理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第57話 漸くの出発……俺の身体って生身だよね?

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「ところでティアは?」

   氷漬けの少女が死んでない事を確認し、取り敢えず安心した俺はティアの戦況をアユム達に聞いてみたのだが、

「ティアはここ」

   グットタイミングでティア登場。
   ティアは右手で襟首をつかんだ忍者を引き摺りながら、俺の元へと歩いて来た。

「ん、弱くてつまんなかった」

   心底ガッカリといった感じのティア。
   それを見て思わずため息を吐いてしまう。

(ああ、ダンジョン教育なんてやってしまったから、食事と戦闘だけが楽しみの子に育ってしまった……)
《いやいや、ティアちゃんには元々そっちの素養があったと思うけど?》
(えー、そうかなぁ、出会った頃のティアはもっと物静かな子だった様な気がするけど)
[いえ、ティアは初めから嬉々として弓を乱射してました]
〈普段は物静かで戦闘になると嬉々として弓を乱射する……どんだけ危ない子だったんですかティアちゃんは!〉
(いい子だったよぉ……今もいい子だけど)
《マスターはティアちゃんを色眼鏡で見過ぎだよ!》
〈過保護ですしねぇ〉
[もう少し厳しく躾けてもいいと思います]

   ニア、トモ、アユムに三者三様のダメ出しをされ、若干へこんでいると、『ボムッ』という音と共に視界が突然煙に覆われた。

「なっ、なんだあ?」
「んっ、煙い」

   突然のアクシデントに驚いていると、アユムから念話が入る。

[マスター、忍者の方の反応が老少女と接触。現在二人揃って森の外のデルク村方面に逃走中です]

   老少女って、確かに少女姿で老人みたいな喋り方してたけど。
   アユムの形容に突っ込みたくなるのを堪え、【上級風術】エアトルネードを俺とティアを中心に発動。周りの煙を上空に巻き上げた。
   エアトルネードがその効力を万全に発揮し、視界がクリアになったところで確認すると、道の遥か先を、素肌に鎖帷子姿で氷漬けの少女を担いで走る忍者の滑稽な姿が確認出来た。

「ん、脱皮した」

   ティアの呟きを聞きそちらの方を向くと、ティアが手に持った黒装束の上着を呆然と見つめている。

「煙玉を使用した後に空蝉の術でティアの手から逃れ、少女を回収してあっという間にあそこまで逃走。手際が良いと言うか、見事な逃げっぷりと言うか」

   見事な手際に感心していると、ティアが逃げ行く忍者を指差す。

「追わない?」

   小首を傾げ可愛く尋ねてくるティアに、首を横に振る。

「元々生かして帰すつもりだったからね。このまま放っておこう」

   彼女達も何処かの組織の人間。しかも、それなりの地位の立場にいる可能性が高い。そんな人間を殺してその組織に恨まれて敵対する位なら、興味を持たれて接触される方がマシだ。出来れば放っておいてくれるのが一番なんだけど。

「さて、取り敢えずは気になっていた予定外の監視者にもお引き取り願った事だし、今度こそ予定通り出発しますか」
「ん、行く!」

   気合い十分のティアと共に、デルク村への第一歩を踏み出した。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   行けども行けども景色は鬱蒼とした森ばかり。せっかくの晴天の爽快感も、木々が陽光を遮っている為に半減以下になってしまっている。

「何か、ダンジョンとあまり代わり映えしないな」

   薄暗い周囲に若干の湿気。本当にダンジョンと雰囲気が似ている。

「でも、敵は色んなとこから出てくる」

   ティアはその辺の藪から出てくるホーンラビットやアイアンボア、更には頭上から時折急降下してくるハンティングバードなどをワンパンで倒し、ホクホクと【解体術】を使った後に時空間収納に収めて行く。
   ちなみにアイアンボアは鉄の鎧の様な硬度と形をした皮膚を持つ体長一メートル程の猪で、ハンティングバードはランスの様な長い嘴で頭上からこちらを刺そうと急降下してくる鶴の様な姿形の鳥だ。アユムの説明ではどちらも食用らしい。

「ティア、狩りも程々にしとけよ」
「ん、でも向こうから来るから仕方がない。それに、肉はいくらあっても困らない」

   自分は正しいと言わんばかりに胸を張り答えるティア。
   食材を無限に収納出来き、更には時間停止でその食材を永遠に保存出来る時空間収納は、ティアに持たせたら危険なスキルなんじゃないか?
   大陸中の食べられる生き物を乱獲するティアを想像してしまい、軽い目眩を覚えるが、その辺はティアの良識を信じよう。

「ところで、急ぐ旅でもないから歩いてるけど、このスピードで森を抜けるのにどの位かかる?」
[大体、丸二日かと]
「丸二日!   って事は夜に睡眠を取ったら三日はかかるって事?」

   アユムの返答に目を丸くする。
   御老体やかなねぇが気軽に来てたから、近くの村からそんなに遠くないと思ってたら、結構遠かった。
   う~ん、いくら急がないっていっても、森の中で何回も野宿するのは嫌だなぁ。奥の手として、進んだ場所にポインターを設置してログハウスで休むって手があるけど、そんな事でそこら中ポインターだらけにしたくない。

[ちなみに、マスター達が本気で走れば、一時間かかりません]

   へー、そうなんだー。一時間かかんないんだぁ。そう言えば【超越者】になってから本気で走った事なかったよなー。
   とんでもないアユムの報告に、一瞬思考がフリーズし、考えが棒読みみたいになった気がした。

「それって、何キロ位出てるの?」

   【超越者】の身体能力の異常さに、興味半分、怖さ半分でアユムに聞いてみる。

[時速ですか……大体三百キロ位でしょうか。ただし、これは連続走行のスピードです。瞬発的な速さなら、もっと速いでしょう]

   三百キロって……それ生物のスピードじゃないよね。スーパーとか付く様な乗り物のスピードだよね。
   俺の身体は一体どうなってるのだろう?   木々の隙間から見える青空を見上げながら呆然と考えるが、答えが出るわけは無かった。

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