453 / 453
131話・さすいば
しおりを挟む
茨さんが、キラキラとした目で闘いの感想を聞いてくる。
どう答えようか迷ったが
「私の実力が足らず、茨さんの動きを捉えることが出来なくて、あまり参考になりませんでした」
誤魔化す事なく正直に答えた。
理由としては、ここで参考になったと嘘をついて、後々バレた時の茨さんとの不和を考えての事だ。
「…え?」
目を見張る茨さんに
「茨さん、本当にすみません」
頭を下げて謝っておく。
「そっか… 頭を上げてラス。私は気にしていないから…」
そう言ってくれてはいるが、少し顔を俯かせ、しょぼんとしており、目に見えて落ち込んでいるように見える。
「あ、でも、茨さんが闘う姿はとても格好良かったです!!」
だから咄嗟に、あまり参考にならなかったと同じくらい思っていた気持ちを口にする。
「そ… そう?」
茨さんの顔が少し上がると同時に、口角も少し上がっているのを確認する。
「はい、そうです!! 普段の愛らしい見た目からは想像出来ない程、格好良くて凛々しかったです!!」
「えへへ。そう?」
「はい!! 改めて茨さんを尊敬しました。流石、茨さん。略してさすいばですよ!!」
自分でも何を言っているのか少し分からなくなりながらも言葉を重ねた。
「さ、さすいば? ってのは、良く分からないけど、ラスにそう思って貰えるのなら良かった」
「あ… あはは」
状態が元に戻ったようで安堵する。
「なら、ラスにも尊敬された事だし、私はそろそろもどるね」
「あ、はい。茨さん、今回は本当にありがとうございました」
「もうお礼はいいよ。じゃあまたね、ラス」
「またです、茨さん」
来たとき同様に、足元に魔法陣が現れ、茨さんの姿が消えると徐々に魔法陣も消えていった。
◆
~シュテン視点~
鏡に映る茨が消えると同時に、こちらへと戻ってくる。
「おかえりなさい、茨」
「ただいまです、お師匠様」
「あ、これ良かったらどうぞ」
用意していた飲み物を渡すと
「ありがとうございます」
茨は一気にそれを飲み干す。
「それで、久しぶりの向こうの世界はどうでしたか?」
「ん? あぁ、言われてみればそうでした。ラスにいい所を見せようと張り切ってて忘れてました」
「茨らしいですね」
「それで、お師匠様に1つ頼みがあるんです」
何となく今の茨が何を頼みたいのか分かるが、一応内容を聞いてみる。
「私と一戦お願いします」
思った通りの内容だった。
「分かりました。なら行きましょうか」
湯呑みを片してから、茨を連れて外へ出る。
「あれ、お二人ともどうかされたんですか?」
外で休んでいた熊が聞いてきたので、軽く説明し茨と対峙する。
どう答えようか迷ったが
「私の実力が足らず、茨さんの動きを捉えることが出来なくて、あまり参考になりませんでした」
誤魔化す事なく正直に答えた。
理由としては、ここで参考になったと嘘をついて、後々バレた時の茨さんとの不和を考えての事だ。
「…え?」
目を見張る茨さんに
「茨さん、本当にすみません」
頭を下げて謝っておく。
「そっか… 頭を上げてラス。私は気にしていないから…」
そう言ってくれてはいるが、少し顔を俯かせ、しょぼんとしており、目に見えて落ち込んでいるように見える。
「あ、でも、茨さんが闘う姿はとても格好良かったです!!」
だから咄嗟に、あまり参考にならなかったと同じくらい思っていた気持ちを口にする。
「そ… そう?」
茨さんの顔が少し上がると同時に、口角も少し上がっているのを確認する。
「はい、そうです!! 普段の愛らしい見た目からは想像出来ない程、格好良くて凛々しかったです!!」
「えへへ。そう?」
「はい!! 改めて茨さんを尊敬しました。流石、茨さん。略してさすいばですよ!!」
自分でも何を言っているのか少し分からなくなりながらも言葉を重ねた。
「さ、さすいば? ってのは、良く分からないけど、ラスにそう思って貰えるのなら良かった」
「あ… あはは」
状態が元に戻ったようで安堵する。
「なら、ラスにも尊敬された事だし、私はそろそろもどるね」
「あ、はい。茨さん、今回は本当にありがとうございました」
「もうお礼はいいよ。じゃあまたね、ラス」
「またです、茨さん」
来たとき同様に、足元に魔法陣が現れ、茨さんの姿が消えると徐々に魔法陣も消えていった。
◆
~シュテン視点~
鏡に映る茨が消えると同時に、こちらへと戻ってくる。
「おかえりなさい、茨」
「ただいまです、お師匠様」
「あ、これ良かったらどうぞ」
用意していた飲み物を渡すと
「ありがとうございます」
茨は一気にそれを飲み干す。
「それで、久しぶりの向こうの世界はどうでしたか?」
「ん? あぁ、言われてみればそうでした。ラスにいい所を見せようと張り切ってて忘れてました」
「茨らしいですね」
「それで、お師匠様に1つ頼みがあるんです」
何となく今の茨が何を頼みたいのか分かるが、一応内容を聞いてみる。
「私と一戦お願いします」
思った通りの内容だった。
「分かりました。なら行きましょうか」
湯呑みを片してから、茨を連れて外へ出る。
「あれ、お二人ともどうかされたんですか?」
外で休んでいた熊が聞いてきたので、軽く説明し茨と対峙する。
23
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(105件)
あなたにおすすめの小説
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
非常に楽しく、面白く読ませていただいています。
ただ、視点が変わった時に、ストーリーも巻き戻って同じ文章を読まなくてはならないのは、筆者様の配慮だと思いますが、何回も続くと面倒です笑
続き読みたいです
茨ちゃんがいい子で良かった!
これでラスの修行も安泰ですかね🤔
くろいゆき様、感想ありがとうございます。
そうですね。
まぁ、若い頃ははっちゃけていた茨ですが、今では、面倒見のいい子に成長しました。