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第2章:第2節
何気ない会話にて
しおりを挟む「藤野、先輩…………」
葵君に言われて屋上に降りて507号室に戻ってきた時、507号室には七海君が立っていた。
「七海君、どうしたんですか?」
「えっと、ですね…………」
「ここではあれですから、部屋に上がって下さい。」
私はそう言って、507号室の鍵を取り出しロックを解除する。七海君を507号室に上がらせ、電気の明かりをつけてリビングに案内する。
「お邪魔、します……」
七海君はリビングにちょこんと座り、私は冷蔵庫から飲み物を取り出し七海君へと運ぶ。
「どうぞ」
「あ、ありがとう、ございます…………」
私は七海君の隣に座り、話を切り出した。
「改めて七海君、何か用ですか?」
「藤野、先輩、実はですね……」
そう言って七海君はズボンのポケットの中から一枚の紙を取り出し、机の上に置いた。
「これは……温泉旅行のチケット、ですか。」
「商店街で、買い物、していた時に、福引券が、貰って、店の近くに、ガラガラ、していたので、何気無しに、やったら、当たっちゃいました…………!」
七海君の表情が嬉しそうにテヘヘと照れ隠ししていた。
「それは凄いですね!」
「それで、このチケットで、四人まで、使える、らしいので、僕と凪君、藤野先輩に、香月先輩の、四人で、和乃恵町の、温泉旅行、行きたいなと、思って、いるのですが…………」
「………ただいま」
そこにミナトが帰ってきて、リビングを通り過ぎ一旦部屋に入る。暫くして着替え終えたミナトが部屋から出てきて、七海君を視界に入る。
「……七海か、珍しいな」
「香月先輩、お邪魔、してます……」
ミナトは私の左隣に座って、机の上にある温泉旅行のチケットを目にした。
「ん?なんだ?和乃恵町温泉旅行……」
「七海君が商店街の福引券で当たったようですよ。」
ミナトがチケットを裏返ししながら、ふーんと反応が薄い。
「ミナト君、こういうのは興味ないのですか?」
「俺、こういうかったるいのは苦手だから」
「そう、ですか、残念、ですね…………」
ミナトはチケットを机の上に戻して、私達の話に耳を傾ける。
「香月先輩が、行かないと、なると、一年の、神無月君に、誘うしか、ないですね。」
「…………カイト君ですか。」
「あの、前から、思って、いたんですけど…………」
神無月の名前を出てくると私は、少し戸惑いながらも口に出した。すると七海君はそんな私を見て、こう投げかけた。
「藤野先輩って、神無月君の事、苦手、だったり、します?」
「…………何のことでしょう。」
七海君に図星を突かれた私は顔を強張る。すると七海君はそんな私を見て苦笑いをした。
「隠さなくて、良いですよ。藤野先輩って、苦手のものに、関しては、喋るまで、間が空く癖が、あるよう、です。藤野先輩は、無意識、かも知れませんが…………」
七海君は幼さが残る笑顔で私を見つめる。
「へぇー、そりゃ初耳だな…………」
とミナトの声はいつものトーンでありながら何故か嬉しそうな表情をしていた。
「とにかく、僕と藤野先輩、凪君とあと一人、誰かに………」
「……待て、七海。」
七海君が悩んでいるとミナトが待ったと声をかけた。
「……スピカも行くのか?」
「勿論、ですよ。これ、四人まで、使えます、から……」
七海君は机の上に置いてあるチケットをミナトに見せ、ミナトはもう一度チケットを触れ、よくよくと凝視する。
「………俺も行く」
「えっ?」
そしてミナトはチケットを見ながら行くと肯定する。七海君はミナトの返答に驚きが隠せなかった。
「さっき、興味ないっと………」
「気が変わった。それに俺は、行かないと一言も言ってねぇ。」
ミナトの顔つきが有無と言わせまいと真剣な表情になり、七海君はううっと声を唸り、口を閉ざす。
「そうと決まれば、いつ行くか、日程を、決める、だけですね。」
「日程ですか……」
私はチケットに目を向ける。チケットの有効期間は七月の最終日までと記載されていた。
「今日は、遅いですから、明日、学校が、終わった後に、402号室に、来てください。」
「七海」
「なん、でしょうか?香月先輩…………」
そう言って七海君は席を立ち上がり、リビングを立ち去ろうとした時にミナトに呼び止められ、七海君はミナトに目を向けて振り返る。
「この事は、誰も漏らすなよ?____神無月とか西園寺とか加々見とか神無月とか!」
「は、はい…………」
「それと、今言ったこと桃野にも伝えておけよ!あいつのことだから、絶対口を滑らすに違いねぇ……!!」
「わ、分かり、ましたから、怖い、顔、しないで、下さい!」
真剣な表情で必死に言うミナトに七海君は慌てて、私は心の中で呆れていた。
(神無月って二回言ってるし………)
「それでは、先輩方、お休みなさい。」
玄関まで歩み寄り私達に一礼した七海君は、ガチャリとドアを開けて自分の部屋に戻って行く。
「さてと、僕は早めに就寝しますね」
「……なぁ」
七海君を見送った私はくるりと向きを変えて、部屋に行こうとしたらミナトに呼び止められる。
「なんですか?」
私は顔をくるりとミナトに向ける。
「何故俺が肯定したか、分かるか?」
「……僕が女だとバレないように、ですよね?」
「それもあるけどよ…………」
とミナトは難しい表情になり、ハァーとため息を突き頭を掻く。
「……お前頭いい癖に、自分のことに関しては鈍感だよな。」
「………………は?」
いきなり意味不明なことを言い出したので私は目を白黒になり、ポカーンと口を開く。
「…………分からねぇなら、自分の胸に聞け。」
そう言ってミナトは私を通り過ぎ、自分の部屋に戻って行く。
(何なのいきなり!?これでも私自身は、敏感なんだけど!?)
当然ながら私は、訝しげな顔つきになりミナトのドアをジッと見つめる。
(意味わからない……!!)
そして私はミナトに言われた言葉により、モヤモヤした気持ちを抱いて自分の部屋に戻って行った。
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