理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

文字の大きさ
40 / 172
第3章 人間超越編

第37話 はしゃぐ御老体……どうでも良いけど敬語の語尾に『じゃ』はおかしいと思う

しおりを挟む
   
   
   
   
「【初級闇黒魔術】ソウルドレイン」

   魔法を発動すると、御老体、少女、そして五人の騎士達の胸の辺りから直径1センチ程の白っぽい半透明の珠が浮き出て宙を舞い、俺の手元へと集まった。
   俺は手元に集まった珠を確認し、改めて皆を見渡すと、ニヤリと笑って見せた。それを見て騎士達が一層震え上がる。
   うん!   怖がらせる為に態とやった演出だったけど、効果は上々だ。
   狙った演出の効果に満足し、俺はソウルドレインの説明を始める。

「今のは【初級闇黒魔術】ソウルドレインーー
   そう怯える必要は無い。【超級闇術】の上位スキルである【闇黒魔術】とはいえ、所詮は初級だ。大した効果は無い」

   俺の言葉に皆が不安げな視線を向ける中、御老体だけは好奇に満ちた眼差しを向けながら小さく『【超級闇術】の上位スキル……』と呟いていた。

「まず、この半透明の珠だが、これはお前達の魂の欠片だ」
「「「「「なっ!」」」」」

   魂のかけらと聞き、騎士達が絶望感全開の表情で絶句する。

「まぁ、落ち着け。魂の欠片と言っても微々たるものだ。何の支障も無い」

   安心させようと言ってみたが、騎士達の動揺は治らない。
   まぁ、ちょびっととはいえ、魂を奪われたのだから当然かもしれない。もうちょっと落ち着いた状態で説明を聞いて貰いたかったが仕方が無い、説明を進めますか。

「さて、ソウルドレインだが、その効果は二つ。一つは、術者である俺に不利益になる様な事を考えれば、この魂の欠片が教えてくれるというものだ」
「教える……だけ?」

   騎士の中の一人の呟きに大きく頷く。

「そうだ。ただし、不利益な行動をすればでは無く、考えればだ。その意味を間違えるなよ。例えば、お前達の内の一人が、俺の情報を誰かに教えようとしたとする。その場合、相手に情報を教えた時では無く、教えようと思った時点で魂の欠片は俺に知らせてくれる」

   説明を聞き、騎士の一人がおずおずと口を開く。

「情報と言いましたが、それはどの程度まででしょう。私達には報告義務がありますので、何も喋らない訳には……」

   成る程、ここで起こった事を上に報告しないといけないのか……
   俺は暫し考え、妥協案を告げる。

「そうだな……俺はレベル0のままで、建物から出てこなかったから捕縛できなかった。そう言えばいい」

   妥協案を聞き、質問をした騎士ホッとした様子で『分かりました』と頷いた。
   他に質問をしてくる者が居なかったので、説明を再開する。

「さて、では二つ目の効果だがそれは、この魂の欠片を解放すると、元の魂に戻るというものだ。つまり、俺に不利益をもたらした者が何処に隠れようが、魂の後を追って来た俺に必ず見つかるという訳だ」

   説明を終え、再びニヤリと笑ってやる。

《マスター、さっきから笑顔がこわーい》

   笑顔に怯える騎士達と茶化すニア。
   ニアさん茶化さないで下さい。こちらの情報を漏らさない為に必要な演出なんです!
   分かっててやってるであろうニアに、心の中で突っ込んでいると、グッと服の裾を掴まれた。見ると、御老体が縋るようにこちらを見ていた。

「先程の魔法は……【超級闇術】の上位スキルというのは本当なのですかのう!」
「ああ、【超級闇術】には先がある」

   完全に敬語になっている御老体に答えてやると、御老体は立ち上がり全身を震わせ歓喜した。

「くっくっくっ、そうか!   まだ先があったか!」

   笑い方は悪党そのものだが、無邪気に喜ぶ御老体に疑問が生じる。

「御老体、何がそんなに嬉しいのです?」
「くっくっ、もう学ぶべき事は無いと思っておった魔術の真髄に先があったのですぞ!   魔導師としてこれ程嬉しい事はありませんのじゃ」

   ありゃ?   このじいさん、権力に執着した痴れ者だと思ってだけど、違うのか?   それに……

「御老体、学ぶべき事は無いと言うが、御老体は闇術と風術、それに炎術しか超級に達してないじゃないですか。他の魔術は研鑽しなかったのですか?」
「全属性に適正のある勇者と違い、儂らには適正により取得出来る魔術が限られるのですじゃ。儂の場合はそれが闇と風と炎でしたのじゃ。適正の無いものはいくら学んでも初級か、中級が限界ですからのぉ」

   適正……そんな物があるんだ。確かに、御老体の魔術スキルは超級の三つ以外は初級ばかりだった。それでも、全ての魔術スキルを取得してるということはこの御老体、適正が無くても魔術を上達させられないか試したな。
   この御老体がかなりの魔術取得マニアだと結論付け、俺は心の中でニヤリと笑った。

「適正……ですか。しかし、適正が無いと分かっていながらも全ての魔術スキルを身につけてる所を見ると……御老体は、かなりの探究者と見ましたが?」
「くっくっくっ、当然ですじゃ。この世に魔術の探究以上に面白い事はありませんからのぉーーおお、そうじゃ!   こうはしておれん!   早く帰って闇黒魔術の研究をせねば!」
「ああっ、ちょっと待った!」

   ウズウズとしながら、そそくさと帰ろうとする御老体を呼び止める。

「何ですかのう、博貴殿、儂は早く帰って研究をしたいのじゃが……」
「いや、御老体に一つ、頼み事がありまして」
「頼みごと……ですか?」
「はい。出来る範囲で良いので、健一達を気に掛けてくれませんか?   ああ、井上は除外してくれて構わないので」
「何じゃ、そのような事ならお引き受けしましょう」

   随分アッサリと引き受けてくれる御老体に、少し不安になる。

「随分アッサリと……御老体は健一達を引き込み、国内での立場の向上を図ってたのではないですか?」
「くっくっくっ、権力など、魔術の研究の魅力に比べれば微々たる物。それに、元々は気に食わない宰相への嫌がらせで始めた権力闘争ですからのう」

   そう語る御老体の目は老獪さが窺えるものの、最初の頃にあった卑しさは感じられ無かった。
   信じても……良いかな?   まぁ、最悪この御老体が謀ってるとしても、魂の欠片が教えてくれるか。
   良し、だったら老人への謝礼と小心者っぽい騎士達への恐怖の一押しを兼ねて、派手なのを一つ披露しますか。

「そうですか。では、健一達の擁護の謝礼として、一つ派手な芸をお見せしましょう。【超級炎術】、【超級風術】合成魔術、フレアサイクロン!」
〈だからマスター!   合成魔術を使用する時は相談をと言ってるじゃないですか!〉

   魔術の発動と同時にトモの苦情が脳内に響き渡る。
   あれ?   もしかしてまたやっちゃった?
   屋外だから大丈夫かなって思ったんだけど……
   若干の後悔は遅く、直径10メートル程の紅い巨大な竜巻がログハウス前の広場に出現する。
   付近に撒き散らかされた熱風の嵐の中、必死に逃げ惑う少女と騎士達。そして、

「おお!【超級炎術】と、【超級風術】の合成魔術とな!   凄い!   凄いのじゃ!」

   と、大はしゃぎする御老体とで、異様な地獄絵図と化していた。

   
しおりを挟む
感想 165

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...