最弱の僕が気づいたら最強に祭り上げられてたけど、頑張って現実にしてみせる

小暮悠斗

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理想郷編

真夏のビーチとケモノっ娘②

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 ビーチの喧騒から離れたくて、人の往来の少ない区域にきていた。

「冬夜……こんなところに連れ込んで……私は、いつでも受け入れOKだからね」
「のぞみちゃん。私と先輩もいるってこと忘れないでよ」
「真白は帰ってもいいよ」
「冬夜くんと二人きりにさせるわけないでしょ!?」

 などと結局騒いでいる。
 今回の合宿旅行の前に聞いておきたい事があった。
 結果として尋ね損ねていたのだけれど。

「ねぇ、みんな……この前の事なんだけど……――」

 一つ疑問に思っていたことがあった。
 話は遡り、警備局との一件の後。
 警備局が潰された事は、学園中が知るところとなった。
 そんな中、とある噂が生徒たちの間で広がっていた。

『警備局の九天茜を倒したのは皆月冬夜』

 そんな噂が広まっていた。
 だが、そんなはずはない。だってあの時、冬夜は早々にやられてしまったのだから。
 独り歩きする噂には尾ひれが付き、いつしか学園最強――とまで呼ばれる(裏で)ようになっていた。

 最弱なのに最強と呼ばれる日々。
 多くの猛者たちが挑んできた。
 もちろん戦えるはずもなく、逃げ回る日々。
 しかし、そんな情けない姿も、能ある鷹は爪を隠す的な扱いを受けた。困ったことに評判はむしろ上がった。


「あの日なにがあったの?」
「冬夜、覚えてないんだね。あの日の冬夜、めちゃくちゃカッコよかったんだから! 冬夜がヴァンパイ――」

 真白が口をふさぐ。
 希望は窒息寸前になっている。
 慌てて手を離すと、真白は、

「心配いらないよ」

 と何かを取り繕うように笑う。

「なにがあったの?」

 繰り返し質問する。
 真白は黙ってしまう。

「冬夜さん。この話はまた今度にしませんか?」

 登丸先輩の提案を受け入れる形で話を切り上げた。
 そのまま遊ぶ気にもなれなかったので、解散することにした。
 折角の楽しい旅行に水を差してしまった。

(僕ってダメな奴だな……)

 みんなと別れた後、一人でホテルに歩いて帰る。
 帰路の道中、ため息ばかりついていた。
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