転校生は朝ドラ女優!?

小暮悠斗

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第三幕 新たな戦場――苦戦続きのバラエティー

ACT87

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 私は、目の前で流れる映像を食い入るように見ていた。
 きっと今、私は相当マヌケな顔をしているに違いない。
 いろいろ編集がされているようで、所々映像が飛んでいた。
 編集されていると思しき映像の中で、ひとり異彩を放つ存在がいた。
 MIKAである。

 映像は、私と真希の背中越しに撮影されていた。
 人の出入りがなかったであろう倉庫で、偶然撮れた映像なんて事はありえない。
 何者かが何らかの意図をもって仕掛けたのだ。
 でも、一体誰が、なんの目的で?
 
 チッ……
 
 私の耳は、隣が鳴らした舌打ちを、聞き漏らさなかった。
 舌打ちをした本人を見ると、険しい顔で映像を見つめていた。
 私と違って、驚いている様子はない。
 むしろその逆。全てを知った上で険しい顔をしているようだった。
 真希がカメラの存在を知っていた?
 いや、違う?
 私はあの時違和感を覚えた。具体的あげるのは難しいけど。
 流れ続ける映像を見ていて気がついた。

 あっ、私が動いた部分が削られてる。
 私はあの日、2人の会話に気圧されて後ずさりをしている。
 しかし、今流れている映像にはそんなシーンはない。
 つまりは何らかの意図をもって削られたのだ。
 それは映像の「流れ」を見れば分かった。
 映像は、MIKAが私と真希を罵っているようにしか見えなかった。
 その見え方は、決して間違いではないのだが、あまりにも露骨にその構図が映し出されていた。
 
 あの日、真希が私が動くとすぐさま自分の方に来るように指示したのは、このカメラワークを気にしての事だったのだ。
 カメラはFix(フィックス)撮影――完全な固定撮影だった。
 カメラを動かせないために、私を動かしたという事だろう。
 映像は進み、カメラが切り替わる。
 映し出されたのは今までとは反対のアングル。
 つまりは私と真希を正面から捉えた映像だった。
 
 カメラは一台だけじゃなかったんだ。
 見事に私のマヌケ顔を捉えた映像は、スタジオの笑いを誘った。
 醜態を晒す私とMIKAに対して、真希はというと、冷静な落ち着いた印象を映像からは受ける。
 それはそうだろう。何せこの映像を撮影したのは半田さんでも晩春さんでもなく、当事者の真希だったのだ。
 そう考えると、あの日の真希に抱いた違和感の正体にもたどり着く。
 
 あの日の真希は妙に言葉尻が優しく、ヒステリックにもなったはいなかった。
 普段であれば憤慨していたであろう真希も、自分で仕掛けたカメラの前で醜態を晒すような真似をするはずがなかった。
 全ては真希の手の平の上で躍らされていたに過ぎないのだ。
 と、思っていたのだが、事実はもう少し違うようである。

 なぜなら、私の隣で真希が眉間に皺を寄せて、モニターを睨みつけているのだ。
 全てが思惑通りに運んでいるのであれば、今日も真希は、あの日のようにほくそ笑んでいることだろう。
 だが、実際には終始険しい表情を崩さない真希。
 今、この状況を作り出している――支配している人間が別にいる。
 そんな結論に至った時だった。

「今回はMIKAちゃんに汚れ役やらせてしもうて申し訳ないわ。堪忍な」

 晩春さんが手を合わせてMIKAに謝る。
 謝罪を受けたMIKAだったが、しばらくの逡巡の後「あ、はい……」と消え入りそうな声で答えるのがやっとのようだった。

 全ては私と真希に仕掛けられたドッキリ。その仕掛人がMIKAというシナリオらしい。
 そう、全ては晩春さんのシナリオだったのだ。
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