……確か、太陽の聖女のご友人?」
「えぇ。旅の薬師……いえ、水の聖女です。酷い怪我をされている方がいたら、私を呼んでください。命さえあれば、きっと助けられますから」

 私には直接トリスタン王子を攻撃する術が無いので、怪我人を探して治療していく事にした。
 ロレッタさんも同じ考えに至ったらしく、別行動で手分けして救助していく。

「うぐ……」
「これを! 無理せず下がってください」
「……痛くない!? 貴重な薬をありがとう。これでまた戦える!」
「えっ……」

 苦しんでいた騎士さんを助けたい一心で神水を飲んでもらったのに、ついさっきまで倒れていた方が、起き上がってすぐに前方へ走り出してしまった。

「ぐふっ……」
「薬です! 飲んでください」
「……あぁ、ありがとう。お嬢さん。後は任せて、君は逃げなさい」
「あの、貴方は!?」
「我々騎士は、人々を護るのが務めですから」

 またもや助けた騎士さんが、戦いに戻ってしまった。
 トリスタン王子を放っておけば、騎士さんたちだけでなく、全く関係一般市民まで巻き添えになってしまうのはわかるけど……どうすれば良いのっ!?
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