スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫

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68話・勝敗

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 痛みで立ち上がれないでいたら、

「そこまで!!」

 模擬戦を終わらせるセウンさんの声が耳に届いた。
 それを聞いた瞬間、私は立ち上がるのを諦め、そのまま地面に寝転んだ。その間も胸部はズキズキと痛んでいるし、何だか体がダルい感じがする。どうやら、スキルの効果がきれたみたいだ。

「はぁ…」

 自然とため息がこぼれていた。
 そして、ある感情が胸いっぱいに広がっていくのを感じる。

「やっぱ、悔しいな…」

 最初から勝てない事は分かっていたけど、結局フィアンマさんに一泡吹かすどころか、一撃も当てられなかった事が、とても悔しかった。

「大丈夫か、ラス?」

「セウンさん…」

 顔をあげると、セウンさんが駆け寄ってきてくれていた。その後ろには、シェーンさんやフィアンマさん、他の2人も私の周りに集まっていた。

「大丈… 痛っ!!」

 再度起き上がろうとしたけど、やはり胸部が痛む。

「無理しなくていいぞ、ラス。シェーン、悪いけど回復を頼む」

「はい、分かりました。ラスちゃん、今から回復魔法をかけますね」

 シェーンさんが回復魔法を唱えると、徐々に胸部の痛みがひいていく。
 痛みが殆ど回復した所で、私は体を起こし、お礼を伝える。

「ありがとうございます、シェーンさん」

「気にしないで下さい。それより、痛みの方はどうですか?」

「シェーンさんのおかげで、完全に良くなりました」

「そうですか。なら、良かったです」

「俺からも例を言うよ。ありがとう、シェーン」

「いえ、セウンさんも気にしないで下さい」

「そうか、まぁでも一応な。それで、ラスは立てそうか?」

「あ、はい。大丈夫です」

 まだ座っていた私は、すぐ立とうとした所で、セウンさんが手を差し出してくれたので、その手に掴み立ち上がる。
 立ち上がった所で、フィアンマさんが話しかけてくる。

「悪かったね、ラス。それで、体の方は大丈夫なんだね?」

「はい、大丈夫です。ただ、ちょっと負けて悔しいくらいですね」

「ん? 何言ってんだい。模擬戦は、ラスの勝ちだよ」

「え?」

 フィアンマさんは、何故か私が模擬戦に勝ったと言ってきたので、聞き返してみる。

「どう言う事ですか? 私の最後の攻撃も、たぶんフィアンマさんに当たってないですよね?」

「あぁ、いい一撃だったけど当たってないね」

「ですよね… なら、何で私の勝ちなんですか?」

「模擬戦のルールは何だったか覚えているかい?」

「模擬戦のルール? えっと、確か体術のみだったと思います」

「そう、体術のみなんだよ。そして、ラスが模擬戦中に使ったのはスキルを使っての体術だから問題ないんだけど、私が最後に使ったのは、神聖魔法を使った体術だから、ルール違反になるんだよ」

「だから、私の勝ちなんですか?」

「そうだよ」

「そうなんですね…」

 理由を聞いて、私の勝ちだと理解しても、やはり何だか腑に落ちなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー作者より(捕捉)

今更になって申し訳ないのですが、フィアンマの使う神聖拳や暗黒拳は、その魔法を拳に纏わせた時の技名です。
そして、それを可能にしているのは、魔法拳というスキルのおかげです。

魔法拳 ・・・ 自身が使える魔法を拳に纏わせれるようになる。纏わせれた場合、その魔法の効果を残したまま攻撃力をあげる事が出来る。

因みに、スキルを持っていても失敗する可能性はあります。
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