美術教師の檻――「描き終わるまで帰さない」画家の執着

紺碧のごんぎつね

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【第2章:密室での支配段階】(第5~10話)

第10話「深夜のアトリエ」

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日曜日の朝、透也は目を覚ました。 いや、正確には、眠れなかったから朝を迎えた。

昨夜のことが、頭から離れない。 閉ざされたドア。 柊の冷たい目。 そして、身体に触れられた感覚。 乳首を弄られた感覚。 ズボンに染みを作ってしまった屈辱。

透也は、シャワーを浴びた。また、触れられた場所を洗う。 何度洗っても、消えない気がする。

携帯を見ると、柊からのメッセージが10件。

透也は、見なかった。 「もう、関わらない」

決意を新たにする。 でも、その決意が、どれほど脆いものか。 透也は、まだ気づいていなかった。

月曜日、学校で。

透也は、タートルネックを着ていた。 首を隠すため。 何も痕はついていない。 でも、隠したかった。 柊に触れられた場所を。

授業中、透也の携帯が震えた。 ポケットの中で。 何度も、何度も。

生徒たちが気づいている。

「先生、電話じゃないですか?」 「...ああ、すまない」

透也は、携帯の電源を切った。 でも、胸の奥が、ざわざわする。 柊からだ。 きっと、柊からだ。

放課後、電源を入れた。 着信履歴。30件。 全て、柊から。 メッセージも、50件以上。

透也の手が震えた。

一つだけ、開いてしまう。

『先生、電話に出てください』 『どうして出ないんですか』 『お願いします。出てください』 そして、最後のメッセージ。 『先生』

たった二文字。 でも、その二文字に込められた重さ。 透也の背筋が、凍った。

火曜日、水曜日、木曜日。

毎日、柊から何十件もの着信とメッセージ。 透也は、全て無視した。 でも、無視すればするほど、回数が増えていく。

木曜日の夜には、着信が100件を超えていた。

「...おかしい。完全におかしい」

透也は、ベッドに座り込んだ。 これは、もう。 ストーカーだ。

金曜日の夜。

透也は、警察に電話しようかと迷った。 携帯を手に取る。 「110」と打つ。

でも、押せない。

「もし警察を呼んだら...」 柊は逮捕されるかもしれない。 そうなったら、悠斗は。 「悠斗が...傷つく」

それに、学校にも知られる。 透也が、柊のモデルをしていたこと。 上半身裸で。 触れられたこと。

「それは...まずい」

透也は、電話を置いた。 「自分で、何とかしないと」

でも、どうやって。

土曜日の朝。

透也は、家にいた。 今日、柊はアトリエで待っているのだろう。 でも、透也は行かない。 絶対に、行かない。

午後2時。

約束の時間。 透也の携帯が鳴った。 柊から。

透也は、無視した。 また鳴る。 また。 何度も、何度も。

「...やめてくれ」

透也は、携帯を伏せて置いた。 でも、バイブの音が、部屋に響く。

透也は、枕で頭を覆った。 それでも、音は聞こえる。

「やめろ...やめてくれ...」

電話は、深夜2時まで鳴り続けた。 透也は、一睡もできなかった。

日曜日の朝。

透也は、疲れ果てていた。 携帯を見る。着信履歴、100件。 メッセージ、200件以上。

「...おかしい。完全におかしい」

透也は、震える手で携帯を握った。

最新のメッセージを開く。

『先生、お願いです。返信してください。心配で、何も手につきません。せめて、無事だと教えてください』

透也の胸が、少し痛んだ。 柊は、心配しているのだ。

でも。 「これは...普通じゃない」

心配の範囲を、完全に超えている。

透也は、返信しなかった。

月曜日。

透也は、学校に行った。睡眠不足で、目の下にクマができている。

「久我先生、大丈夫? 顔色、すごく悪いわよ」

田中先生が心配そうに声をかけた。

「少し...寝不足で」 「無理しないでね」

授業中も、透也の集中力は途切れがちだった。

「先生?」

生徒の声で、ハッとする。

「ああ、すまん。どこまで話したっけ」

生徒たちが、心配そうに透也を見ている。

放課後、悠斗が来た。

「先生...兄が」

透也の身体が強張った。

「...何?」 「先生のこと、すごく心配してます」

悠斗の目が、真剣だった。

「何かあったんですか? 先生、最近様子がおかしいです」

透也は、悠斗に何も言えなかった。 「お兄さんが、怖いんだ」なんて。 言えるわけがない。

「...何でもない。ただ、ちょっと疲れてるだけだ」

悠斗は納得していない様子だったが、それ以上は聞いてこなかった。

火曜日の夜。

透也の携帯に、また柊から電話。 今度は、出てしまった。

「...もしもし」 『先生!』

柊の声が、受話器の向こうで弾んだ。

『良かった...無事だったんですね』 「...はい」 『どうして、出てくれなかったんですか』

柊の声が、少し責めるようだった。

「...すみません。忙しくて」

嘘だった。

『そうですか...僕、すごく心配したんです』 「...申し訳ありません」

沈黙。

『先生...土曜日、来てくれますよね』

透也の心臓が跳ねた。

「...それは」 『お願いです。もう、先生を困らせたりしません』

柊の声が、懇願するようだった。

『ただ、描かせてください。それだけでいいんです』

透也は、答えに窮した。 断るべきだ。 でも。 柊の声には、切実さがあった。

「...考えさせてください」 『分かりました。待ってます』

電話が切れた。

透也は、携帯を握りしめた。 「どうすればいいんだ...」

水曜日。

透也は、決意を固めた。

「もう一度だけ、行こう」

そして、はっきりと断ろう。 モデルは、もうできない。 それを、ちゃんと伝えよう。

柊にメッセージを送った。

『土曜日、伺います』

すぐに返信が来た。

『ありがとうございます! 待ってます!』

透也は、複雑な気持ちだった。 これで、最後だ。 ちゃんと、断ろう。

土曜日が来た。

透也は、覚悟を決めてアトリエへ向かった。

ドアをノックする。 すぐにドアが開いた。

柊が、満面の笑みで立っていた。

「来てくれたんだね!」

その笑顔は、まるで子供のようだった。

透也は、少し戸惑った。

「...はい」 「さあ、入って」

アトリエに入る。いつもの椅子。

「じゃあ、始めよう」

柊が嬉しそうに言った。

透也は、深呼吸した。

「あの...柊さん」 「ん?」 「今日で...最後にさせてください」

柊の表情が、固まった。

「...え?」 「モデルは、もうできません」

透也が真剣に言った。柊の目が、揺れた。

「どうして...」 「僕には...合わないんです」

透也が視線を逸らす。柊が一歩近づいた。

「お願いです。もう少しだけ」 「...」 「あと数回で、完成するんです」

柊の声が、震えている。

「お願いします...先生」

透也は、その声に負けそうになった。

「...分かりました」

なぜ、また承諾してしまうんだ。 透也は、自分の弱さに絶望した。

「ありがとう!」

柊が透也の手を握った。

「っ...」 「じゃあ、始めよう」

透也は、椅子に座った。 そして、また。 シャツを脱いだ。

柊の視線が、透也の裸の肌を舐める。 今日も、長いモデルの時間が始まった。

約束の2時間が経った。 時計は午後4時。

透也が立ち上がろうとすると、柊が言った。

「もう少しだけ」 「...え?」 「あと30分。お願い」

透也は、渋々頷いた。

30分後。

午後4時半。

「柊さん...」 「もう少し」

また引き留められる。

午後5時。 午後6時。

時間が過ぎていく。 透也の疲労は、限界に達していた。

「もう...無理です」

午後7時。透也が立ち上がった。

「すみません、本当に帰ります」

柊が筆を置いた。

「そうか...」

でも、立ち上がらない。

「柊さん?」

透也が不安そうに見る。

柊がゆっくりと立ち上がった。 透也に近づいてくる。

「っ...」

透也が後ずさる。 でも、柊が透也の手を掴んだ。

「先生...」 「離してください」

透也が手を引こうとする。でも、柊の手は強い。

「もう少し、いてください」 「いえ、本当に...」

柊が、透也を抱きしめた。

「っ...!」

裸の上半身が、柊の身体に押し付けられる。

「離して...!」

透也が柊を押す。でも、柊は離さない。

「先生の肌...温かい」

柊の声が、透也の耳元で囁く。

「やめてください...」

透也の声が震える。

柊の手が、透也の背中を撫でる。 ゆっくりと、上から下へ。

「っ...」

透也の身体が震える。

「先生...好きです」

柊の告白。

透也の目が見開かれる。

「え...」 「ずっと、好きでした」

柊の手が、透也の腰に回る。 もう片方の手が、透也の背中を撫でる。

「最初に会った時から」 「やめて...」

透也が弱々しく言う。

「先生が、全てなんです」

柊の手が、透也の胸元へ回る。

「っ...!」

前から、透也の胸に触れる。 乳首を、指先で弄る。

「っ...ああ...」

透也が声を漏らす。

「やめて...ください...」

でも、柊は止めない。

両方の乳首を同時に刺激する。 くりくりと。 円を描くように。

「っ...くそっ...」

透也の膝がガクリとなる。 柊が透也を支える。

「先生...感じてるんですね」 「違う...」

透也が否定する。 でも、身体は正直だった。 乳首が完全に硬くなっている。 そして、下半身も。 ズボンの中が、窮屈になってきた。

「先生の身体は、正直ですね」

柊が微笑む。

透也の顔が真っ赤になる。

「くそ...」

柊の手が、執拗に乳首を刺激し続ける。 摘んで、引っ張って、転がして。 時には、軽く爪を立てる。

「っ...ああ...やめ...」

透也の声が、どんどん甘くなっていく。

「可愛い声」

柊が透也の耳元で囁く。 吐息が、透也の首筋にかかる。

「っ...」

柊が、透也の首筋に唇を寄せた。 キスするように。 でも、触れない。 寸止め。

透也の身体が、ゾクゾクする。

「先生...」

柊の手が、透也の腹部へ滑る。 ゆっくりと、下へ。

「やめて下さい...」

透也が柊の手を掴もうとする。 でも、柊は素早い。

手が、ズボンの上から透也の股間に触れた。

「っ...!」

透也の悲鳴に近い声。

「硬くなってる」

柊が、ズボンの上から透也のものを握った。

「やめろ...!」

透也が必死に抵抗する。 でも、柊の力は強い。

ズボンの上から、ゆっくりと上下に動かす。

「っ...ああ...くそっ...」

透也の声が、甘く歪む。 男性器を扱かれている。 男性に。

「先生...すごく大きい」

柊の声が、嬉しそうだ。

「やめろ...お願いだから...」

透也の目に涙が滲む。 でも、身体は快感に反応してしまう。

柊の手が、リズミカルに動く。 ズボンの上からでも、快感が走る。

「っ...ああ...だめ...」

透也の腰が、勝手に動き出す。 柊の手に合わせて。

「いい子」

柊が微笑む。

「やめろ...」

透也が弱々しく言う。

柊の手が速くなる。

「っ...ああ...やめ...もう...」

透也が達しそうになる。 ズボンの中で。

「いいよ。出して」

柊の囁き。

「っ...くそっ...!」

透也が達した。 ズボンの中に。 白濁が、下着を汚す。

「っ...ああ...」

透也の身体が、ビクビクと震える。

柊が、満足そうに微笑んだ。

「綺麗だ...」

透也は、絶望した。 男に。 イかされた。 ズボンの中が、気持ち悪い。 精液でベトベトだ。

「くそ...くそっ...」

透也が涙を流す。 すぐに拭う。 でも、止まらない。

柊が、透也を優しく抱きしめた。

「大丈夫。君は美しい」 「離せ...」

透也が弱々しく言う。 でも、身体に力が入らない。 イった直後で、脱力している。

柊が、透也をソファまで運んだ。 横にする。

「少し、休んで」

透也は、何も言えなかった。 ただ、天井を見つめている。

自分の身体が、気持ち悪い。 ズボンの中が、冷たくなってきた。

「...帰る」

透也が小さく言った。

「もう少し休んでから」

柊が優しく言う。

「今すぐ、帰る」

透也が起き上がろうとする。 でも、身体がふらつく。

柊が支える。

「大丈夫?」 「...触るな」

透也が柊を睨む。 柊が手を離した。

透也は、何とか立ち上がった。

ズボンの前が濡れている。 精液で。 恥ずかしい。

透也は、シャツを掴んだ。 着る。 シャツの裾を出して、ズボンの染みを隠す。

「...もう、来ません」

透也が言った。

柊の表情が曇る。

「先生...」 「もう、関わらないでください」

透也がドアへ向かう。

「待って!」

柊の声。 でも、透也は振り返らなかった。

ドアを開ける。 階段を駆け下りる。

外に出て、走った。 人通りのある場所まで。

ようやく立ち止まる。 全身が震えている。

「くそ...くそっ...」

透也は、自分の身体を抱きしめた。

ズボンの中が、気持ち悪い。 男に、イかされた。 その事実が、透也を打ちのめす。

「もう...終わりだ」

透也は、そう呟いた。

家に帰って、すぐにシャワーを浴びる。 ズボンと下着を脱ぐ。 精液で汚れている。

「くそ...」

透也は、それを洗濯機に放り込んだ。

シャワーを浴びながら、また涙が出た。

「何で...俺は...」

男に触れられて。 イかされて。

「情けない...」

透也は、壁に額を押し付けた。

シャワーを出て、ベッドに倒れ込む。

「もう...絶対に行かない」

透也は、自分に誓った。

携帯が震えた。 柊からのメッセージ。

透也は、見なかった。

「もう、終わりだ」

透也は、目を閉じた。 でも、眠れなかった。

柊の手の感触。 乳首を弄られた感覚。 股間を握られた感覚。 イった時の快感。

全てが、透也の身体に残っている。

「くそ...」

透也は、布団を被った。 でも、逃れられない。 柊の執着から。 そして、自分の身体の反応から。

透也の夜は、また長く、暗かった。
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