理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第114話 宴は終わりに差し掛かり……かなねぇに真顔になられると緊張します

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   話は序盤のダンジョン突入辺りから、いきなり質問が飛び出すことになった。

「時空間移動ですか?」

   俺の説明に対し、そう確認してきたのはレリックさん。

「ええ、視認出来る場所へのショート転移です」
「それはまた……チートが過ぎるよね」

   健一が俺の説明を聞いて呆れた様に声を出す。
   本来は面倒だからこの辺は飛ばして話したかったんだけど、窪さんの『そう言えば、博貴達はどうやってダンジョンに入ったんだ?   上には宰相の手の者が沢山いただろ』という疑問を受け、仕方無くそこから説明する羽目になっていた。

「それで、石を投げて草むらに視線を集中させたところで、ダンジョン入り口に転移して、後はバタバタと地下三階の健一達の元へ……」
「バタバタって……確かにアンデット自体は弱かったけど、数が凄かったでしょ。そんなに簡単に抜けられたの?   五人いた私達でも地下三階に行くまで五時間位はかかったのよ」

   俺の話が大雑把過ぎたのか、桃花さんが適当すぎよって感じで詳しい話を求めてくるが、実際、バタバタって感じだったんだよな。

「アンデットは弱いから数がいても烏合の集。ティアとひろにぃなら余裕……」

   どう説明しようかと考えてると、横からティアが口を出し、えへんと胸を張る。
   桃花さんはティアの解説が気に入ったのか、『そうかー、凄いわね』と笑顔でティアの頭を撫でていたので、ほのぼのとした雰囲気を醸し出し始めた二人は余所に置いといて、俺は話を続けた。

「それで、途中で一人逃げてきた井上の奴を脇道に隠れてやり過ごした後で、その先の広間で健一達と合流」
「あの時、僕はティアちゃんの弓で助けられたんだよね」
「そうそう……って、そう言えばひろちゃん。あの時私達を包んだ優しい光の魔法って何だったの?」
「ああ、あれはサンクチュアリだよ」

   ヒメの質問に簡潔に答えると、その言葉を聞きかなねぇとレリックさんが目を見開いた。

「はあ?」
「サンクチュアリ……ですか?」
「あの魔法は凄かったね。周りを囲んでたアンデットが一瞬で消滅して、更に僕達の体力も回復させていたもの」
「うん。私と同じ【光魔術】の系統だと思うけど、なんか凄い聖なる力を感じたよ」

   驚いているかなねぇ達とは対照的に、健一とヒメはあの時の事を思い出し、笑みを浮かべながら素直に賞賛の言葉を上げる。

「そりゃ凄いでしょうよ。サンクチュアリと言ったら、【聖神魔術】の神級の筈だもの」
「【聖神魔術】?   【光魔術】とは違うの?」

   かなねぇの言葉に、ヒメが首を傾ける。そんなヒメの素朴な疑問に、かなねぇは小さくため息を吐いた。

「ええ、違うわよ。【聖神魔術】は【光魔術】から派生する【聖魔術】の更に上位のスキル。実際、取得したという人間は、この大陸の歴史でも数える程しかい筈よ。それを神級まで上げたとなると、私の知ってる限りでは、調停者のあの嫌味女くらいね」

   かなねぇの話を聞いて『へー、凄~い!』と素直に喜んでいるヒメを尻目に、かなねぇはこちらに視線を向けてきた。

「ひろちゃん、神級に辿り着いてたんだ」
「まあ……ね」

   何か含みのある言葉を投げかけてくるかなねぇに、苦笑して言葉を濁しながら俺は話を続ける。

「で、健一の元に合流して、【時空間魔術】の時空間転移でここに健一達を連れてきたってわけ」

   さらっと話を締めくくった俺に、やはりというか当然というか、かなねぇはジト目的視線を向けつつ口を開く。

「ふむ……そもそも、その【時空間魔術】とやらはどうやって取得したの?   魔族や天使族の中にそういう転移魔法を使う者がいるってのは聞いたことがあるけど、人がそれを使ったって話は聞いた方が無いわよ」
「私達が調べているスキルの取得工程の中にも、その様な種の魔法はありませんでしたねぇ」
「ん~、詳しく話すわけにはいかないけど、実はある人に伝授してもらったんだよ。スキルポイント一万と引き換えに」

   かなねぇとレリックさんの疑問に答えると、二人は眉間に皺を寄せた。

「ある人?」
「聞かない方がいいんじゃないかな。今後の為にも」

   知らない方が良いってことは確かにある。特に彼の人の場合は、聞いた事で縁を作ってしまう可能性もあるからなぁ。
   という事で名を伏せる俺を訝しげに見ていたかなねぇだったが、俺の性格を知り尽くしているせいだろう、問い詰めても白状しないと理解し、盛大に息を吐いた。

「分かったわ。そこは聞かないけど、その人に【時空間魔法】を伝授してもらったのね」
「そういう事」
「ふむ、しかし、人間種には取得できない筈のスキルを与える存在ですか……博貴殿が【超越者】だからこそ、可能だったという可能性もありますね」

   かなねぇの信じられないといった感じの言葉に、レリックさんも顎に手を当てて推察し始める。
   そうか、【超越者】だから多少の無理も押し通せるっていう考え方も出来たのか。

[その辺の可能性については、じっくりと検証してみます]

   レリックさんの推察から出た可能性を、アユムが検証してくれるそうだ。
   どのくらい時間がかかるか分からないけど、のんびりと待つ事にしよう。

「……あの~……」

   俺とかなねぇとレリックさんだけで物知り顔で話し込んでいると、蚊帳の外といった感じになっていた健一がおずおずと手を上げた。

「ん?   どうしたのけんちゃん」
「事前情報が無いせいか、僕達には話の内容がちんぷんかんぷんなんだけど、取得にスキルポイント一万とか、【超越者】とか、意味が分からなすぎるよ」
「あれ?   ひろちゃん、けんちゃん達にひろちゃんの今の状況、教えてないの?」

   健一の訴えを聞き、かなねぇがこちらに視線を向けてくる。しかし、それについてはこちらに非がある訳じゃないからね。

「救出時はバタバタしてたから、そんな暇は無かったんだよ」
「ああ、それで」

   反論すると、かなねぇは直ぐに引いてくれた。なので、俺は健一たちに視線を移しつつ口を開く。

「まぁ、これからパーティを組むつもりだし、今説明するよ」

   ⇒⇒⇒⇒⇒

「……あり得ない……何そのオリジナルスキル。ゲームバランス崩壊しまくりじゃないか!   二周目プレイの方がまだ可愛げがある!」

   俺のオリジナルスキルの説明を聞いた健一は、頭を抱えていた。ヒメの話によると城にいる間、暇さえあればずっと、この先得られるスキルポイントをどう割り振るか、色々と試行錯誤していたらしい。それが、俺とパーティを組めば取得出来るスキルポイントが一レベルにつき五十八に跳ね上がると知り、『今までの僕の苦労は一体何だったの』と呆然としていた。

「まあまあ、けんちゃん。損してる訳じゃないんだから良いじゃない」
「そうだね。それだけのスキルポイントがあれば、窪さんの進化系スキルの取得も可能かもしれないし」

   ヒメに諭され復活した健一がそう呟くと、レリックさんが窪さんの方へと振り向いた。

「窪殿のレベルは今幾つなんですか?」
「百三十八です」

   窪さんが答えると、レリックさんは少し考え込む素振りを見せた。

「ふむ、そのレベルから【転生者】を目指すとなると、結構ギリギリ……しかし、スキルポイント取得カリキュラムを組めば何とか行けますかねぇ」
「スキルポイント取得カリキュラム?   それは一体どのようなものなのです?」

   レリックさんの言葉に窪さんが反応を示す。

「元々は調停者の皆さんが新人勇者の早期育成の為に行なっていた手法なんですが、六つの国にあるログハウスを全て回るのですよ。そして、それぞれのダンジョンの階層ボスを倒し、そのボーナスでスキルポイントを得ていく。そうする事で、新人に早くに【転生者】を取得させるわけです」
「各国のログハウスを回る……そんな事出来るんですか?」

   その内容に興味を示した健一が身を乗り出すと、レリックさんは静かに頷いて見せる。

「可能ですよ。かつてのその国の勇者がいれば、ログハウスには入れますからね」
「かつての勇者って……」
「御心配為さらずとも、冒険者ギルドには『水の国』を除く勇者が揃っております。それぞれが各国のギルドマスターとして忙しい身ですのであまりお付き合いは出来ませんが、それも博貴殿の【時空間魔術】があれば解決する事ではないでしょうか」
「俺がログハウスまで行ってポインターをセットして、ギルドマスターを時空間転移で連れてくるって事ですか?」
「ええ、そうしていただくとこちらとしては助かるのですが……」
「まあ、良いですけど……じゃあ、今後の予定は健一達とログハウス巡りって事になるかな」
「ちょっと待って」

   この先の展開も見え俺がそう宣言すると、それにかなねぇが待ったをかける。

「何?   かなねぇ」
「実は、各国のログハウスを回るのにこちらのギルドマスターを協力させる代わりに、ひろちゃんにお願いがあるの」

   そう言うかなねぇの表情は、とても真面目なものだった。

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