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第八章

第百五話・水鏡の畔にて(幕間)

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   やっと巫女の村に帰って来たアレンの怪我を見た途端、ジョエルは号泣した。イリーメル達亜人も、アレンが帰って来て嬉しいと言う感情の前に、申し訳無いと言う負の感情に支配されたようで彼の顔を見る度に涙ぐむ。以前のアレンの顔を知らないリザードマン達は彼を村に送り届けると、自分達の村へと復興の為、散って行った。
 
 「困ったな~」アレンは只今、透明度を取り戻した”水鏡の湖”の畔で守護魔獣のロウを呼び出し、その白い毛並みに埋もれモフモフしながら逃避中だ。彼は怪我の事について、片目片手になって不自由さは感じるものの、時には忘れるくらい何とも思っていなかった。
 そう、あの激痛に比べれば、何と言う事も無い。元から自分の顔に頓着は無く、自分からは見えない。それに、いまでもクッキーが鬼のように舐めて来るので、ケロイド状の皮膚も日に日にきれいになって来た。そのクッキーは湖に持って来たお弁当を食べている。
 クッキーは時々、ロウの毛並みに埋もれて眠っているが、サリューとは付かず離れずだ。サリューはと言うと、ますますアレンの補助に磨きが掛って来た。まるで、アレンの次の行動が読めるように介助してくれる。彼のもう一つの手と言っても過言ではない。
 サリューは生まれた時より大きくなり、今や、トカゲの成体くらいに成長した。皮膚もオレンジがかり、青緑とオレンジの小さな背飾りオステオダーム(骨板)が生えて来た。爪もお揃いの青緑でなかなかのお洒落さんだ。ガラスビーズのような青い瞳がかわいらしい。


 「アレン、アレン」耳元で、何度か名前を呼ばれ揺り起こされた。重い瞼を押し上げると、ジョエルの顔が目に入った。(まずい、非常に怒っている顔だ)
 「人が心配して探し回っているのに、高鼾かい?呑気でいいね」
 「ご、ごめんなさい」ロウが暖かくて、いつの間にか眠ったようだった。
 ジョエルが腕を組んで見下ろしている。目が怖い。
 「あっ!」
 (ロウの事を言ってなかった・・・)

 「は、な・に!」ロウを指差しながら、ジョエルは非常に低い声で言った。ロウは自分が怒られているかのように、耳を伏せる。
 「まさか、亜人とは言わないよね?」
 「え~と・・・向こうで、一人ボッチで可哀想だから」
 「可哀想だから、何!可哀想、かわいそうって言う度に、自分の召喚獣にしちゃう訳?犬や猫の子じゃないんだよ。自分の立場が分かってるのか?二匹も守護魔獣持っているのを隠さないと駄目なのに、三匹目ってどういう事だ!」
 「あの・・・クッキーは守護魔獣じゃない・・みたい」
 「だったら、何だよ。ただのか?それこそ、有り得ない」
 「え~と、アルゲートが言うには、あっちの世界の森のだって・・・」
 アレンの言葉に、ジョエルはますます目を剥いた。
 そして、ジョエルの勢いに耐えられなくなったサリューがカサカサと、アレンの服の中に逃げ込んだ。
 ジョエルの目が点になる。
 (そう言えば、サリューの事も言ってなかった・・・)

 「アーーレーーンーーー!!」ショックから立ち直ったジョエルの雄叫びが湖に鳴り響いた。

 その日から、ジョエルは悲しみから見事立ち直り、以前より厳しく接する(小言が増えた)ようになった。
 ジョエル曰く、ー心配して損した。アレンは転んでもただでは起き上がらないーそうだ。そして、アレンのかわいい顔に騙されないぞ、と固く心に誓ったらしかった。





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 第百六話・ナリスとの再会と新しい出会い(仮)

 第百七話・公女ユーテシアと蠢動の夜(仮)

 




















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