美術教師の檻――「描き終わるまで帰さない」画家の執着

紺碧のごんぎつね

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【第5章:社会的試練と二人の選択】 (第25話~28話)

第25話「個展への道」

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二週間後・月曜日の朝

透也は、柊のアトリエで目を覚ました。
もう、ここが日常になっていた。

隣で眠る柊。
穏やかな寝顔。

透也は、そっとベッドから出た。
キッチンへ向かう。
コーヒーを淹れる。

朝の静かな時間。
窓の外に、朝日。

「ここが、俺の家」

呟いた。
その言葉が、まだ不思議に感じる。

二週間前まで。
一人で暮らしていた。

だが、今は。
柊と、一緒。

「おはよう」

柊の声。

透也が、振り返る。

「おはよう」
「コーヒー、飲む?」

柊が、頷く。

「ああ」

二人で、テーブルに座る。
コーヒーを飲みながら。

「今日、学校は?」

柊が、聞く。

透也が、頷く。

「ああ」
「でも…もうすぐ異動が決まる」

柊の表情が、曇る。

「申し訳ない…」

透也が、首を横に振る。

「謝るな」
「俺が、選んだんだ」

柊が、透也の手を握る。

「ありがとう」

透也が、微笑む。

「こっちこそ」

二人の朝。
これが、日常になっていた。

透也が、職員室に入ると。
同僚たちの視線が、突き刺さる。

ヒソヒソ話。

「久我先生…」
「あの人、本当に…」

透也は、無視して自分の席へ。
だが、心臓が激しく鳴っている。

「久我先生」

田中先生が、近づいてきた。

「はい」

「あの…今日の午後、校長が」

透也が、頷く。

「分かってます」

午後3時。
透也は、校長室へ呼ばれた。

ドアをノックする。

「どうぞ」

中に入る。
校長、教頭、そして。
教育委員会の職員が、座っていた。

透也の心臓が、止まりそうになる。

「久我先生」

校長の厳しい声。

「はい」
「座りなさい」

透也が、椅子に座る。

「教育委員会の山田さんです」

山田と名乗る男性が、透也を見る。
冷たい視線。

「久我先生」
「あなたの件について、複数の保護者から苦情が来ています」

透也が、何も言えない。

「教師が、同性と交際している」
「それが、生徒に悪影響を与えると」

透也の拳が、握られる。

「悪影響…ですか」

山田が、眉をひそめる。

「そうです」
「教育現場において」
「模範となるべき教師が」

透也が、遮った。

「私生活です」
「何も、間違ったことはしていません」

山田の表情が、強ばる。

「しかし」
「保護者の声を無視できません」

校長が、ため息をついた。

「久我先生」
「来月から、××県の△△高校へ異動です」

透也の心臓が、痛む。

「…分かりました」

「ただし」

山田が、続ける。

「個展の件」

透也の目が、見開かれる。

「え…」

「あなたがモデルになった個展が」
「来月、開催されると聞きました」

透也が、何も言えない。

「それが事実なら」
「異動ではなく、懲戒も検討します」

透也の全身が、震える。

「それは…」
「脅しですか」

山田が、冷たく微笑む。

「いいえ」
「忠告です」
「教師としての立場を、考えなさい」

透也は、立ち上がった。

「失礼します」

管理職室を出る。
廊下を走る。
トイレに駆け込む。

個室に入る。
ドアを閉めて。
壁に手をついて。

「くそ…」

涙が、溢れる。
すぐに拭う。

「くそっ…」

でも、止まらない。
透也の肩が、震える。

その日の夜。
透也は、アトリエに帰った。

ドアを開けると。
柊が、キャンバスの前に立っていた。

「おかえり」

柊が、振り向く。

透也の顔を見て、すぐに気づく。

「何かあったのか」

透也が、頷く。

すべてを話した。
教育委員会の職員。
異動の決定。
個展を中止するか、懲戒処分を受けるかの選択。

柊の表情が、どんどん暗くなる。

「俺の…せいだ」

柊が、呟く。

透也が、首を横に振る。

「違う」
「これは、社会のせいだ」

柊が、透也を見つめる。

「透也…」
「個展を、中止しよう」

透也の目が、見開かれる。

「え…」

柊が、続ける。

「お前を、守りたい」
「教師の仕事を、失わせたくない」

透也が、柊の手を握った。

「ダメだ」

柊が、戸惑う。

「でも…」

「俺たちの愛を、隠すのか?」

透也の声が、強い。

「社会が、認めなくても」
「俺たちは、堂々としていたい」

柊の目に、涙が滲む。

「透也…」
「個展を、やろう」

透也の決意。

「お前の絵を、世界に見せよう」
「俺たちの愛を、見せよう」

柊が、透也を抱きしめた。

「ありがとう」

透也も、柊を抱き返す。

「こっちこそ」

二人の抱擁。
長く。深く。

その夜。
二人は、ベッドで抱き合った。

セックスではなく。
ただ、抱き合った。

明日への不安を。
共有しながら。

翌週。
透也は、学校を休職した。
診断書を提出して。

「精神的疲労」という理由で。
だが、本当の理由は。
個展の準備だった。

柊と一緒に。
ギャラリーへ通う。

作品の配置を決める。
照明を調整する。
カタログを作る。

「この絵は、ここに」

柊が、指示する。

透也が、手伝う。
重いキャンバスを運ぶ。
壁に掛ける。

「綺麗だな」

透也が、呟く。

柊の絵。
透也を描いた絵。

裸の絵も、ある。
だが、それだけではない。

二人が、ソファで寄り添う絵。
朝食を食べる絵。
窓辺で本を読む絵。

日常の絵。

「これが…俺たちか」

透也が、呟く。

柊が、透也の肩に手を置く。

「ああ」
「これが、俺たちの真実だ」

透也の目に、涙が滲む。

「美しい…」

柊が、微笑む。

「お前が、美しいから」

透也の顔が、赤くなる。

「くそ…」

でも、嬉しい。

個展の前日。
二人は、アトリエに戻った。

疲れていた。
だが、充実していた。

「明日…」

透也が、呟く。

「ああ」

柊が、頷く。

「始まる」

透也が、柊を見つめる。

「怖いな」

柊が、透也の手を握る。

「俺も」
「でも」

柊が、透也を抱きしめる。

「お前と一緒なら」
「大丈夫だ」

透也も、柊を抱き返す。

「ああ」

二人の唇が、重なった。
優しく。
だが、すぐに深くなる。

「蒼一郎…」

透也の手が、柊のシャツを脱がせる。

「透也…」

柊も、透也の服を脱がせる。
二人は、裸になった。

ベッドへ。

柊が、透也の上に覆いかぶさる。

「透也…」

透也が、柊の頬に触れる。

「蒼一郎…」
「明日から…何が起きても」
「俺は、お前を愛してる」

柊の目に、涙が滲む。

「俺も」
「お前を、愛してる」

二人の唇が、重なった。
深く。長く。

柊の手が、透也の身体を撫でる。
首筋、胸、腹部。

ゆっくりと。
愛おしむように。

「透也…」

柊の指が、透也の後ろに触れる。

「っ…」

透也の身体が、震える。

「入れていい?」

透也が、頷く。

「ああ…」

柊が、ローションをつける。
指で、透也を慣らす。
一本。二本。

「ああ…」

透也の吐息。

「もう、いい」

柊が、自分の男性器にローションをつける。
透也の入り口に、当てる。

「入れるぞ」

透也が、頷く。

柊が、ゆっくりと入れる。

「ああ…」

透也の吐息。
全部、入った。

「透也…」

柊が、動き始める。
ゆっくりと。深く。

「蒼一郎…」

透也の声が、甘い。

柊の動きが、少しずつ速くなる。

「ああ…そこ…」

透也の声。

柊の手が、透也の男性器を握る。

「っ…!」

透也の身体が、震える。

「蒼一郎…もう…」

透也の声が、震える。

「俺も…」

柊の声。

二人が、同時に到達した。

「っ…!」

柊が、透也の中に放つ。
透也も、柊の手の中で。
白濁が、二人の身体を汚す。

柊が、透也の上に倒れ込む。

「ああ…」

透也が、柊を抱きしめる。

「蒼一郎…」

柊が、透也の唇にキスをした。

「愛してる」

透也が、微笑む。

「俺も」

二人は、そのまま眠りについた。
抱き合ったまま。

明日への不安も。
でも、愛も。
すべてを抱きしめながら。
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