理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第5章 『水の国』教官編

第148話 食卓にて……ガウレッドさん、行儀が悪過ぎです

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「えっ、もう『火の国』のダンジョンを攻略したの?」
「……うん」

   俺の驚きの声に、歯切れの悪い返事を返す健一。
   ログハウスのリビングでケーキの出来上がりを待つ間に健一達と雑談していたのだが、『火の国』のダンジョンの攻略が完了したと言うのに皆は浮かない表情を浮かべている。

「確かに攻略はしたんだけどね。ティアちゃん、空気を読めないから……」
「いや、ティアは自分の役割を果たしただけだ。責められるものではないだろ」

   苦笑いをする桃花さんに、窪さんがティアを擁護する言葉を投げかける。
   状況が把握出来ないけど、何と無く察する事は出来きた。ティア、良く自分の都合で行動するから……
   ケーキは『火の国』のダンジョン攻略のお祝いに作ろうとヒメが言い出したらしい。ヒメなりにこの空気を払拭したかったんだろう。

「ふむ……何の事かは知らんが、ティアは悪くないな。ティアは愚直に武の道を進める奴だ。その様な者が悪さをするわけがない」

   俺の隣で腕を組み椅子に踏ん反り返っているガウレッドさんが、内容も分かっていないであろう会話に、自分の考えを押し込んでくる。
   ああ……貴方は黙っていて下さい。話が収集つかなくなってしまう。

「え~と……誰?」

   何知らぬ顔で俺とともに現れ、皆が突然の俺の登場に驚いて歓迎してくれてる間に我が物顔で椅子に座ったガウレッドさんに、今までは触れていなかった健一がとうとうヒメと同じ反応を示す。

「……超魔竜」
「へっ?」
「はい?」
「なにぃ!」

   俺の返答に、健一と桃花さんは間の抜けた返事を返し、窪さんが驚きの声を上げる。

「え~と……超魔竜って火竜山の主の?」
「そう。その超魔竜」
「クッカッカッカッ!   畏る必要はないぞ。俺は寛大だからな、プライベートで不遜な態度を取られても多めにみてやる」

   自分の存在が驚かれるのが気持ち良いらしい。ガウレッドさんは上機嫌でそう健一達に告げる。健一は『ありがとうございます』と取り敢えずの返事を返して直ぐに俺の耳元に顏を近付けた。

「本物?」

   小声で聞いてくる健一に俺は静かに頷く。

「……超魔竜って、触る者を皆殺してしまう残忍な性格って噂を聞いたけど」
「うむ。俺も、どんなに鍛えようとも人の身では到達出来ない強さを持ち、目につく者を全て葬り去ると聞いたぞ」

   俺と健一のヒソヒソ話に桃花さんと窪さんも入ってくる。
   しかし、ガウレッドさんってそんな物騒な噂が立っているのか……まぁ、かるく追っ払ってって頼んだ『火の国』の軍にあれ程の被害を与えるような人だし、過去に何をやったか知らないけど、そんな噂が立っても仕方がないか……
   正体を知り少し精神的に距離を置き始める三人に、俺は苦笑いを浮かべる。

「そこまで見境無しじゃないよ……多分」
「多分って何!?」
「いや……俺も俺達以外の人間がガウレッドさんに話し掛けた時の反応を見たこと無いから……」

   俺の言葉に不安顔の健一に正直に話すと、健一は頬を引きつらせる。

「出来たよ~」

   結局、健一たちの不安を解消出来ないままに、ヒメとティアがフルーツをふんだんに使った美味しそうなケーキをワンホールずつ持って厨房から姿を現わした。

「おおっ、待っていたぞ」

   周囲の自分に対する敬遠の眼差しなど歯牙にもかけず、上機嫌でケーキに目が釘付けになっているガウレッドさんは、ケーキがテーブルに置かれた瞬間、ティアのケーキが乗った皿を自分の下へと引き寄せた。

「どれどれ……」

   皿を持ち上げ直接ケーキに齧り付こうとしたガウレッドさんだったが……

「独り占めはメッ!」

   ティアにチョキで目を突かれ『ぐおっ!』とその場で仰け反った。
   それでもケーキを離さなかったのはティアのケーキを台無しにしたくなかったからか、それとも単なるケーキへの執着なのか……
   ガウレッドさんに対するティアの突然の仕打ちに、ヒメは困ったように笑みを浮かべ、健一達は目と口をこれでもかと言うくらい大きく開き言葉にならない絶叫を上げる。
   そんな阿鼻叫喚とした空気の中、ガウレッドさんは仰け反った体を戻し、涙目でティアを見る。

「目はいかんと言ってるだろうティア」
「ん、みんなで食べるの!」
「む……むぅ……」

   十歳くらいの少女に諭され、渋々ケーキをテーブルに戻す大陸最強のおっちゃん。なかなかシュールな光景だ。

「じゃあ、切り分けるね。ティアちゃん、紅茶の準備をお願いしていい?」
「ん」

   ティアの信じられない行動に、未だに衝撃で固まってる健一達を尻目に、ヒメはそれぞれのケーキを八当分に切り分け始め、ティアは厨房に戻っていく。

「あっ、俺も手伝おうか?」
「ひろちゃんは今日はお客様だからいいよ。あっ、ティアちゃん!   みんなの分のお皿とフォークもお願い!」

   唯一平常心を保っている俺の申し出を断りヒメが厨房へと向かって叫ぶと、厨房の方から『んっ!』と声が帰ってくる。
   ふむ、健一達の反応でちょっと心配になったけど、ティアはちゃんと健一達に馴染めている、のかな?

「ティアはちゃんとしてる?」

   少し浮かせた腰を再び下ろし、ガウレッドさんが凝視する中、苦笑いを浮かべながらケーキを切り分けていくヒメに話し掛ける。

「ん~、少し困った行動をする事もあるけどまだ、子供だしね。その辺は仕方がないんじゃないかな。いい事と悪い事の分別は少しづつ教えていけば良いと思うよ。どうせ、ひろちゃんは甘やかしてばっかりだったんだろうし」
「うっ……否定は出来ないかも……」

   いつもアユム達から言われている事を言われ、ヒメに笑われながら言葉に詰まっていると、お盆にティーセットと皿、フォークを乗せたティアが戻ってくる。
   ティアがお盆をテーブルに乗せると、ヒメは『ありがと』とティアを労い、切り分けたケーキを皿に乗せそれぞれの前に置き、紅茶を淹れて配り終わった後で自分も席に着く。
   みんなの前にはティアのケーキとヒメのケーキが一つづつと紅茶が置かれた。人数は七人、ケーキは八当分されているので二切れのケーキが余っているのだが、それをガウレッドさんがガン見していた。

「良かったらどうぞ」
「おおっ、そうかすまんな」

   苦笑しつつヒメが薦めるとガウレッドさんはホクホク顔で残ったケーキを自分の皿に移し始めた。
   その様子を見ていた健一が俺の肩をチョンチョンと突く。

「何?」
「あれ、本当に超魔竜?」
「噂って当てにならないって良い見本だろ」
「……本当だね」
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