61 / 172
第4章 超越者の門出編
第57話 漸くの出発……俺の身体って生身だよね?
しおりを挟む「ところでティアは?」
氷漬けの少女が死んでない事を確認し、取り敢えず安心した俺はティアの戦況をアユム達に聞いてみたのだが、
「ティアはここ」
グットタイミングでティア登場。
ティアは右手で襟首をつかんだ忍者を引き摺りながら、俺の元へと歩いて来た。
「ん、弱くてつまんなかった」
心底ガッカリといった感じのティア。
それを見て思わずため息を吐いてしまう。
(ああ、ダンジョン教育なんてやってしまったから、食事と戦闘だけが楽しみの子に育ってしまった……)
《いやいや、ティアちゃんには元々そっちの素養があったと思うけど?》
(えー、そうかなぁ、出会った頃のティアはもっと物静かな子だった様な気がするけど)
[いえ、ティアは初めから嬉々として弓を乱射してました]
〈普段は物静かで戦闘になると嬉々として弓を乱射する……どんだけ危ない子だったんですかティアちゃんは!〉
(いい子だったよぉ……今もいい子だけど)
《マスターはティアちゃんを色眼鏡で見過ぎだよ!》
〈過保護ですしねぇ〉
[もう少し厳しく躾けてもいいと思います]
ニア、トモ、アユムに三者三様のダメ出しをされ、若干へこんでいると、『ボムッ』という音と共に視界が突然煙に覆われた。
「なっ、なんだあ?」
「んっ、煙い」
突然のアクシデントに驚いていると、アユムから念話が入る。
[マスター、忍者の方の反応が老少女と接触。現在二人揃って森の外のデルク村方面に逃走中です]
老少女って、確かに少女姿で老人みたいな喋り方してたけど。
アユムの形容に突っ込みたくなるのを堪え、【上級風術】エアトルネードを俺とティアを中心に発動。周りの煙を上空に巻き上げた。
エアトルネードがその効力を万全に発揮し、視界がクリアになったところで確認すると、道の遥か先を、素肌に鎖帷子姿で氷漬けの少女を担いで走る忍者の滑稽な姿が確認出来た。
「ん、脱皮した」
ティアの呟きを聞きそちらの方を向くと、ティアが手に持った黒装束の上着を呆然と見つめている。
「煙玉を使用した後に空蝉の術でティアの手から逃れ、少女を回収してあっという間にあそこまで逃走。手際が良いと言うか、見事な逃げっぷりと言うか」
見事な手際に感心していると、ティアが逃げ行く忍者を指差す。
「追わない?」
小首を傾げ可愛く尋ねてくるティアに、首を横に振る。
「元々生かして帰すつもりだったからね。このまま放っておこう」
彼女達も何処かの組織の人間。しかも、それなりの地位の立場にいる可能性が高い。そんな人間を殺してその組織に恨まれて敵対する位なら、興味を持たれて接触される方がマシだ。出来れば放っておいてくれるのが一番なんだけど。
「さて、取り敢えずは気になっていた予定外の監視者にもお引き取り願った事だし、今度こそ予定通り出発しますか」
「ん、行く!」
気合い十分のティアと共に、デルク村への第一歩を踏み出した。
⇒⇒⇒⇒⇒
行けども行けども景色は鬱蒼とした森ばかり。せっかくの晴天の爽快感も、木々が陽光を遮っている為に半減以下になってしまっている。
「何か、ダンジョンとあまり代わり映えしないな」
薄暗い周囲に若干の湿気。本当にダンジョンと雰囲気が似ている。
「でも、敵は色んなとこから出てくる」
ティアはその辺の藪から出てくるホーンラビットやアイアンボア、更には頭上から時折急降下してくるハンティングバードなどをワンパンで倒し、ホクホクと【解体術】を使った後に時空間収納に収めて行く。
ちなみにアイアンボアは鉄の鎧の様な硬度と形をした皮膚を持つ体長一メートル程の猪で、ハンティングバードはランスの様な長い嘴で頭上からこちらを刺そうと急降下してくる鶴の様な姿形の鳥だ。アユムの説明ではどちらも食用らしい。
「ティア、狩りも程々にしとけよ」
「ん、でも向こうから来るから仕方がない。それに、肉はいくらあっても困らない」
自分は正しいと言わんばかりに胸を張り答えるティア。
食材を無限に収納出来き、更には時間停止でその食材を永遠に保存出来る時空間収納は、ティアに持たせたら危険なスキルなんじゃないか?
大陸中の食べられる生き物を乱獲するティアを想像してしまい、軽い目眩を覚えるが、その辺はティアの良識を信じよう。
「ところで、急ぐ旅でもないから歩いてるけど、このスピードで森を抜けるのにどの位かかる?」
[大体、丸二日かと]
「丸二日! って事は夜に睡眠を取ったら三日はかかるって事?」
アユムの返答に目を丸くする。
御老体やかなねぇが気軽に来てたから、近くの村からそんなに遠くないと思ってたら、結構遠かった。
う~ん、いくら急がないっていっても、森の中で何回も野宿するのは嫌だなぁ。奥の手として、進んだ場所にポインターを設置してログハウスで休むって手があるけど、そんな事でそこら中ポインターだらけにしたくない。
[ちなみに、マスター達が本気で走れば、一時間かかりません]
へー、そうなんだー。一時間かかんないんだぁ。そう言えば【超越者】になってから本気で走った事なかったよなー。
とんでもないアユムの報告に、一瞬思考がフリーズし、考えが棒読みみたいになった気がした。
「それって、何キロ位出てるの?」
【超越者】の身体能力の異常さに、興味半分、怖さ半分でアユムに聞いてみる。
[時速ですか……大体三百キロ位でしょうか。ただし、これは連続走行のスピードです。瞬発的な速さなら、もっと速いでしょう]
三百キロって……それ生物のスピードじゃないよね。スーパーとか付く様な乗り物のスピードだよね。
俺の身体は一体どうなってるのだろう? 木々の隙間から見える青空を見上げながら呆然と考えるが、答えが出るわけは無かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
お気に入りが400を超えました。入れて下さった方々有難うございます。
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる