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閑話・戻る前のちょっとした出来事

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 お母さんは、ギュッと私を抱き締めてくれたので、私も抱き締め返す。
 少しの間、そのままでいたが、お母さんの肩越しにリリーと目が合ってしまい、恥ずかしくなり、そっと目を反らし離れた。

「ふふ。リリーも身内みたいなものなんだから、そんなに恥ずかしがらないでもいいのに。」

「べ… 別にそんな事思ってにゃ… ないわよ!! ただ、そろそろ帰らないとなと思っただけよ!!」

 お母さんの言う通りだし、噛んでもしまったが、そのまま押し通した。

「ふふ。そう言う事にしておきましょう。」

 完全にバレているみたいだが、
 
「じ… じゃあ、またね、お母さん。」

 知らないふりをしておく。

「えぇ。次会う時は、エルマーナも一緒にね。」

「うん!! リリーも、またね。」

「畏まりました。それで、グラディウス様。お戻りになられる前に、お1つ確認させて頂きたい事があるのですが、宜しいですか?」

「確認したい事? えぇ、いいわよ。どうしたの?」

「ありがとうございます。では、エルマーナ様の件が完全に片付いた際、こちらにお帰りになられる為の転移結晶は確保させているのでしょうか? グラディウス様は、小さい頃からその辺の管理は苦手にされていましたが、どうでしょうか?」

「あぁ、やっぱりその事なのね。毎回、確認してくれてるけど、子供の頃と違ってその辺はもう…」

 ちゃんとしているわよとそれを証明する為に、マジックバッグの中にあるであろう転移結晶を取り出そうとしたのだが、

「…あれ、ない。」

 入ってなかった。

「グラディウス…」 「グラディウス様…」

「ちょ… ちょっと待って!!」

 さっと背を向けてから、マジックバッグ内をよく探してみるが、やはりなかった。
 
「あ!!」

 探し終えた所で、そう言えば、ノーリ君に渡した事を思い出す。
 そろーと、振り返ってみると、ジト目した2人と目が合った。

「グラディウス、持ってないのね?」

「あははは… うん、ないみたい…」

 ここで嘘をついてもすぐバレるため正直に答える。

「何かしらの理由があるみたいだし、貴重な物だから入手するのが難しいとは思うけど、ちゃんと個数の確認をしておかないとダメよ。」

「はい、気を付けます…」

 戻ってから、1度マジックバッグの中身の整理をしておこうと決める。

「リリーも、心配させたみたいでごめんね。」

「いえ。私に謝る必要はありません。少しでも、お役に立てたようでよかったです。」

「うん、ありがとう。じゃあ、またね。」

 転移結晶を発動し、転移した。
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