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第2章:第1節
二つの疑問と二人の異様な空気
しおりを挟む「スピカちゃんのおかげで僕、学校行けずに済んだよ~」
「滅相もありません。これは凪自身の実力ですから」
一週間後、学校で補習テストが行われて凪は無事五十点以上を出し、夏休みに学校行くことを免れた。
「僕、英語だけは壊滅状態だったから今でも信じられないよ~」
「……努力すればある程度には取れますがね。」
私は少々苦笑いをする。中間テストの用紙が帰ってきた時、他の教科は平均点を取っていたのだが、英語だけは一桁の点数でほぼ壊滅状態に陥っていた。冗談かと思っていたのだが凪の英語の点数を見て流石の私も唖然とし、急遽402号室にて勉強会を開いたのだ。
「でも驚きだよね~。女の子以外には興味ない筈の神無月君がさ、男だけの勉強会に参加するって言うんだから。」
「………確かにそうですね。」
私もあの時の衝撃は未だに驚いている。学校帰りに偶然神無月と遭遇して、私のところに歩み寄って勉強教えて下さいって頼み込まれた時には吃驚したが、402号室で勉強会をするのできて下さいと言えば神無月は、分かったっす♪と答えて機嫌を良くして学生寮に行ったのだから。
「ミナト君、さっきから黙ったままですが何か考え事ですか?」
ふと私の右隣に歩くミナトは、何か浮かない顔をしていた。
「…………別に」
ここんとこ、こんな調子で凪が私にベッタリくっついても何も言ってこないことに疑問を感じていた。
(疑問と言えば、もう一つあるんだよね…………)
一週間前、私を襲おうとしたヴァンパイアを殺して屋上に置いて何も起きないのがおかしかった。というのも、騒ぎにならないはずが無いからだ。
いくら臭い消し使ったからといって一日で効果が切れる。例え一日経っていなくても水に弱く、雨に当たれば臭い消しの効果が切れて、誰かが屋上にきた時に死体から出るあの独特の匂いで気付くはずなのだ。
(それにあのヴァンパイア、何故私を襲おうとしたのだろう……)
無理矢理でも聞いてから殺すべきだったなと心の中で後悔する。
(ま、悔やんでも後の祭りだけど…………)
「スピカせーん輩♪」
「……カイト君」
学校の階段を一階に辿り着いた時、上から神無月がヒョイっと顔を出てきて階段を降りて私に歩み寄ってくる。
「先輩のおかげで俺、免れました。」
「そ、それは良かったですね…………」
神無月は私に向けてニコニコしていた。神無月の馴れ馴れしい態度に当然ながら私は苦笑いしながらも受け答える。
「…………ちょっと神無月君?幾ら何でもスピカちゃんに対して馴れ馴れしいんじゃないの?」
「何言ってんすか、後輩が先輩に頼られるのはとてもいいことなんすよ?」
凪は抱き着きながら神無月に睨みつけ、神無月は負けじと凪に言い返す。その表情からこの前の凪に対しての怯えは何処か消えていた。
「……そういう桃ちゃん先輩だって、いつもスピカ先輩にくっついて周りが勘違いされたらどうするつもりっすか?」
「別に勘違いされても良いよ?だって……相手がスピカちゃんだからね」
そう言う凪と神無月の顔は満面の笑みを浮かべ、二人の間にバチバチと火花が飛び散る。
(これ、前にもあったような…………)
私は火花を飛び散る二人を見て、うーんと頭を捻り眉を寄せた。
「……桃野と神無月、ここで張り合うな!そういうのは学生寮でやれ!」
今まで黙っていたミナトが呆れ声で二人の間に入り、睨み付けた。
「……香月先輩、そんな怖い顔しないで下さいよ。」
神無月は、宥めるように言ってミナトの横を通り過ぎる。そして神無月が通り過ぎた時にふと、ミナトの顔が険しくなっていく。
「……帰るぞ。」
ミナトは何気無い顔に戻り、廊下を曲がり通って正面玄関へと向かって行く。
「香月君と神無月君、何かあったみたいだね…………」
凪は二人のオーラに触れたのか、無邪気な顔つきが真剣な表情に変わっていく。
私と凪もミナトの後をついていき……____
(一体、二人の間に何が…………?)
私はあやふやな心境を抱きながら正面玄関へと向かって行った。
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