理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第116話 餌……罠と分かっていても喰いつきます

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「国の強い人を連れて、って訳にはいかないの?」

   俺の提案に、かなねぇは難しい顔でかぶりを振る。

「勇者レベルなら兎も角、騎士レベルじゃあ、あのダンジョンの下層では通用しないわよ。質を量でカバーしても、パーティは六人までって決まっているから、それ以外の人達が敵を倒しても経験値は得られないしね」
「だったら、高レベルの冒険者を……は無理か」

   そこまで言って、勇者の事は国の最重要機密だったのを思い出す。

「その通りよ。冒険者に弱い勇者の情報なんて漏らすわけにはいかないの」

   その冒険者の為の組織の長の言葉としては如何かと思うが、確かに情報漏洩の可能性から考えたら、冒険者に頼むのはいささか心配ではあるか……
   かなねぇと言葉のやり取りをしていると、俺が自分たちを差し置いて『水の国』に行く事に抵抗を感じていると思ったのだろう。健一が口を開いた。

「僕らのレベル上げなら、高レベルの窪さんに付いて貰えば問題無いと思うし、博貴とパーティーを組めば、離れていてもその効果は発揮出来るんだよね」

   健一の言葉にコクリと頷いて見せると、それにヒメが言葉を続ける。

「だったらひろちゃんはかなねぇを助けてあげて。折角逢えたのに、また離れるのは寂しいけど、かなねぇも困ってるみたいだし」
「そうそう。博貴君が『水の国』の教官をやってる間に、私たちは少しでも博貴君に追いついて見せるから、私達の事は気にしないで」
「うむ。説得力は無いかもしれんが、健一達は俺が見てるから心配するな。俺達の事よりも、『水の国』の問題でこの世界に戦争が起こることの方が心配だからな」

   ヒメの言葉に、桃花さんと窪さんが続き、流れが完全にかなねぇ寄りになってる事に俺は苦笑いを浮かべる。
   確かに戦争が起こるというのは勘弁願いたいし、健一達が心配だという懸念も確かにある。しかし、俺が渋っているのはそれだけではないのだ。ハッキリ言って今回の話、俺に何の得もないんだよな。
   世界の戦争回避って点で考えれば、手を貸すのもやぶさかではない。だけど、この世界のどの国にも属してない俺が無償でソレをやるのは何か違う気がする。

「そう言えば、『水の国』には希少な素材であるアクアクリスタルがありましたねぇ……」

   俺がそんな事を考えていると、今まで黙っていたレリックさんがぼそりと呟く。

「ああ、あまりにレベルの高い素材だったから、誰も加工出来なかったっていうアレ?   でも、あれは確か、『水の国』の国宝になってたわよね」

   レリックさんの呟きに、かなねぇが芝居掛かった返答を返すが、そんな些細な事はどうでもいい。
   ……誰も加工出来なかった素材だと!

(アユム!)
[アクアクリスタルは青みがかった透明な石で、伝説級以上の武具に偶に使われている素材です。素材自体に水の属性を持っており、その硬度はミスリル以上、オリハルコン以下、といったところでしょうか]

   なんと!   ミスリルより上の素材ですと!

「それ……どの位の量があるの?」
「う~ん……確か、五十センチ位のトランプのダイヤ型みたいな形だったかしら」

   俺が餌に喰いついたのが嬉しいのか、かなねぇは口の端をヒクつかせながらも、記憶を手繰る様に視線を上に向けて答える。
   ふむ……量的には武器一つ分……いや、刃の部分だけアクアクリスタルを使い、柄の部分なんかはミスリルを使えば二、三本は作れるか?
   未知の素材を知り、ウキウキしながら取らぬ狸を皮算用していると、レリックさんが駄目押しに悪魔の囁きを呟いてくる。

「欲しいのですか?   アクアクリスタル。国宝とは言え自分達では使えない素材、国の窮地と引き換えなら成功報酬として貰えるかもしれませんが……」
「アクアクリスタルを貰える確約が取れるなら、引き受けましょう」

   罠と承知で即答で乗っかると、レリックさんは満面の笑みを浮かべながら頷き、かなねぇの方へと視線を向けた。

「分かったわ!   その旨を直ぐに『水の国』のギルドに通信球で確認するから待ってて」

   かなねぇはそう言うと立ち上がって窓際の机の方へと向かった。そんなかなねぇを横目で見ていると、アユムから念話が入る。

[アクアクリスタルは分類的には石なので、加工するには【石工】のスキルが必要になりますが……]
(ああ、そうだね。スキルポイントには余裕があるし、至高まで上げちゃおう)

   即断即決でスキルを取る事を決め、【至高の石工職人】をレベル10で取得する。

[今回のスキル獲得で使ったスキルポイントは290。残りのスキルポイントは2970です]

   アユムの報告に、俺は静かに頷く。
   そんだけあれば、緊急時に必要なスキルを取るのに問題は無いだろう。
   久し振りに有意義なスキルを取った気がし、満足していると、通信し終わったかなねぇがこちらに視線を向けてくる。

「ひろちゃん。『水の国』のギルドマスターが女王に確認を取るって話なんだけど、ちょっと時間がかかるみたいなんだよね」
「かかるってどんくらい?」
「んー、最低でもニ、三日。流石に報酬が国宝となると、決断に時間がかかるみたい。どうする?   こっちとしては結果が出る前に『水の国』に出発してくれるとありがたいんだけど……」

   かなねぇの提案に俺は首を横に降った。

「出発は報酬が確実になってからにするよ。こっちも色々とやる事があるし」
「やる事?」
「うん。差し当たってはーー」

   俺はそこまで言うとティアの方へと視線を向ける。

「ティアーー」
「やっ!」

   ……名前を呼んだだけ拒絶されてしまった……相変わらず勘が鋭い……

「えーとティアーー」
「ティアはひろにぃの相棒。だからひろにぃと何時も一緒!」

   強い眼差しで俺を見据え、力強くそう宣言するティアに二の句が告げなくなりそうになるが、俺もここで引くわけにはいかない。

「ティア。ティアには俺の大事な友達を守ってもらいたいんだ、頼めないかな」

   優しくそう諭すと、ティアは俯きグッと口を尖らせるようにつぐむ。そのジッと我慢するような姿に、健一とヒメが耐えられなくなったのか俺に耳打ちしてきた。

「ねえ、博貴。別に僕達にティアちゃんを同行させなくても……」
「うん。私たちなら大丈夫だから……」

   俺も鬼では無い。出来ればそうしたいのだが、そう出来ない理由がある。それはーー

「ティアを健一達に同行させないと、時空間転移を使える奴がいなくなるんだけど?」
「「あっ!」」

   俺の言葉に、二人は同時に声を上げる。
   そう。健一達の強化計画には時空間転移が必要不可欠なのだ。各国のログハウスに入った後、ログハウス内にポインターをセットしとかなければ、一度外に出るとまた、その国の勇者に開けてもらわなければ中に入らなくなるし、忙しいというギルドマスターに、現地に徒歩で来てもらわなければならなくなる。
   その事実に気付いた健一達と俺がティアに視線を向けて沈黙していると、レリックさんの悪魔の囁きが再び発動する。

「そう言えば、姫野殿は料理が得意だとか……姫野殿に同行すれば、ティア殿はもっと沢山の料理を覚えられるのではないでしょうか」

   レリックさんの悪魔の囁きを聞いたティアが顔を上げヒメへと視線を向ける。その目は大きく見開かれ好奇に満ちていた。

「料理……得意?」
「えっ!   ……ええ、料理は好きだけど……」
「じゃあ、ティアに教えて!」
「……うん。そのくらい構わないよ」

   こうして、最初にして最大だと思われた難関は、あっさりと解決した。 
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