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第4章 超越者の門出編
第55話 新勢力……ちょろいのは嫌いじゃないです
しおりを挟む外は見事な晴天で、旅立ちの日にはとても良い日だと思ったーーあいつらが居なければ。
「ねぇ、これから出掛けたいから、用があるならさっさと済ませて欲しいんだけど」
「にゃはっはっ、よく気が付いたな」
俺の呼び掛けに応じて木の陰から出て来たのは身長百五十センチ位のショートカットの女の子。赤い中国の拳法道着の様な服を着て、防具は左胸だけの胸当てに拳全体を覆う様な白銀色の手甲のみ。
武器を持ってないところを見ると、徒手空拳タイプの様だが……
見た目の年齢はティアと対して変わらない様に見えるけど、俺達側の人間かなぁ?
上機嫌でのしのしと歩いてくる少女は、そのまま道を遮る様に俺達の前に立ちはだかった。
「いやいや、君は気配を消す気は無かったでしょ」
「ん、気配ダダ漏れ」
俺とティアが突っ込むと、少女は再び笑い出す。
「にゃはっはっ、隠形は苦手でなぁ」
ふむ、自覚はあったのか。幼女の気配はティアの言う通りダダ漏れだったから、てっきりわざと見つかる様にしていたのかと思ってたけど、一応は隠れてるつもりだったんだな。
「で、もう一人の隠形が上手い方は出てきてくれないのですか」
少女から目を離し、もう一度木の陰に視線を向けながらよびかけるとーーそこから忍者が出て来ました。
「にん……じゃ?」
あまりの場違いな姿に思わず呟いてしまう。
目元しか見えない頭巾にマスク。それに鎖帷子の上に着込んだ黒装束。何処からどう見ても忍者だ。
カナねぇの後を尾行してた奴は影しか見えなかったが、成る程、影の様な格好をしてたのか……
「拙者の隠形は完璧だった筈、何故分かりました?」
忍者はキッと俺を睨み付け聞いてくるが、その声……女か!
体型があまりにもストンとしてたので気が付かなかった……
「うん、【気配隠蔽】は完璧だったね。だけど、フロラインさんの後を付けてる時に姿が見えてたから」
「何と! そうですか【千里眼】持ちでしたか……これは抜かりました」
これは抜かったと、頭をペシッと叩く忍者。なんか落語家さんみたいな動作だけど江戸好きの歴女かなんかかな?
「しかし、いくら【忍ぶ者】持ちでも、二週間近くも気配を消して張り込むなんてよくやるよね」
「【忍ぶ者】? フフッ、あんな全てにおいて中途半端なスキルと、拙者の隠形に特化した【潜みし者】を一緒にしないでもらいたい」
(【潜みし者】? アユムさん?)
[【潜みし者】とは【忍ぶ者】と同系統のスキルで、よりその身を隠す事に特化したスキルです。【忍ぶ者】の同系統のスキルは他に暗殺に特化した【暗殺者】。盗みに特化した【窃盗者】などがあります]
そうだったのか。パースンシリーズにも色々と特化型があるんだな。て事は俺の取得したパースンシリーズは全部凡庸型って事かな? まぁ俺の場合、取得スキルが多いからその全てに対応させるには凡庸型になるのは当たり前か。
しかし、よく自分のスキルをベラベラ喋るよね。あの少女もそれを咎める様子は無い。二人共自分の得意分野は完璧にこなすけど、腹芸などは出来ないタイプかな。
二人の分析をしていると、少女が一歩進み出る。
「で、お主は一体何者なのだ?」
何の前置きも無い、いきなりの質問。
ああ、やっぱり……タイプは違うけど、二人共脳筋タイプだ。何処の組織か知らないけど、脳筋二人をコンビで行動させるなよ。
これからの掛け合いに盛大な不安を感じつつ、口を開く。
「そう言う貴方方は何者なんですか?」
「ふむ、確かに名乗らずに聞いたのは礼儀に反しておったな。私達は……」
「拳王! 無闇矢鱈に名乗らないで下さい。まだこの者共の素性も知れないのに、此方の素性を明かすのは軽率です」
「ふむ、しかしのう忍び。此方が名乗らぬのにあやつらに名乗らせるのはフェアーじゃなかろう」
「ですがーー」
なんか二人で言い争いが始まったが、しかし、拳王に忍びねぇ……コードネームかなんかなんだろうけど、ちょっと厨二が入ってるぽいなぁ。少女の方もなんか御老人みたいな喋り方だし、忍者の方は自分の事を拙者とか言ってるし。
〈マスター……この人達は一体何なのでしょうか〉
トモが若干呆れ気味に念話してくる。
(《う~ん、なんか馬鹿っぽいよね》)
何と! ニアと感想が被ってしまった! 冷やかし魔のニアと被るとは……こないだのかなねぇとの口争でかなねぇの毒気に当てられたか!
《なんかマスター失礼な事考えてない?》
ニアに冷ややかに言われてしまった。どうもこの三姉妹は感が鋭くていかん。
此方が脳内で雑談していると、向こうの言い争いは決着が付いた様だ。少女が再び此方を向いて口を開く。
「此方が何者かは言えんが、お主が何者か教えてくれんか」
「……話し合いの結果がそれですか?」
自己中の極みの如き結論に軽い目眩を覚えながら尋ねると、少女は苦笑いを浮かべた。
「いやはや、自分勝手な申し出なのは分かっておるのだがな、忍びの奴がどうしても此方の情報を流すなと言い張るのでなぁ」
「偽名を名乗り素性を明かさない相手に、御丁寧に自己紹介をする人間がいると思います?」
「じゃよなぁ」
ーー暫し続く沈黙。
ああもう! 埒が明かない。脳筋だしストレートにカマをかけてみるか。
「一つ聞くけど、あんたら調停者?」
「はっ、あんな訳分からずの組織と一緒にするでない」
少女が即答してくれる。忍者も特に止める様子は無い。
うわー、こいつらちょろいぞ。この調子でもうちょっと聞き出せそうだな。
「でも、あんたら勇者だよな。勇者の生き残りは全員調停者か冒険者ギルドに所属してるって聞いたけど?」
「ふん、香奈美の奴から聞いたのか? じゃがそれは間違いじゃ。その二つの組織に所属していない勇者の生き残りも多少はおる」
少女がそこまで話した所で、忍者がハッと目を見開く。
「ちょっと拳王、喋り過ぎです!」
「むっ、そうか?」
慌てて止める忍者と自覚が無いのか、疑問顔の少女。
《ちょろい連中だねぇ》
[しかし、勇者による第三勢力ですか。流石にどれ程の勢力かは教えて貰えないでしょうね]
(だろうなぁ。何処かの国に所属してる訳では無さそうだけど……後でかなねぇ辺りに情報を流して調べて貰おう)
此方の相談が終了した頃、彼方も方針を決めた様だ。少女はファイティングポーズを取り、忍者は小刀を抜く。
「にゃはっはっ、上手く口車に乗せられた様じゃのう。喋る気が無いのなら力尽くという事になるが?」
「隠密行動が出来ない君が来ているという事は、元々そのつもりだったんでしょ」
言いながら俺達も臨戦態勢に入った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
少女の口調はぶっきら棒な感じにするつもりだったのですが、いつの間にか老人口調になってました。何故なんだろう?
えー、お気に入りが300超えました。
なんか遥か高みからこの作品を引き上げようとする冴えないおっさんの姿が見え隠れしてる様な気がしますが……入れて下さった方々有難うございます。
神尾優でした。
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