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「…んで、姿を消す魔法を教わりたいって?」
「そうなの!お兄ちゃん神様仏様!何卒その術を伝授していただきたく!!」
サザンカがやって来たのはへロイスの部屋。
基本はへロイスの部屋に来ることもしなかったと、そう聞かされた時はなんて勿体ない!と思わず叫んでしまいそうになった。部屋に入って早々、へロイスはその話の内容を聞けば渋い顔をする。
「つーかさ~なんでそもそも体なんか鍛えるんだよ」
「なんでって、それは筋肉愛故よ!私の中で筋肉は裏切らないって法則があるの」
「意味わかんねーよ。それで兄上の訓練場に行って追い出されたから、今度は魔法で姿を消して訓練場に行くって?」
「そう!あ、それと男に変身できる魔法とかもあったら教えて欲しいな!修得できたら無限に稽古ができるから一石二鳥だし」
ウキウキ顔で筋肉トークを語りまくる。
へロイスは机上に乗った多くの書類を前にだいぶ疲れた顔をしていた。
「オマエは…今度は何をしだすかと思いきや」
少し呆れた口調で立ち上がれば近づいてくる。
「馬鹿にもほどがあるだろう。貴族令嬢が剣術と筋肉を鍛える?冗談でもあってはいけない事実だ」
「なんで?なんで女性は鍛えちゃいけないの?」
「なんでって…そりゃあそういうもんだからだよ」
「そういうもん…」
へロイスもシャロンもお兄様も同じことを言うんだな。
せっかく転生できて、こんな育て甲斐のある身体つきをしていると思い期待していたのに。この世界ではそんなクソみたいなルール一つで女は剣を握ることも…ましてや腹筋すらさせては貰えないのか。
ガッカリしていれば頭上には手が置かれる。
「…ま、その二つは教えてやれないけど。魔法は教えてやれるぞ」
「え、ホントに⁈」
「つか、その約束だっただろ~感謝しろよな。この俺直々にオマエに教えてやるんだから」
ムカつく言い方だが内心嬉しいのでどうでもいい。
魔法を習えるなんて需要でしかない。
「お兄ちゃん、神様~!!!」
「そのお兄ちゃんってなんだよ。オマエそんなこという奴じゃなかっただろ。てかなんで俺にはそんなにタメ口なんだよ。兄上達との差が大きすぎだろ!」
「なんでって…そんなのお兄ちゃんが一番だからに決まってるじゃん」
「一番?」
「そう、一番。家族の中でお兄ちゃんが一番大切な存在だから。ある意味特別枠ってことだよ!」
後妻との間に生まれたへロイスにサザンカ。
当初、公爵と母親は仲が悪かった訳ではなかったが、恋愛婚した最愛の前妻が死んで迎えたのが伯爵家の母親だ。だが母親の実家は限りなく平民に近い貧乏家系でお金に不自由していた没落貴族だった。
ある日、視察で伯爵家の近くを通りかかった公爵が、死んだ前妻の姿と母親が瓜二つだったことから公爵家に迎え入れたのがきっかけだ。
だが母親はサザンカを産んで数年後に死んだ。
それ以降、公爵が目を向けるのは前妻の生き写しとして生まれたヒロインロエナと、天才騎士のソードマスターとなった嫡男フィリップ。無自覚にへロイス達に向ける愛情が疎遠状態だったのだ。
「俺が…一番、か。ったく、そこまで言うなら仕方ねぇな(笑)」
へロイスは何処か嬉しそうな顔をしていた。
愛情に飢えていたへロイス。
そんな兄を持ち、最後には悪役と謳われ、駒として使われ、殺されるサザンカ。
(ならば私がへロイスに愛情を注いでやろうではないか!!)
「ふふ~ん♪へロイス先生よろしくお願いします!!」
今のサザンカは昔とは違う。
死亡フラグなんざ、ポジティブに考えたら試練を乗り越える為の壁でしかない!!
だから私は前に進むのみ!!
楽しみですわ~!!
そんなポジティブ思考でへロイスとも兄妹愛を築けばフラグ安パイでしょ。
その日から、サザンカの魔法習得修行が始まったのだ。
「そうなの!お兄ちゃん神様仏様!何卒その術を伝授していただきたく!!」
サザンカがやって来たのはへロイスの部屋。
基本はへロイスの部屋に来ることもしなかったと、そう聞かされた時はなんて勿体ない!と思わず叫んでしまいそうになった。部屋に入って早々、へロイスはその話の内容を聞けば渋い顔をする。
「つーかさ~なんでそもそも体なんか鍛えるんだよ」
「なんでって、それは筋肉愛故よ!私の中で筋肉は裏切らないって法則があるの」
「意味わかんねーよ。それで兄上の訓練場に行って追い出されたから、今度は魔法で姿を消して訓練場に行くって?」
「そう!あ、それと男に変身できる魔法とかもあったら教えて欲しいな!修得できたら無限に稽古ができるから一石二鳥だし」
ウキウキ顔で筋肉トークを語りまくる。
へロイスは机上に乗った多くの書類を前にだいぶ疲れた顔をしていた。
「オマエは…今度は何をしだすかと思いきや」
少し呆れた口調で立ち上がれば近づいてくる。
「馬鹿にもほどがあるだろう。貴族令嬢が剣術と筋肉を鍛える?冗談でもあってはいけない事実だ」
「なんで?なんで女性は鍛えちゃいけないの?」
「なんでって…そりゃあそういうもんだからだよ」
「そういうもん…」
へロイスもシャロンもお兄様も同じことを言うんだな。
せっかく転生できて、こんな育て甲斐のある身体つきをしていると思い期待していたのに。この世界ではそんなクソみたいなルール一つで女は剣を握ることも…ましてや腹筋すらさせては貰えないのか。
ガッカリしていれば頭上には手が置かれる。
「…ま、その二つは教えてやれないけど。魔法は教えてやれるぞ」
「え、ホントに⁈」
「つか、その約束だっただろ~感謝しろよな。この俺直々にオマエに教えてやるんだから」
ムカつく言い方だが内心嬉しいのでどうでもいい。
魔法を習えるなんて需要でしかない。
「お兄ちゃん、神様~!!!」
「そのお兄ちゃんってなんだよ。オマエそんなこという奴じゃなかっただろ。てかなんで俺にはそんなにタメ口なんだよ。兄上達との差が大きすぎだろ!」
「なんでって…そんなのお兄ちゃんが一番だからに決まってるじゃん」
「一番?」
「そう、一番。家族の中でお兄ちゃんが一番大切な存在だから。ある意味特別枠ってことだよ!」
後妻との間に生まれたへロイスにサザンカ。
当初、公爵と母親は仲が悪かった訳ではなかったが、恋愛婚した最愛の前妻が死んで迎えたのが伯爵家の母親だ。だが母親の実家は限りなく平民に近い貧乏家系でお金に不自由していた没落貴族だった。
ある日、視察で伯爵家の近くを通りかかった公爵が、死んだ前妻の姿と母親が瓜二つだったことから公爵家に迎え入れたのがきっかけだ。
だが母親はサザンカを産んで数年後に死んだ。
それ以降、公爵が目を向けるのは前妻の生き写しとして生まれたヒロインロエナと、天才騎士のソードマスターとなった嫡男フィリップ。無自覚にへロイス達に向ける愛情が疎遠状態だったのだ。
「俺が…一番、か。ったく、そこまで言うなら仕方ねぇな(笑)」
へロイスは何処か嬉しそうな顔をしていた。
愛情に飢えていたへロイス。
そんな兄を持ち、最後には悪役と謳われ、駒として使われ、殺されるサザンカ。
(ならば私がへロイスに愛情を注いでやろうではないか!!)
「ふふ~ん♪へロイス先生よろしくお願いします!!」
今のサザンカは昔とは違う。
死亡フラグなんざ、ポジティブに考えたら試練を乗り越える為の壁でしかない!!
だから私は前に進むのみ!!
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そんなポジティブ思考でへロイスとも兄妹愛を築けばフラグ安パイでしょ。
その日から、サザンカの魔法習得修行が始まったのだ。
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