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第3章 人間超越編
第37話 はしゃぐ御老体……どうでも良いけど敬語の語尾に『じゃ』はおかしいと思う
しおりを挟む「【初級闇黒魔術】ソウルドレイン」
魔法を発動すると、御老体、少女、そして五人の騎士達の胸の辺りから直径1センチ程の白っぽい半透明の珠が浮き出て宙を舞い、俺の手元へと集まった。
俺は手元に集まった珠を確認し、改めて皆を見渡すと、ニヤリと笑って見せた。それを見て騎士達が一層震え上がる。
うん! 怖がらせる為に態とやった演出だったけど、効果は上々だ。
狙った演出の効果に満足し、俺はソウルドレインの説明を始める。
「今のは【初級闇黒魔術】ソウルドレインーー
そう怯える必要は無い。【超級闇術】の上位スキルである【闇黒魔術】とはいえ、所詮は初級だ。大した効果は無い」
俺の言葉に皆が不安げな視線を向ける中、御老体だけは好奇に満ちた眼差しを向けながら小さく『【超級闇術】の上位スキル……』と呟いていた。
「まず、この半透明の珠だが、これはお前達の魂の欠片だ」
「「「「「なっ!」」」」」
魂のかけらと聞き、騎士達が絶望感全開の表情で絶句する。
「まぁ、落ち着け。魂の欠片と言っても微々たるものだ。何の支障も無い」
安心させようと言ってみたが、騎士達の動揺は治らない。
まぁ、ちょびっととはいえ、魂を奪われたのだから当然かもしれない。もうちょっと落ち着いた状態で説明を聞いて貰いたかったが仕方が無い、説明を進めますか。
「さて、ソウルドレインだが、その効果は二つ。一つは、術者である俺に不利益になる様な事を考えれば、この魂の欠片が教えてくれるというものだ」
「教える……だけ?」
騎士の中の一人の呟きに大きく頷く。
「そうだ。ただし、不利益な行動をすればでは無く、考えればだ。その意味を間違えるなよ。例えば、お前達の内の一人が、俺の情報を誰かに教えようとしたとする。その場合、相手に情報を教えた時では無く、教えようと思った時点で魂の欠片は俺に知らせてくれる」
説明を聞き、騎士の一人がおずおずと口を開く。
「情報と言いましたが、それはどの程度まででしょう。私達には報告義務がありますので、何も喋らない訳には……」
成る程、ここで起こった事を上に報告しないといけないのか……
俺は暫し考え、妥協案を告げる。
「そうだな……俺はレベル0のままで、建物から出てこなかったから捕縛できなかった。そう言えばいい」
妥協案を聞き、質問をした騎士ホッとした様子で『分かりました』と頷いた。
他に質問をしてくる者が居なかったので、説明を再開する。
「さて、では二つ目の効果だがそれは、この魂の欠片を解放すると、元の魂に戻るというものだ。つまり、俺に不利益をもたらした者が何処に隠れようが、魂の後を追って来た俺に必ず見つかるという訳だ」
説明を終え、再びニヤリと笑ってやる。
《マスター、さっきから笑顔がこわーい》
笑顔に怯える騎士達と茶化すニア。
ニアさん茶化さないで下さい。こちらの情報を漏らさない為に必要な演出なんです!
分かっててやってるであろうニアに、心の中で突っ込んでいると、グッと服の裾を掴まれた。見ると、御老体が縋るようにこちらを見ていた。
「先程の魔法は……【超級闇術】の上位スキルというのは本当なのですかのう!」
「ああ、【超級闇術】には先がある」
完全に敬語になっている御老体に答えてやると、御老体は立ち上がり全身を震わせ歓喜した。
「くっくっくっ、そうか! まだ先があったか!」
笑い方は悪党そのものだが、無邪気に喜ぶ御老体に疑問が生じる。
「御老体、何がそんなに嬉しいのです?」
「くっくっ、もう学ぶべき事は無いと思っておった魔術の真髄に先があったのですぞ! 魔導師としてこれ程嬉しい事はありませんのじゃ」
ありゃ? このじいさん、権力に執着した痴れ者だと思ってだけど、違うのか? それに……
「御老体、学ぶべき事は無いと言うが、御老体は闇術と風術、それに炎術しか超級に達してないじゃないですか。他の魔術は研鑽しなかったのですか?」
「全属性に適正のある勇者と違い、儂らには適正により取得出来る魔術が限られるのですじゃ。儂の場合はそれが闇と風と炎でしたのじゃ。適正の無いものはいくら学んでも初級か、中級が限界ですからのぉ」
適正……そんな物があるんだ。確かに、御老体の魔術スキルは超級の三つ以外は初級ばかりだった。それでも、全ての魔術スキルを取得してるということはこの御老体、適正が無くても魔術を上達させられないか試したな。
この御老体がかなりの魔術取得マニアだと結論付け、俺は心の中でニヤリと笑った。
「適正……ですか。しかし、適正が無いと分かっていながらも全ての魔術スキルを身につけてる所を見ると……御老体は、かなりの探究者と見ましたが?」
「くっくっくっ、当然ですじゃ。この世に魔術の探究以上に面白い事はありませんからのぉーーおお、そうじゃ! こうはしておれん! 早く帰って闇黒魔術の研究をせねば!」
「ああっ、ちょっと待った!」
ウズウズとしながら、そそくさと帰ろうとする御老体を呼び止める。
「何ですかのう、博貴殿、儂は早く帰って研究をしたいのじゃが……」
「いや、御老体に一つ、頼み事がありまして」
「頼みごと……ですか?」
「はい。出来る範囲で良いので、健一達を気に掛けてくれませんか? ああ、井上は除外してくれて構わないので」
「何じゃ、そのような事ならお引き受けしましょう」
随分アッサリと引き受けてくれる御老体に、少し不安になる。
「随分アッサリと……御老体は健一達を引き込み、国内での立場の向上を図ってたのではないですか?」
「くっくっくっ、権力など、魔術の研究の魅力に比べれば微々たる物。それに、元々は気に食わない宰相への嫌がらせで始めた権力闘争ですからのう」
そう語る御老体の目は老獪さが窺えるものの、最初の頃にあった卑しさは感じられ無かった。
信じても……良いかな? まぁ、最悪この御老体が謀ってるとしても、魂の欠片が教えてくれるか。
良し、だったら老人への謝礼と小心者っぽい騎士達への恐怖の一押しを兼ねて、派手なのを一つ披露しますか。
「そうですか。では、健一達の擁護の謝礼として、一つ派手な芸をお見せしましょう。【超級炎術】、【超級風術】合成魔術、フレアサイクロン!」
〈だからマスター! 合成魔術を使用する時は相談をと言ってるじゃないですか!〉
魔術の発動と同時にトモの苦情が脳内に響き渡る。
あれ? もしかしてまたやっちゃった?
屋外だから大丈夫かなって思ったんだけど……
若干の後悔は遅く、直径10メートル程の紅い巨大な竜巻がログハウス前の広場に出現する。
付近に撒き散らかされた熱風の嵐の中、必死に逃げ惑う少女と騎士達。そして、
「おお!【超級炎術】と、【超級風術】の合成魔術とな! 凄い! 凄いのじゃ!」
と、大はしゃぎする御老体とで、異様な地獄絵図と化していた。
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