理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第100話 お披露目式の朝……レリックさん、その策略はあんまりです

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   お披露目式当日。
   部屋に差し込んでいた日射しが遮られ、その違和感で目が覚めてゆっくりと自室のベッドから上半身を起こすと、ベッドの傍にティアが立っていた。

「……ティアおはよう」
「ん、おはよ」

   条件反射で朝の挨拶をすると、ティアは頷きながら挨拶を返してくる。
   ……ティアが何でここにいる?
   昨夜の工作活動で遅くなった為に睡眠時間があまり取れなかったせいか、頭が良く回らない。
   首だけをそちらの方に向けて、半分しか開かない目でティアを見る。

「ティア、なんか用か?」
「ん!   食材が欲しい」

   ……やけに元気な返事だな。睡眠時間は俺と同じだろうに……
   再び倒れこもうとする上半身と、閉じようとする瞼に耐えながら、ティアの申し出の意味を理解しようと必死に頭の中で反芻する。
   食材……食材ねぇ……ああ、朝食の準備をしてくれるのか……朝食……朝ごはん……朝……朝ぁ!
   上手く頭が回らないなりにそこまで思考ロジックを組み立て、俺は無理矢理カッと目を見開いた。
   そうだ!   今日はお披露目の日だった。工作を施した以上、その成果はちゃんと見届けないと。
   慌てて【ワールドクロック】を確認すると、時刻は七時十五分をさしていた。
   昨日帰って来たのが五時前位だから、二時間ちょいの睡眠時間か……
   まあ、その辺は覚悟の上で仮眠を取ったのだから仕方がない。再びティアの方に目を向けると、ティアは両手でお椀を作る様な形で自分のお腹の前に差し出し、食材を無言で催促していた。

「ああ、食材だったな。どんなのが欲しい?」
「んー……野菜はここにあるからいい。味付けするのが欲しい」

   味付け?   ああ、調味料ね。
   俺は時空間収納からめぼしい調味料を引っ張り出しながら、ティアに今日の予定を聞いてみる。

「今日、俺はお披露目式を見に行くつもりだけど、ティアはどうする?」
「ん~……ティアはいい。ティアは料理をいっぱい作って、料理でひろにぃを超える!」

   鼻息荒くそう答えるティアに、『俺の料理なんてスキル頼みで底は浅いんだけどなぁ』と思いつつも、苦笑いを浮かべながら味噌、醤油、胡椒やわさび、更に香辛料などを数点渡してやる。すると、ティアは笑顔を浮かべて部屋から出て行った。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

「あら、おはよう」
「おはよう、かなねぇ」

   ギルドマスターの部屋に入ると、かなねぇがこたつで食事を取っていた。メニューはパンとサラダとスープ。この世界では一般的なメニューなのでティアが作った物ではないだろう。
   かなねぇの向かい側にもう一組食事が準備されていたので、そこに座り朝食に手を付ける。

「いよいよ今日ね」

   パンをちぎったところで、かなねぇが話題をふって来たのでパンを口に放り込みながらコクンと頷く。

「勝算はあるの?   龍次さんは問題無いって、全く動じてなかったけど」
「あの人は信じてると言っておきながら、失敗した時の為に何かしらの工作をしてそうだけどね」
「アッハッハ、確かにそうかも」

   無邪気に笑うかなねぇだが、その目の下には隈が出来ていた。
   何だかんだ言ってもこの人も色々と忙しかったようだ。

「勝算は……まあ、大丈夫じゃないかな。やれる事はやったから、後は天頼みって所はあるんだけどね」
「ふむ……他ならぬけんちゃんとヒメちゃん絡みだから、ひろちゃんが手を抜いてないのは信用出来るけど、そっか、後は天頼みか……」

   かなねぇが心配そうな顔で天を仰ぐ。
   恐らくは、この世界に来て初めて交わすかなねぇとの裏の無い会話。
   懐かしく、温かい気持ちになるが、その話題が健一とヒメの命運を左右する内容だけに、完全にマッタリは出来ない。

「で?   今日はその成果を確認しに行くの?」

   目線をこちらに戻し、そう聞いてくるかなねぇに静かに頷いて見せる。

「一応、俺の発案した作戦だからね。その結果くらいは自分で確認するさ。ところで、今朝はレリックさんを見かけないけど何処に行ったの?」

   本当に何かしらの工作をしてるのではないかと思い、レリックさんの動向を確認すると、かなねぇが曖昧な笑みを浮かべる。

「んー……龍次さんなら、ティアちゃんに五時頃に叩き起こされたらしいわ。昨日は二時頃まで私の仕事を手伝わせてたから、流石の龍時さんも結構堪えてるみたい」

   ……そっか、今朝のティアはやけに元気だと思ったら、寝てなかったのか……
   ティアの元気っぷりと、レリックさんに御愁傷様の意味合いを込めて苦笑いを浮かべつつ、俺はかなねぇと他愛の無い会話を進めながら朝食を済ませた。

   ーーガチャ!

   扉が勢い良く開かれたのは食事が終わった直後。
   何事かと俺とかなねぇが視線を向けると、其処には朝食を乗せたお盆を持ったティアとレリックさんが笑顔で立っていた。
   心なしか、レリックさんの笑みが黒く感じるが……
   不安に感じた俺は咄嗟にかなねぇにアイコンタクトを送った。

   ーーかなねぇ、どういう事?   ーー
   ーー知らないわよ!   この朝食だって、龍次さんが準備したって持って来たギルド職員の子が言ってたものーー

「おっほん」

   幼馴染の特権、アイコンタクトと表情だけで意思の疎通を交わす俺達に、レリックさんがわざとらしい咳払いをする。

「今朝はティア殿が腕によりを掛けて朝食を拵えてくれました。博貴殿にも調味料をいただいたお陰で、素晴らしい出来になっていますよ」

   とても楽しそうに、ティアが頑張って作った事を強調するレリックさんと、自慢気に料理を掲げて見せるティア。
   ティアは純粋に料理を食べてもらいたい様だが、どうもレリックさんの笑みの陰に『私ばかりが不幸になるのは許せません』という意味合いが見え隠れしている様な気がする。

   ーーかなねぇ……ーー
   ーーどうやら、龍次さんに嵌められたみたいねーー
   ーー胃袋の空きはありそう?   ーー
   ーー無くても、あんなティアちゃん見たら食べられないなんて言えないじゃない!   ーー
   ーーだよね。覚悟を決めるしかないか……ーー

「では、ティア殿が作った極上の朝食、じっくりとご賞味下さい」

   ティアの自信ありげな満面の笑みを背景に、芝居掛かった口振りと仕草で目の前に置かれていく料理を前にして、俺とかなねぇは引きつった笑みを浮かべながら箸を持った。
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