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第1章:第1節
絶体絶命
しおりを挟む翌日、早起きした私はカーテンを開ける。
「いい天気だ………」
窓から出る日差しを浴びてうーんと背筋を伸ばす。
「さて、朝食までまだ早いし…学校行く準備しますか!」
只今の時刻は午前5時。朝食まで一時間以上あるので私は今日の授業に使う教科書を鞄の中に入れ、ベットの上に栖蘭学園の男子制服を乗せ、机の上に臭い消しを乗せる。
「うーん……胸そこまで大きくないけど、晒し巻いておこう」
お風呂場に洗面所があり、部屋からそこまで距離は離れていないが万が一、香月…
…____いや、ミナトと呼んだ方が良いかも。面倒くさいことになりかねない……
に見られたら一発で女だと分かるからだ。
今の私の姿は、セミロングでしなやかな体。顔つきは由奈が可愛い系なら……私はクール美女系に入る。自分の手を包める丸みのある胸はダボダボの服を着れば誤魔化せるが、触れば男にはない柔らかな感触が伝わる。
セミロングの銀髪を一つに纏め、女性の証である丸みのある胸を晒しで巻き、机の上に置いたシックのある眼鏡をかける。そして臭い消しは欠かさずつける。
着替えを終えた私はドアを開けて、洗面所が設置してあるお風呂場へと向かう。
「……………」
ふと視線を感じた私はお風呂場のドアノブを触れる直前に止まり、パッと振り返り攻撃体制に入る。
「……ミナト君、貴方ですか。」
この部屋の同室者…ミナトが立っていた。ヴァンパイアは気配消すのが上手いため、ヴァンパイアハンターである私でさえ内心は吃驚している。
「お前、早起きなんだな……」
「習慣ですから当然のことです。」
私は淡々と口に出し、眼鏡をクイッと上げる。
「はぁー」
「??」
ミナトは訝しげな顔つきでため息をつき、頭を抱える。何故、ため息ついたのか分からない私は首を傾げる。
「スピカ、今日のお前………全然可愛くねぇな。」
「は?」
ミナトが次に発した言葉を聞いて思わず、私は間抜けな声を出る。
(今?なんて言った?……"可愛い"と言う単語出てこなかったか?)
正確には"可愛くねぇ"と否定した言葉である。
そもそも"可愛い"と言う単語は男性の場合、愛おしく見える物・存在を指す表現……主に女性に対して向ける言葉だ。
「……それは、僕の事を言ってるのですか?」
「…お前以外に誰がいるんだよ。」
そう言ってミナトは何故か私のところへジリジリと近づきはじめる。
よく見ればミナトの瞳がまるで獲物を狙う肉食獣のようにギラついており、私はぞくりと戦慄を走る。
危機感を感じた私は後退りしようとしたが運悪く、お風呂場のドア____押すタイプではなく引くタイプである為、逃げられない。
押すタイプだったとしても密室状態だからどっちにしろ、逃げ場がない。
ヴァンパイアハンターである私ならこれぐらいの事、逃げ出せるのは簡単だが、ヴァンパイアハンターであることは秘密で一般人として過ごしている為、下手に行動出来ない。
____言わば、絶体絶命である。
(これ、ヤバイ!別の意味でヤバイ……!!)
右手で壁ドンされ、完全に逃げ場をなくす。そしてミナトと私の距離が数センチになり…
「なっ……!?」
ミナトの両腕が素早く伸び、私の両腕を掴まれて、左手で両手首抑えられてしまい、右足で脚の間に挟まれて身動きが取れなくなってしまった。
「離……して……」
「昨日のお前……すげぇ可愛かったのに。俺の声で、顔を真っ赤になるほど動揺してたもんな。」
「っ!?///」
ミナトは顔を近づき、私の耳元でハスキーボイスで囁く。
(昨日の出来事、思い出さないようにしてたのに……///)
耳元で囁かれた私は昨日の出来事を思い出し、茹でタコのように真っ赤になる。
「ち、違う!///あれは、びっくりしただけだ!決して動揺なんか………っ!?」
私は動揺するあまり、言葉が"私"になっていだがそんな事はお構いなしに必死に抵抗する。次の言葉を紡ごうとした時、私の唇に何か温かいモノが触れた。
(えっ………)
一瞬何が起きたのか分からなかったが、私の視界にはミナトの顔がすぐ近くに写し出されていて…………
(ま、まさか私……キスされてる!?///)
そして触れているのはミナトの唇だと分かり、私はキスされていると数秒もかからなかった。
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