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プロローグ
プロローグ (プロローグと言う名の人物紹介)
しおりを挟む……ポヨン……
気の抜ける様な擬音を響かせ、包丁の刃先が、緑色のスライムの体表から弾き飛ばされる。
スライムは包丁を突き立てられた衝撃で、楕円形の身体をニ、三度プルプルと震わすと、身体の一部を触手の様に変形させて、こっちに向かって伸ばして来た。
「おおっ!!!」
思わず出た驚愕の声と同時に、身体を捻り、スライムの攻撃を紙一重で躱すーー背中から、一気に冷や汗が噴き出した。
今のはヤバかった……今の俺じゃ、最弱スライムの攻撃がかすっただけでも危ないのに……大体、ポヨン、て何!?あんな柔らかそうな体に刃物を突き立てたのに、何で弾かれる?
攻撃が効かない事実にパニックになっていると、
「何やってる博貴!すぐに退がって!」
後方からの悲鳴に近い怒声と共に、肩を掴まれ強制的に後退させられた。直後、一組の男女が俺と入れ違いに、俺とスライムの間に割って入る。
男の名は、狩野健一(かりのけんいち)身長180センチ前後、整った顔立で、黒を基調としたローブを身に纏っている。一見、飄々とした優男だが、その実、廃人ゲーマーと重度のオタクという、中身の濃い二重属性を持ち、その事に誇りを持つ強者である。
女の方は、姫野美姫(ひめのみき)俺達はヒメの愛称で呼んでいる。少し垂れ目がちの大きな瞳に、可愛らしい顔立ち。少し癖っ毛のある茶色がかった髪を、腰の辺りまで伸ばしている。服装は、白地に金糸の刺繍の入ったゆったりめのローブなのだが、小柄な体躯に似合わない見事な起伏が、素晴らしい存在感を誇っていた。
二人共、外見、性格共々、平々凡々な俺、桂木博貴(かつらぎひろき)の自慢の幼馴染である。
「ひろちゃんに何てことするの!死んじゃうじゃない!」
「エアプレス」
ヒメが可愛らしい声を荒げながら、キッとスライムを睨み付け、健一は静かではあるがドスの効いた声で、恐らく予め唱えていたであろう呪文を発動する。
スライムは、見えない圧力に押し潰されて呆気なく消滅した。後には直径2センチほどの、ビー玉のような黒い玉だけが残る。
ちなみに、『ひろちゃん』とはヒメが俺に対して使う愛称で、健一の場合は『けんちゃん』となる。普通、この手の呼び名は思春期の時に、恥ずかしくて止めるものだが……ヒメは一向に気にしていない。呼ばれているこっちは、恥ずかしくてやめて欲しいのに。
少し気恥ずかしい気持ちでヒメを見ていると、健一がスライムの消滅を確認してから、険しい顔付きでこちらを振り向いた。
「博貴!攻撃し終わったら、直ぐに後退って言ったろ!」
……ああ、確かに戦闘前にそんな打ち合わせをしていた。
「……すまん……包丁が弾かれた瞬間、頭が混乱して……」
「混乱って……博貴、あのねぇ……」
俺に詰め寄ろうとした健一に、ヒメが待ったを掛ける。
「ねえ、けんちゃん、それって……もしかしてひろちゃんのステータスが低いせいじゃない?」
ヒメの疑問を受け、健一は一度大きな溜め息を吐いてから、険しい顔付きをいつもの飄々とした風貌に戻し、考え込む仕草をした。
「うーん……その可能性はある……のかな?知力や精神力が低いのが影響してるのかも」
「でしょう!あんな事で取り乱す様なひろちゃんじゃないもの!」
ヒメの過剰評価はさて置き、健一の推察を聞き、俺は『またか……』と、嘆息をついた。
俺がこの世界に連れてこられてこれまで、散々この世界の法則の所為で煮え湯を飲まされてきた。
この世界は良くも悪くも、すべてが『ステータス』と『スキル』に支配された世界だ。その二つの前では、元の世界の物理法則は無意味なのだからたまったものではない。健一とヒメは俺のステータスを『低い』と表現したが、実際は、低い何て物ではないーー俺のステータスは……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
名前 桂木 博貴 Lv 0
人間種 人間
状態 正常
HP 5 /5
MP 5/5
体力 1
筋力 1
知力 1
器用度 1
敏捷度 1
精神力 1
魔力 1
〈ノーマルスキル〉
料理Lv5(1) 恐怖耐性Lv5(2)
世界共通語Lv10(1)
〈オリジナルスキル〉
**********Lv10(30)
SP 0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
……… である。
そう、『低い』ではなく最低値なのだ。
俺は十六歳の健全な肉体と、歳相応の知識を持っている。しかし、この世界の法則は俺を赤ん坊以下の生物と判定するだろう……全く持って理不尽だ。
俺ががっくりと項垂れていると、健一が口をひらいた。
「まあ……とりあえず博貴の物理攻撃は、魔物に通用しない事が分かった事だし、そろそろ上に戻らないか」
「うん、それがいいよ。そろそろ桃花さんが夕食を作ってる頃だと思うし」
「ああ……そうだな、もどるか」
健一の言葉にヒメが同意し、俺は落胆しながら頷いた。
ここはダンジョンの地下一階。今いる場所から数メートル戻った所に、地上の居住スペースとなるログハウスへと戻る階段がある。俺達は意気消沈しながら地上に戻った。
「おや、その様子だと挑戦は失敗だったようだね」
地上に戻り、ダンジョンへの階段がある部屋からリビングへと移動した俺達は、部屋に入った瞬間そう声を掛けられた。
声のした方を見ると、リビング中央にある大きなテーブルに備え付けられているイスに、メガネを掛けた無邪気そうな青年が、爽やかな中に毒のある笑みを浮かべて座っていた。
彼の名は、井上晴哉(いのうえはるや)元の世界では俺達の一学年上の二年生で、高校の生徒会長をやっていた男だ。こちらの世界に来てからは一応、健一達のパーティーのリーダー格らしい。まあ、皆んなが認めているとは思えないが……
「ええ、やっぱり【料理】スキルでの包丁攻撃では、最弱グリーンスライムでもダメージを与える事は、出来ないみたいです」
井上先輩に健一が答えると、井上先輩は更に笑みを深め、口を開いた。
「うん、やっぱり【料理】スキルではダメージ補正#$☆3×%~」
ああ、また始まった……
俺は途中から理解出来なくなった井上先輩の言葉に、顔を歪めた。
別に井上先輩が突然、俺には聞き取れない異国語を話し始めたわけでは無い。話している言葉は日本語だと理解出来るのに、その内容が全く頭に入ってこない。推測ではあるが、知力が1の俺は、この世界の情報を理解、又は記憶出来ないのだと思う。俺がスライムを理解出来たのは、ただ単に、元の世界の情報あったからだ。まあ、この世界のスライムに目と口はなかったが……
健一と井上先輩が、俺では理解出来ない会話を続けているとヒメが、
「あっ、私、桃花さんを手伝ってきますね」
と言って厨房へと消えていった。
う~ん、理解出来ない会話を続ける二人と一緒では、俺も居た堪れないんだけどなぁ、などと思っていると、外に通じている扉が勢い良く開き、百九十センチを越える筋肉質の大男が滴る汗をタオルで拭きながら室内に入ってきた。
彼は窪省吾(くぼしょうご)元の世界では、空手部の主将で三年生。身体を鍛え強くなる事が何よりも好きな人で、今も多分、外でトレーニングでもして来たのだろう。
「おう、おまえら、帰ってたのか!」
屈託の無い笑顔をうかべ、必要以上の大きな声で窪先輩がこちらを見て右手を上げた。
「ええ、先程帰って来ました。挑戦は……失敗に終わりましたけど……」
「はっはっは!失敗したか、まぁ、気を落とすな」
窪先輩は俺に近づくと、背中をばしばしと叩きながら豪快に笑った。
窪先輩、ちょっと……いや、だいぶ痛いです。
非難の意思を瞳に込めて先輩をみるが、気付いているのか、いないのか、先輩は激励と言う名の攻撃の手を緩めない。
いや、先輩マジで痛いから……ああ!HPが減ってる!俺の視界の右上に表示されてるHP が3/5と、なっていた。このままでは後、数分でHPが0になってしまう。死因が先輩の激励、なんて嫌過ぎる!
本格的に先輩を止めようとした矢先、厨房へと続く扉の方から抑揚の少ない女性の声がした。
「あら、みんな揃っているのね」
声のした方を見ると、一人の長身の女性が立っていた。彼女は、喜多村桃花(きたむらとうか)井上先輩と同じ二年生で、副生徒会長だった人だ。身長が百七十五の俺とほぼ同じ長身に、スレンダーなボディ。ストレートの長い黒髪をポニーテールに纏め、その涼やかな顔を今は無表情に固めている。
喜多村先輩、元の世界では良く笑っていた印象があったけど、この世界に来てから徐々に感情を表に出さなくなった。まあ、誰もが健一みたいに『異世界ウエルカム』状態では無いと言う事だろう。
「丁度いいわ………夕食の準備が出来たから、夕食にしましょう」
喜多村先輩はそう言い残し一度奥へと引っ込むと、ヒメと供に料理を持って来てテーブルに並べ始めた。
夕食か……夕食が終われば娯楽の無いここでは就寝となる……詰まりは今日が終了した事を意味する。
結局、今日も収穫無しだった……レベル0から抜け出せるのは一体いつになるんだろうか……
俺はこの世界に来て、矢鱈と多くなった溜め息を盛大に吐いた。
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初めまして神尾です。読んで頂き有難うございます。
普段文章など普段書かないので、読みづらい所や文章破滅など多々有りますが、気に入っていただけたら、嬉しく思います。
投稿してから第4話まで説明文ばかりで取っ付きづらい話だと気付きました。設定を細かくし過ぎたと反省しております。
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